朝からちらちらと雪が降っている。雲の間から薄日がもれているが、小雪は止まずに降り続く。降るそばから融けて、積もる雪ではないが、外を見ると相変わらず降り続く雪だ。子どものころから、雪には馴れ親しんでいる。居間のストーブの火が落ちると、寝ていた畳の間は、蒲団の外は冷えきった。もぐりこんだ掛け布団は、吐く息で外側に氷が霜のようについた。ストーブに取りつけた湯沸かしはのなかの熱湯は、数時間で氷が張った。しかし、雪は友達であった。どんな寒波が来ても、氷点下の雪のなかを学校へ通った。
詩吟の合吟コンクールで選んだ課題吟柳宋元「江雪」が懐かしい。白銀の世界で、川の流れにじっと釣り糸を垂れている老人。人はおろか鳥さえ飛ばない。
千山 鳥飛ぶこと絶え
万径 人蹝滅す
孤舟 蓑笠の翁
独り釣る 寒江の雪
見わたす限り、どの山々の空にも飛ぶ鳥の姿が見えなくなり、どの小径にも人の足あとは消えてしまった。蓑と笠をつけた老人がただひとり、一そうの小舟に乗り、雪の降りしきるさむざむとした川面に釣り糸を垂れている。
こんな季節に釣り糸にかかってくる魚がいるとも思えない。この雪の中の川に佇む老人の孤影は、耐えるための強靭な精神のシンボルでもあろう。この暮には、コロナ禍で閉じられた環境に加え、寒波が大雪をもたらすらしい。この詩は、そんな年越しを迎えた人々へのエールになっている。
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