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やったぁー!

2012年06月18日 | 日記・エッセイ・コラム
疲れた身体を原付で運んだ
 
行き先は老舗のスーパー
 
最近では大型チェーン店が幅を利かせているが、
昔から地域に根ざした店にも、
大手にはない品揃えがある
 
素朴なたたずまいと、細かなサービスを求めて
原付を走らせる
 
目的は夕食のレシピ
 
カレーライスにしようかと迷ったが、
少し時間が遅かったんで、出来合いの惣菜に
決めて店内に入った
 
腹が減った状態で店内をうろつくのは危険だ
 
脇目も振らず、一気に目的地へ直行
ちょうど“半額”シールの貼付作業中だったので、
マダムたちと店員の作業を見守った
 
そんな時だった
 
おじいさんに連れられた、3~4歳ぐらいの
女の子が視界に入ってきた
おじいさんに急かされ、何かを店員に聞きたそうに
していたが、
あと少し、勇気が足りないみたいだ
 
その様子に気づいた店員が声をかけた 
 
彼女の替わって、おじいさんが聞いた
 
「ケーキはどこに売ってますか?」
 
はて?どこだろう
 
ちょうど目の前にパンのコーナーがあったが、
そこには、ケーキらしきものはない
鮮魚担当なのだろうか?
いつも見る店員さんではあるが、ケーキのコーナーが
思い出せないらしく
 
「うちに、ケーキあったか?」
 
独り言のように、声を出した
それを聞いたレジのおばちゃんが
 
「野菜の並びにあります!」
 
助け舟を出した
 
それを聞いて、あぁ!そう言えばあったね!と
そのワンコーナーの存在を思い出したが
さて、そこにケーキと呼べるものはあっただろうか?
 
一瞬のうちに、さまざまな気持ちが胸の中で揺れ動いたが
 
 
「やったぁー!」
  
 
僕の表情が緩んだのは、間違いがないとしても、
その声が聞こえたとき、店内の誰もが少し
微笑んだような気がした
 
それはシュークリームのようだった
いや、少し違ったのかも知れないが、
僕を含めた、誰もが想像した
 
“ケーキ”
 
ではなかったと思う
 
しかし、その小さな手に包まれた洋菓子は
彼女にとって、探し求めたものだったのだろう
 
彼女はレジで支払うまでの間に
その菓子を三度落とした
その度にクリームが傾き、容器が真っ白になった
 
それでも、
おじいさんの顔を見上げる顔は笑顔のまま
 
はい!
 
レジのおばちゃんが清算を終えて、
その洋菓子を渡すと
 
「ありがとう!」
 
彼女の声が聞こえた
 
もう一度
店内が明るくなったような気がした