常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

薔薇

2015年05月25日 | 介護


5月というのに、暑い日が続く。畑の野菜たちは、日照り続きで、水遣りを欠かせないがそれでも成長が心配される。近所を散策すると、薔薇の花も美しく咲く時期が過ぎたよう感じがする。きれいな花を探して写真を撮るのに苦労する。薔薇には多くの種類があり、四季咲きのもの、初夏のもの、秋に咲くものなど多種だが、季語が夏になっているのは、これから咲くものが一番多いということであろうか。

薔薇剪って短き詩をぞ作りける 高浜 虚子



家をすっぽりと薔薇で囲んだお宅がある。この家に住む人はよほど薔薇がすきなのだろう。以前会社に勤めていたころ、得意先の社長婦人へ、薔薇の花束を贈る同僚がいた。女性に薔薇を贈るということに抵抗を感じた。その行為が愛の告白のような気がしたからだ。そんなきざに見える振る舞いがその婦人をいたく喜ばせたらしい。薔薇の花言葉は愛、美。この年になっても、まだ人に薔薇を贈った経験はない。
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ワラビ

2015年05月22日 | 介護


ワラビ採りは春の日の楽しみのひとつだ。小満の日、妻と肘折温泉へワラビ採りに行った。肘折は県内はもとより、日本でも有数の豪雪地である。日陰のくぼ地には、まだ雪が解け残っている。陽射しのある斜面を探してワラビを探した。

石激る垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも (万葉巻8・1418)

万葉集に出てくるワラビを詠んだ歌が好きだ。春を待つ人の心が喜びに溢れている。昨日の肘折も、早春のなかにあった。雪解け水は川を増水させ、まんまんと激しく流れる。葉山下しの突風が、強烈にぶつかってくる。



ワラビが萌える草地から目をあげると、渓谷にまだらに雪を残す葉山が眼前にせまっている。月山はその奥にある。かつて念仏小屋から、月山を肘折へと下った。残雪の縁に広がるニッコウキスゲの群落は今もしっかりと記憶に残っている。下山の途中で出会った青年は、肘折温泉に逗留して肘折と月山山頂の往復が日課だと語っていた。体力にまかせて山野を駆けるように行き来したのは、遠い昔日の思い出である。
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普通のご飯

2015年04月01日 | 介護


冬季、寒い期間を施設で過ごした義母が、家に帰ってきた。納豆と具沢山のみそ汁、なんの変哲のない普通のご飯が、義母にとっては特別のご馳走のようだ。施設でも旺盛な食欲を見せていたらしいが、子どもを育てていた遠い過去の食には、認知症の脳にも消しがたい記憶があるらしい。「おいしいな」という言葉が、自然に出てくる。ご馳走ではなく、戦後、卓袱台を囲んで家族で食べたいたものは、身体の細胞の一つ一つに記憶されているのだろう。施設にいれば、不自由もなく、決まった時間に食べ物が出てくる。必要な栄養も計算され、歯の状態をみて、堅さまで調整してくれる。しかし、そこには、長い間生きてきた時間を満たしてくれた、楽しい食の時間は失われれている。

現代は一人暮らしが増え、年老いた老人だけの家庭が介護の問題を複雑にしている。この4月から介護保険料も上がった。一人暮らしができなく施設へ入る年寄りが増えたため、介護保険料を上げざるを得ないらしい。行き先の短い年寄りが、本当に求めているものを制度だけで満たすことはできない。
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唱歌 三才女(2)

2015年02月26日 | 介護


三才女の3番に登場するのは、伊勢大輔である。大輔は代々歌詠みの家に生まれ、見込まれて藤原道長の娘で、一条天皇の中宮彰子に仕えることになった。大輔がどのような歌を詠むのかと、道長をはじめ、人々の注目を集めていた。

 きさいの宮の仰言 御声のもとに 古の
 奈良の都の八重桜
 今日九重ににほひぬと
 つかうまつりし 言の葉は
 花は千歳も 散らざらん

大輔が宮に仕えて間もないころ、ある人が中宮の御前に八重桜の枝を献上した。そこには、たまたま道長公も居合わせていた。道長公は硯と紙を差し出し、「この花を見て歌詠め」仰せられた。

いにしへの 奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな 伊勢大輔

大輔は、あわてる様子もなく、硯に墨をすり、さらさらとこの歌をよどむことなく書いて差し出した。八重に続けて九重としたのは、宮中をめでるみごとな歌になった。「宮中鼓動す」とものの本に、居合わせた人々の感動の様子を伝えている。


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蔵王山

2015年02月22日 | 介護


久しぶりに義母の入所している「見晴らしの丘」に行く。ここからは、その名の通り、山形市街と蔵王山が一望である。わが家からは、外輪山の瀧山に遮られて、蔵王山は見ることができないが、ここからは雪を戴く蔵王が全部見える。この景色がありながら、義母は感動をもってみることができない。「こんな遠くまで来なくてもいいのに」という言葉を何度言ったか、数え切れないぐらいである。「いい天気だね」と言っても、答えは「こんな遠くまで来なくともいいのに」という同じ言葉だ。

刈田岳から熊野岳、それに接するように地蔵岳が見える。ざんげ坂から地蔵へいく辺りには、小さな点のようなものが見る。カメラで拡大してみると、それらの点は樹氷であることがわかった。今日の山形の気温は9.5℃、明日も同じような気温が続く。樹氷はこの陽気で落ちてしまう。また今年も、真近に樹氷を見ずに過ぎそうだ。義母と話しながら、茂吉が眺めた蔵王を見ていた。
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