「あなたに私のマンションを差し上げます。毎月2000万程収入のあるマンションです。あなたにデメリットはありません」と、Eメールが送られてくる。Eメール会員へのメッセージに伴って送られてくるので、どう見ても、私を知っている女性が私だからという「お願い」ではない。それにしてもずいぶん前から根気よく送られてくる。
旦那に先立たれ、自分もそんなに長く生きられないし、子どもがいないといった事情が綴られている。何故私に相続して欲しいのかが分からない。初恋の人のダンナはまだ健在であるし、私が好意を抱いた女性でそんな財産持ちの人は見当たらない。財産の処理で困っているなら、直接話してくれれば弁護士などの紹介は出来る。
年間1億円を超すようなお金をもらっても、私は使い方を知らない。私の2人の娘もそこそこに生活しているから、こんな金額が転がり込んできたら「ナマケ者」になってしまうのは確実なので、「イラナイ」と言うだろう。お金がなければ生活は出来ないが、「お金は働いて得るもの」と教えてきた私には、ふっと沸いてきたような金は宝くじ程度でいい。
銀行員のOBと話していた時、AIの進歩で職業は様変わりするだろうと聞いた。近代に入って、変化は急速に早まっているが、だからと言って戦争以外に大量死は起きていない。無くなるものもあれば新しく生まれるものもある。私の知り合いにも「何千万円の資産がある」と言う女性がいる。彼女も「子どもがいないからどうしよう」と心配するが、「市に寄付すればいい」と私は答えている。
先のことを心配する必要はない。どのような経過で財産を築いたとしても、世の中があって得たものだから、世の中に返すのが正解である。話す相手がいない、愛する相手がいない、そんな孤独ほど寂しいことはない。ワイワイと話し、笑って、食べられるのが、人の一番の幸せだと思う。