6月末に10日間、ギリシャを旅してきた友だちが旅行記をメールで送ってくれた。旅行の内容を18項目に、それぞれが250字でまとめられていて、彼女と共に居るように面白かった。旅行のプランは夫である先生が立てたものと分かり、彼が古事記に興味があることを知っていただけに、工学博士ではあるが同時に,人類の源への関心が深いこともよく分かった。
ギリシャと言えば、神話や悲劇を思い出すし、美術史では赤絵とか黒絵と呼ばれる壺絵は、絵画としてもデザインとしても優れている。そして誰もが知っているのは、アクロポリスの丘に残る神殿だろう。建築様式にドーリア式、イオニア式、コリント式があると覚えたものだ。ギリシャ文明はクレタからミケーネそしてアテネへと発展していったが、地中海の存在が大きかったと思う。
エジプトやメソポタミアが栄えたのは肥沃な土地のおかげだが、ギリシャはやせた土地なので農耕には適していないはずだ。それが歴史の一角に名を残せたのは海のおかげだろう。海洋民族の彼らは地中海の各地に植民地を作り、物を流通させることで富を築いてきた。そして都市を作り、同盟を結ぶことでさらに力を発揮したし、民主主義の考え方も培った。戦争の代わりに技能や体力を競い合った知恵も素晴らしい。
彼女の旅行記を読むと、本当にパワフルだと感心する。夫婦とも英語が堪能であり、どこに行ってもすぐ友だちになる能力に長けている。好奇心が旺盛だから、何事にも積極的だ。見事としか表現できないが、知らない土地を訪れ楽しめるのは、正に人柄のなせる業だ。きっと写真も撮っているだろうから、アルバムを見ながらまたいつか話を聞かせてもらいたいと思う。
私自身は、だんだん旅行に消極的になっている。知らない人と触れ合うことが億劫になってきている。世界を広げている友だち夫婦に感心するが、何よりもその元気が羨ましい。私は一日中家に居てもなんとも思わなくなっているし、むしろそれをよしとしている。