高山に冠雪があり、北海道の旭川では初雪が降った。この季節には、身近な人の訃報も舞い込んでくる。気候の急変はやはり、人の時として人の生命を奪う。身近でしかも同世代の人の死は、ひとしお哀惜の情にとらわれる。
『韓詩外伝』は中国、前漢の故事を書いた書物だが、「樹静まらんと欲して風止まず、子養わんと欲して親待たず。往きて追う可からざる者は年なり。去りて見るを得ざるものは親なり」という、一文がある。
風の前に樹は、色づき、吹く風に次々と葉を散らしていく。今年、いままでに覚えのないほどに、紅葉を見たいと思ったが、散り急ぐ紅葉のはかなさを感じたからかも知れない。あと何年の、あのみごとは山の紅葉を見ることできるかと、思いを募らせているせいかも知れない。
「風樹の嘆」とは、この文から出てきた言葉だ。日本に諺に、「孝行のしたいときには親はなし」というのがあるが、風樹の嘆を分かりやすくしたものであろう。初雪の便り、紅葉前線の南下、そして訪れる訃報、冬を迎えることは、幾重もの淋しさを伴っている。
冬耕やくだきくだきし土の艶 内藤 吐天
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