常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

楽し

2021年01月04日 | 日記
雪が降り続く。年末からの雪は、車道こそないものの、近所の庭先の木々には重たいくらいに降り積もった。コロナの感染は衰えを知らず、総理の年頭の記者会見で緊急事態宣言の今週中の発出を表明した。明るいニュースのないなかで、天皇陛下の年頭のあいさつに接して、安堵する気持ちがした。原稿をテーブルの上に置いてあるが、そこへ目を落さず、一語一語ゆっくりと心をこめて語る言葉が心に沁みる。YouTubeの映像を保存して、じっくりと見た。

正月たち春の来らばかしくこそ
 梅を招きつつたのしき終へめ(万葉集巻5 815)

どなたかのブログで梅の花が咲いた写真を拝見した。ニュースは暗いものばかりだが、古い言葉「楽し」を取り上げて新年の賀としたい。古語辞典を引いてみると「楽し」の意味は、満腹で満ち足りた気持ちで貧しの対とある。もっとも平安の女流文学にこの言葉が見られないのは、宮廷の女房たちの意識に口にのぼせるのにふさわしくないと考えたであろう、とまで古語辞典に書いてある。ちょっとはしたない、ということであろう。

また宴会などの酒肴が豊富で満ち足りた感じ、裕福である。金持ちだというの意味も項目に載っている。お正月のお節料理や、お正月の親戚中が集って宴げを催すことは、「楽し」と表現される。明治になって唱歌にも

年の始ののためしとて
終りなき世のめでたさを
松竹たてて門ごとに
祝ふ今日こそ楽しけれ

年が明けたが、近年この楽し、という生活は我が家から縁遠くなるばかりだ。迫る病、もてあますお節料理、当分実現しそうにない家族の集い。年老いた二人だけで、形ばかりの正月を終えた。せめてもの癒しとして、温泉旅館で上げ膳据え膳を楽しみに行く。コロナには感染しないように注意をしながら。 
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