ドッグデーズは土用の暑い夏を指すらしい。シリウス星はオオイヌ座にある星で、冬空に輝く第一の輝星である。ただし、夏は太陽の側を回って見えない。暑い夏の太陽にこのシリウスの光が加わって暑くなるという話が語り継がれてきた。このオオイヌ座の名をとって、ドッグデーズと呼ばれる。中国ではこの星を天狼と呼ぶ。ただこの呼び名は、暑さに犬も気が変になるという意味もある。加えて、激しい雨や雷、大洪水の夏は、人間の心もおかしくなる。
古事記のスサノオノミコトのヤマタノオロチ退治は有名だが、オロチを揖斐川の支流ととらえ、退治は治水事業とする説もある。最上川は山形を背骨にように貫く大河だが、そこへは無数の支流が流れ込んで最上川の本流となる。最上川を巨大なオロチだとすると、その治水も大事業になる。ここに住んで60年を超えたがそれほど大規模な洪水に出会っていない。今回の鮭川から遊佐、酒田にかけての洪水は、100年規模の大洪水と言ってよい。オロチに酒を飲ませて、だまし討ちにするような小手先の工事では到底かなうことはない。自然の猛威に前に、人類はただ茫然とするほかはない。
宮沢賢治は人間が未熟で解決できない苦悩を修羅として「春と修羅」という詩を書いた。その一部を引く。
いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾しはぎしりのゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
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