昨年10月にイギリスを公式訪問した習近平国家主席ご一行様が「とても非礼だった」と、旧・大英帝国の女王陛下が本音を漏らされたのが話題だ。バッキンガム宮殿で行われた女王陛下の90歳を祝う園遊会で、女王が漏らした私的なコメントが、テレビマイクに拾われてしまったようだ。日本の全国紙は二週間ほど前にBBCの映像や記事を引用していたが、つい最近、ニューズウィーク日本版5-24号が再び取り上げていたので、あらためてBBCニュースの原文にあたり、そのときのやりとりを追ってみた。
園遊会で、当時の警備担当責任者だったLucy D'Orsi女史を紹介されると、
女王「そりゃ、お気の毒だったわね(Oh, bad luck.)」 と切り出されたという。
D'Orsi女史「ご存知かどうか知りませんが、あの時は大変な試練でした(I was the Gold Commander so I'm not sure whether you knew, but it was quite a testing time for me.)」と話しかけると、
女王「知ってたわ(I did.)」。
D'Orsi女史「(中国側メンバーが、英国側との打ち合わせの際、何らかの理由で)訪問を打ち切ると言って退席したときのことったら・・・(It was at the point they walked out of Lancaster House and told me that the trip was off, that I felt...)」というエピソードを話したところ、
女王「大使に対して失礼だわねえ(They were very rude to the ambassador.)」 注:在中国英国大使であるBarbara Woodward女史のこと
D'Orsi女史「仰る通りで・・・とても失礼だし外交上も配慮に欠けて、あり得ないものだと思いました(They were... it was very rude and undiplomatic I thought.)」と女王に同意すると、
女王「普通じゃないわね(extraordinary)」と呟いたようだ。
産経新聞の特集記事では、「習氏の訪英で、英国側に約束した中国の投資額は6兆6800億円にまで膨張」し、「投資額に伴って態度も不遜の度を膨らませた」と解説する。「独立国家としての主権を侵犯しかねぬ中国側護衛官の護身用銃器携帯と反習近平政権デモ取り締まりまで平然と要求した模様だ」というのだ。いずれも拒否したらしいが、「このときも『訪英中止』を切り出して威嚇した」らしい。
実は不遜な中国は、このときが初めてではない。同特集記事によると、2年前の2014年6月、李克強首相が訪英し、液化天然ガス(LNG)の対中輸出など2兆4000億円超を成約したときも、英ガーディアン紙は「李首相は新たな属国に気前よく金品を与える植民地総督」と報じたらしい。当時、「中国は『訪英中止』をちらつかせ」ながら「国家元首でもない李首相と女王との会見を強要した」らしいし(国家主席になる前の習近平氏が民主党政権時代に訪日して天皇陛下との面会をねじ込んだのを思い出す)、ほかにも「李首相の英国到着時に空港で用意された赤カーペットが3メートル短かったと文句を言うなど《植民地総督》を気取った」らしい。
つまり英ガーディアン紙などのメディアは、英国=属国と揶揄し、金満国・中国におもねる卑屈な英国政府のことを腹に据えかねていたようなのだ。英国・中国双方とも当局者は、今回の習近平国家主席の訪英を(外交辞令とは言え)大成功と自画自賛し、中国政府はご丁寧にBBCニュースの女王コメントを検閲の上、いつものようにBlack-out(画面を消)して、「英中黄金時代の幕開け」などと嘯いたようだ。ニューズウィーク日本版5-24号は、女王がうっかり本音を漏らしたのではなく、意図的なメッセージを発したと見る向きもある、と報じているが、私なんぞは、魂を売った英国政府に女王陛下が苦言を呈したというストーリーにとても納得してしまう。それでこそ、英国民から愛される、痩せても枯れても旧・大英帝国の女王だ。
(参考)「お茶目な女王」4月29日付 http://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20160429
園遊会で、当時の警備担当責任者だったLucy D'Orsi女史を紹介されると、
女王「そりゃ、お気の毒だったわね(Oh, bad luck.)」 と切り出されたという。
D'Orsi女史「ご存知かどうか知りませんが、あの時は大変な試練でした(I was the Gold Commander so I'm not sure whether you knew, but it was quite a testing time for me.)」と話しかけると、
女王「知ってたわ(I did.)」。
D'Orsi女史「(中国側メンバーが、英国側との打ち合わせの際、何らかの理由で)訪問を打ち切ると言って退席したときのことったら・・・(It was at the point they walked out of Lancaster House and told me that the trip was off, that I felt...)」というエピソードを話したところ、
女王「大使に対して失礼だわねえ(They were very rude to the ambassador.)」 注:在中国英国大使であるBarbara Woodward女史のこと
D'Orsi女史「仰る通りで・・・とても失礼だし外交上も配慮に欠けて、あり得ないものだと思いました(They were... it was very rude and undiplomatic I thought.)」と女王に同意すると、
女王「普通じゃないわね(extraordinary)」と呟いたようだ。
産経新聞の特集記事では、「習氏の訪英で、英国側に約束した中国の投資額は6兆6800億円にまで膨張」し、「投資額に伴って態度も不遜の度を膨らませた」と解説する。「独立国家としての主権を侵犯しかねぬ中国側護衛官の護身用銃器携帯と反習近平政権デモ取り締まりまで平然と要求した模様だ」というのだ。いずれも拒否したらしいが、「このときも『訪英中止』を切り出して威嚇した」らしい。
実は不遜な中国は、このときが初めてではない。同特集記事によると、2年前の2014年6月、李克強首相が訪英し、液化天然ガス(LNG)の対中輸出など2兆4000億円超を成約したときも、英ガーディアン紙は「李首相は新たな属国に気前よく金品を与える植民地総督」と報じたらしい。当時、「中国は『訪英中止』をちらつかせ」ながら「国家元首でもない李首相と女王との会見を強要した」らしいし(国家主席になる前の習近平氏が民主党政権時代に訪日して天皇陛下との面会をねじ込んだのを思い出す)、ほかにも「李首相の英国到着時に空港で用意された赤カーペットが3メートル短かったと文句を言うなど《植民地総督》を気取った」らしい。
つまり英ガーディアン紙などのメディアは、英国=属国と揶揄し、金満国・中国におもねる卑屈な英国政府のことを腹に据えかねていたようなのだ。英国・中国双方とも当局者は、今回の習近平国家主席の訪英を(外交辞令とは言え)大成功と自画自賛し、中国政府はご丁寧にBBCニュースの女王コメントを検閲の上、いつものようにBlack-out(画面を消)して、「英中黄金時代の幕開け」などと嘯いたようだ。ニューズウィーク日本版5-24号は、女王がうっかり本音を漏らしたのではなく、意図的なメッセージを発したと見る向きもある、と報じているが、私なんぞは、魂を売った英国政府に女王陛下が苦言を呈したというストーリーにとても納得してしまう。それでこそ、英国民から愛される、痩せても枯れても旧・大英帝国の女王だ。
(参考)「お茶目な女王」4月29日付 http://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20160429