昨夜のテレビドラマ『はじめまして、愛しています』を見ていて、エッ?と思うことがあった。いよいよ里子が尾野さんたちの家庭に馴染んできて、幼稚園に通うようになる。そこでいじめが発生すると考えるのが普通だが、ドラマでは里子の「はじめ」君がいじめを目撃し、助けたい気持ちからいじめている子に暴力をふるってしまう。「暴力はダメでしょう」と親はきつく叱る。この時、「はじめ」君は「僕はどうしたらいいの?」と聞く。
いじめられたら、どうしたらいいのだろう。いじめた奴をぶん殴って、力を見せるべきなのか。いじめられないようにへつらうのか。先生に「あの子がいじめる」と告げ口するべきなのか。もし、ドラマのようにいじめられているところを見たならどうするべきなのだろう。ドラマの両親の答えは私の想像を超えていて、エッ?と思った。
尾野さんたち夫婦は「はじめ」君に、「あなたが決めなさい。お父さんもお母さんもあなたを絶対に守ってあげるから」と言う。5歳の子にそれは無理だろう。お父さんはこう思うよ、お母さんはこう思うよと、二人が同じでなくてもいいから親の考え・価値観を子どもに伝えるべきではないのだろうか。
ドラマは思いもよらない方法で解決したように見えた。それは尾野さんが扮する女性の父親である世界的な指揮者が口癖のように言う「音楽には人を変える力がある」ことを証明する。音楽に不思議な力があると私も思うけれど、それでもこれは出来過ぎではないだろうか。昨夜のドラマのテーマは「いじめ」のようで、尾野さんの夫の妹の子が家出してくる。母親が連れ戻しに来るが娘は「帰らない」と言う。
「お母さんはあなたのことを思うから言うのよ」と母親が言うと、「お母さんは私の何を知っているの?」と娘は反論する。母親は聞く耳を持たずに「勝手にしなさい」と言い放ってしまうが、ここで「ごめんなさいね」と聞く気になれば母と娘は一歩近づくことができただろう。親子だから分かっているというのは幻想でしかない。分かり合うためには譲歩が必要だが、親子といえどもそれはなかなか難しい。