10月のある日に
時間がまたたくまに流れてしまいました。
いくつかのことが、ぼくのまわりに起り
いくつかのことが、ぼくのなかに起り
そして流れてしまいました。
けれどもぼくは、相変わらずです。
強く
勇士のように生きられたらと思うことは
すでに尻込みだと知っていながら
『とほうにくれて、生きるより仕方なかった』とは
なんと、みじめなことです。
ぼくは自分をつくっているのだろうか。
ぼくは、どっかりと
すべてをおおいつくすほどになりたいと思っていたのに
生きることにも
愛することにも
なぜ、弱々しい。
あるいは弱々しくふるまう。
またあるいは、ふるまっていると思い込もうとする。
(略)
何かのドラマが、一瞬のうちに始って終れば
人は生きてよかったと思うだろうか。
生きてよかったと‥‥。
戦争‥‥。
古いものは、すたれてしまえばよい。
古いものは、すべて‥‥。
未来も、いつのまにか古くなり
そしてすたれる。
時間の経過だけが、たしかな真実をかたちづくる。
だからぼくは、今を精一杯いきたい。
1966・10 『麦の歌』No3より