我が町の運動会が昨日開催された。
何年ぶりかな?町民運動会って。
若かりし頃は、“ハリマの黒豹”と言われ、
花形種目であるリレー選手で登場しては、
町娘たちの視線を独り占めしたのは、遠い昔の話になりにけり。
いや、黒豹は大袈裟だが、リレーの選手だったのは事実。
あっ、町娘の視線を独り占めしたのも事実だけど、
それは僕の豪快なヘッドスライディングを、
リレーなのに、あえてヘッドスライディングをする僕を笑うため。
そう、小さな地区だったから、徐々に腹が出てきていても
代表選手として毎年駆り出されたものだった。
昨日は役員の一人として、テント設置と撤収が役目。
撤収はプログラム終了後なので、
会場にずっといる必要はなかったけど、
特別用事もなかったし、なんか、楽しげな雰囲気だったので、
競技を応援しながら見物する事に。
盛り上がったのはやっぱりリレーだ。
年代別の代表選手たち。
足自慢の小学生に、母親たちが
「やっぱり早いねぇ~!」
って驚きの声を上げる。
事実、その少年はゴボウ抜きで一気に1位へ。
20代の若者は、黄色い声援を送ってくれる応援団に
手を上げて応えながら、僕の目の前を走っていく。
そしてアンカー勝負。
我がチームは序盤で差をつけられ、いつの間にか
最下位争い。
アンカーにバトンが渡った時にはついに最下位になっていたが、
アンカーのガンバリによって、一人抜いた。
なんとか最下位だけは免れたかと思い始めた瞬間、
となりに居た人がポツリとつぶやいた。
「あれ、こけるで!」
凝視していた僕たちの口元が緩む。
スローモーション。
まるでスローモーションでも見ているかのように、
彼の足がゆっくりと動く。
つま先で走っている。
気持ちはゴールに向かっているが、足は前には進んでいない。
「あっ!」
倒れた。
が、落胆の声はまったくなく、テント内が歓声に包まれる。
「よくやった!」
爆笑と賞賛の嵐だった。
そんな彼を見ながら遠い昔、
“ハリマの黒豹”と言われていた時の
僕の姿が脳裏を過ぎった。