風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

餅は餅屋

2010-07-24 02:50:03 | 時事放談
 道路の渋滞というものは、スムーズに流れている時から僅か5%交通量が増えただけでも起こるものです。旧聞に属しますが今月初めにゆうパックで発生した大規模な遅配も似たような状況で、僅かの狂いが原因だったとしても、起こるべくして起こったように見える事故の背後にあるマネージメントの問題は、見逃すわけには行きません。
 7月1日と言えば、お中元の配送が解禁され、前の週に2倍に膨れ上がった荷物が一斉に出て行く、宅配業者にとっては作業負荷が増大する特別な日だそうです。よりによってそんな日に、日本郵便はペリカン便を本社に吸収しゆうパックと統合するという大事業を敢行し、ネットワークを再編しました。ところが方面別仕分けを行うターミナルでは、新しくなった仕分けラベルが読み取れないトラブルが続発し、末端の配達現場ではドライバーが慣れないハンディ端末の操作に戸惑い、顧客ごとに単価が違う旧ペリカン便の荷物の単価を照会しても金額が出てこない、そもそも元データが入力されていないといった事態が判明し、7月6日時点で、34万個を越える荷物に半日から1日程度の遅れが出たと発表されました。これはターミナル・レベルの遅延であり、最終的な配達レベルはもっと酷かったであろうことは想像に難くありません。
 民間企業に勤める普通のサラリーマンの感覚では、プロジェクト・マネージメントが甘いという初歩的でありながら致命的な問題、あり体に言えば、普通に客商売をする民間企業ならあり得ないこと、あってはならないことが起こったように映ります。
 これに対して、日本郵便の鍋倉社長(旧郵政省・元郵政民営化推進室副室長)は7月4日の記者会見で「現場の不慣れ」を原因に挙げ、当事者意識のない無責任ぶりを曝け出しました。案の定「現場」は反発し、6日に配布された社内文書で、「現場の不慣れ」はマスコミの誤報であって、社員の皆さんに責任があるのではない、などと火消しにこれ努めたそうですが、経営者としてお粗末な話です。15日に「サービスは正常化した」と発表した時、鍋倉社長は、お中元の荷物が集中する7月に統合したことに関し「判断は間違っていないと今でも思っているが、準備不足だった面はあった。反省している」と猿でも出来る反省だけはしているようでしたが、日本郵政の斎藤社長(元大蔵事務次官)は、「一刻も早く遅滞を回復するのが経営責任であり、社長以下一生懸命やってくれている」などと述べ、トラブルの経営責任を認める気配はありません。
 最高責任者である原口総務大臣は、呼び出した鍋倉社長に対し、「日通との統合は前政権下で進められた民営化、事業計画もない状態で手続きだけが進んだ当時のガバナンスの脆弱性を象徴する事案だ。それを引き継いだ経営陣は、大変なご苦労があるかもしれない」と同情の言葉をかけたそうですが、混乱の原因を前政権(自民党)の計画に押し付け、現政権はその実行だけで無実だと言わんばかりのもののいいは、現政権の経営の無策ぶりを認めたようなもので、全くトンチンカン、理解不能です。
 参院選前、報道ステーションに呼ばれた亀井氏は、民間企業がきめ細かに対応している宅配事業を、何故、官営事業としてやらなければらないのかと、古舘さんから真顔で問われて、一言も明確に答えることなく、話をすり替えたことがありました。
 国民の誰もが「餅は餅屋」と思う基本を、何故か実行できない元官僚や政治家のこれらエピソードは、日本の財政の暴走を象徴します。
コメント
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