首都圏の緊急事態宣言は2週間延期されるようだ。愛知県は2月末で解除されたけれど、私の周りは何も変わっていない。「人流」とか「黙食」とか言われ、人の交流は極端に少なくなった。人は人と会い、会話し、初めて満たされる。このままでは人は、人でいられなくなる。
黙って食べることが奨励されるのだから、黙って話す「黙話」とか、黙って行う「黙行」とか、そんな言葉が生まれるのかも知れない。漢字典を見たら、黙の付く熟語は意外にある。「黙考」「黙思」「黙省」「黙諾」‥。犯罪者は「黙秘」し、官僚は「黙認」する。
黙っていることは「いいこと」のように教えられてきた。「賢者は黙して語らず」、愚者ほど口数が多いと。けれど、本当はもっと話さなくてはいけないのではないだろうか。人との会話を盛んにしてこそ本来の人間だろう。
豊田市美術館へ行った時、同時にデザイン展が開催されていたので若い女性たちが大勢来ていた。ピーチク、パーチク、それは賑やかで華やかだった。すっかり春の装いで、北田克己先生の描く女性のように、真っ白な美しい足を惜しげもなく見せていた。
顔はマスクをしているから、みんな美人に見える。ミニスカートのすらりとした足は、きっと美人に違いないとワクワクさせる。男たちはまず顔を見るが、今はマスクで目しか見えないから、誰もが美しい。素足は隠しようがないから、その形の良さから美人と思いたい。
馬鹿だなあー、いい歳をして。若い女性たちの華やいだ声や、真っ白な素足に惹きつけられてしまうなんて。でもまあ、雛祭りだったのだからいいかと、何の脈絡もなく開き直ってみる。