風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

コロナ禍との戦い

2020-03-21 23:32:42 | 時事放談
 今朝の日経・朝刊は、国内および諸外国の新型コロナウイルス情勢と、五輪の聖火到着を伝えて、複雑な思いになった。
 先ず「一斉休校 延長せず」との大見出しである。国内では地域ごとに感染状況がまだら模様で、状況に応じて再開の可否を判断する指針が週明けに示されるという。昨日の対策本部の発表を伝えるもので、安倍さんはその前日の専門家会合が示した分析から「爆発的な感染拡大には進んでおらず、引き続きもちこたえているものの、都心部を中心に感染者が少しずつ増えている」と引用し、さらに「オーバーシュート」なる耳慣れない言葉をも引用しながら、気が緩むのを戒めた。アメリカなどの車社会と違って、公共交通機関に人々が密集する日本で感染が爆発的に広まらないのは奇跡的ですらあるように思う。そんな中、上野公園は、宴席禁止の注意書きがあるにもかかわらず花見客で賑わったらしい。私も今月に入ってから夜の外食を自粛して来たので、浮かれたい・・・とまでは言わないまでも、息抜きしたい気持ちはよく分かる。しかし油断は禁物と思う。一体、この閉塞状況はいつまで続くのか・・・諸外国、とりわけ欧米の状況を見れば、ちょっと絶望的になる。
 日本の小康状態とは対照的に、「死者、世界で1万人」「イタリア、中国を上回る」とある(いずれも日経)。中国の数字は信用出来ないので比較には意味がないにしても、現に世界ではオーバーシュートが発生している。イタリアの場合、高齢者が多い人口構成と、医療体制の最近の後退が理由に挙げられているが、彼我の差には戸惑うばかりだ。フランス政府も外出制限の取り締まり強化を宣言し、マクロン大統領は「危機はまだ始まったばかりだ」と警告して、「家にいろ」キャンペーンを展開している。イタリアやフランスのように全国規模ではないイギリス・ロンドンでは、外出制限に続いて全面封鎖が始まるのではないかとの臆測が流れているらしいし、不要不急な人との接触の自粛が求められているドイツでは、大勢の若者が屋外で「コロナ・パーティー」を開く事態が続出しているのが問題になった。アメリカは「全世界への渡航中止」「政府勧告、経済打撃一段と」(日経)とあって、先が見えない。
 そこに並んで「聖火 日本到着」(日経)との皮肉な記事である。一昨日のG7テレビ会議で安倍首相が開催の意向を表明したのに対し「G7の支持を得た」と説明され、安倍さんが言うように「完全な形で実現する」のが望ましいには違いないが、麻生さんが数日前の参院財政金融委員会で語ったように「40年ごとに問題が起きた」ことが再来しかねない絶望的な情勢だ(1940年冬の札幌五輪と夏の東京五輪は戦争のため日本は開催権を返上し、1980年のモスクワ五輪は日本を含む西側諸国が参加を見送った)。平和の祭典は、他方でナショナリズムをちょっと高揚させてガス抜きする代理戦争でもある。これまで4年毎の開催に例外なく、中止をも回数にカウントして来た五輪だけに、延期という選択肢はないという声もあり、気を揉む展開になりそうだ。
 そんなときでも、と言うより、こんなときだからこそ、北朝鮮は今朝、またしても短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体2発を日本海に向けて発射した。そもそも情報がない国で今、何が起こっているのか、感染が広がっているのか、国境を閉鎖して経済的に困窮しているのか、いずれにしてもなんとか注目を集めたい気持ちは分かるが、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いを戦争になぞらえて、それどころではない。こうして戦争になぞらえられる事態だからこそ、なかなか記事にならないものの、対照的にこれまでのところ対策に成功しているのがイスラエルや台湾で、地域柄、準戦時体制にあることから、即応準備が出来ていたと評価する向きがある。そうかも知れない。そうだとすれば、戦後、憲法9条を神棚に飾って拝むことで戦争に巻き込まれずに済んだと信じる人が多い日本が、生ぬるい対応となるのは止むを得ないのかも知れない。それでも「もちこたえている」のは、なんだかんだ言って医療体制がしっかりしていて(検査体制は弱いようだが重篤者をケアできている)、国民が清潔で規律ある行動をとれるからだろう。現場が「もちこたえている」状況は、震災や台風災害でも冷静に対応して世界の称賛を浴びる一方、現場に頼るばかりでリーダーシップが弱いのは先の戦争から何も変わっていない、これが日本という国かと思うと、冒頭に続き、これまたなんだか複雑な思いにとらわれるのである。
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