新型コロナウイルスの呼称を巡って米中が揉めている。たかが子供の喧嘩と言うなかれ。なにしろ中国の「威信」がかかっているのだ(笑)。ツキュディデスは戦争の要因として「富、名誉、恐怖」の三つを挙げたように(当時はキリスト教が普及する前の時代で、宗教戦争なんて想定外、この三つが人間の原初的な欲求ということになる)、国家の「名誉」「威信」は、人類史上、立派な戦争の原因なのだ。トランプ大統領は、「中国ウイルス」と呼んだことに中国が反発しているのに対し、「ウイルスは中国から来たのだから全く正しい呼称だと思う」と正当化したらしい。この単純明快さこそトランプ大統領らしく(笑)、200%支持するので、今日のブログのタイトルは「中国ウイルス」とした。
直接的には6日前に中国外務省の副報道局長が、「米軍が感染症を湖北省武漢市に持ち込んだのかもしれない」とツイートしたことに始まる。今更こんな言いがかりもないもので、アメリカ国務省は直ちに駐米中国大使を呼んで抗議した。16日にはポンペオ国務長官が楊潔篪中国共産党政治局員と電話で協議し、「今は偽情報やくだらない噂を流布するときではなく、あらゆる国が共通の脅威に連携して立ち向かうときだ」と強調したのは、全く以て正論だ。楊氏は「米国の何人かの政治屋は中国をおとしめて汚名をかぶせた」「米国のたくらみは思い通りにならず、中国の利益を損なういかなる行為も必ずや反撃に遭う」と述べたと言うが、言いがかりにもほどがある。中国にとって最も恐れるべきはアメリカでもロシアでもなく、中国人民の反発なものだから、対外関係は国内向けメッセージとして容易に利用される。このあたりは、毎度のことながら、戦略的と褒めそやされる中国にしてはお粗末だと思う(だから私は中国のことはそれほど戦略的とは思わない)。
米中間の非難の応酬をもっと遡ると、ウォルター・ラッセル・ミード教授が2月3日付ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に「中国は『アジアの病人』」(China Is the Real Sick Man of Asia)と題するコラムを寄稿したことに始まる。2月18日に米国務省は、中国の5つの報道機関を中国共産党の「宣伝機関」と認定し、米国内で活動する場合に雇用や資産状況について米政府に報告を義務付ける措置を明らかにしたため、翌19日、中国は報復措置として、WSJの記者3人の記者証を無効にし、国外退去を命じた。さらに上記いきさつを経て、今日、中国は、NY Times、WSJ、ワシントン・ポストを対象に、中国駐在記者の記者証を前倒しで返還するよう求めると発表した。
前置きはこれくらいにして・・・ウォルター・ラッセル・ミード教授は懲りずにWSJに「コロナ禍を利用する中国の深謀」(China’s Coronavirus Opportunity)と題するコラムを寄稿された。これほどの混乱を世界中に撒き散らし、なお開き直る中国は、世界中からどう見られているか、他人事ながら気になるところだが、ミード教授に言わせれば、確かに一見すると、今回のパンデミックは、投資および貿易面で中国に依存し過ぎることのリスクを浮き彫りにしているが、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏が警告するように、「中国政府がグローバルな政策課題に重点を置き、西側諸国が国内の関心事のみを重視すれば、バランスが中国に有利な方向に再度傾く可能性がある」と言う。医療インフラが整備されていない開発途上国こそ困難に直面するため、援助の供与と中国型統治モデルが優れているとするプロパガンダは賛同を得やすく、中国政府はパンデミックという厄災を世界的なチャンスの場に変えることに成功するかも知れない、というわけだ。
安倍さんは、ついぞ「指示」「命令」を発出せず、飽くまで「要請」にとどめて、国のトップとして無責任のそしりを免れないかも知れないが、日本人はそれを素直に受け入れ、生得の、とも言うべき神道的な清らかさを遺憾なく発揮し、粛々とマスクと手洗いを励行して、大幅な行動制限がないにも関わらず、感染者数と言うより重篤者数さらには死亡者数を抑えることに、これまでのところは成功している。この緩さ加減は、欧米民主主義国が試行錯誤する非常事態宣言や強権発動とは比べるべくもなく、そのせいで日本からの渡航者に対して入国制限を課す国や地域は昨日午前6時の時点で75にも及んでいる。それでもなお国内には非常事態宣言は危険だの人権侵害しかねないなどと反発する人が多い。もとより私権の制限を安易に認めるべきではないことは言うまでもないが、今や欧米式の自由民主主義的な統治モデルと、中国式の権威主義敵な統治モデルとの、体制間競争が熾烈を極める時である。非常事態宣言に拒絶反応を示すなら、中国の強権発動と監視社会ぶりに対して、もっとモノ申してもよさそうなものだが・・・などとイヤミを言いたくもなる(笑) 自由民主主義国の強権発動のありようもあるはずで、単に中国をのさばらせたくないだけなのだが。
直接的には6日前に中国外務省の副報道局長が、「米軍が感染症を湖北省武漢市に持ち込んだのかもしれない」とツイートしたことに始まる。今更こんな言いがかりもないもので、アメリカ国務省は直ちに駐米中国大使を呼んで抗議した。16日にはポンペオ国務長官が楊潔篪中国共産党政治局員と電話で協議し、「今は偽情報やくだらない噂を流布するときではなく、あらゆる国が共通の脅威に連携して立ち向かうときだ」と強調したのは、全く以て正論だ。楊氏は「米国の何人かの政治屋は中国をおとしめて汚名をかぶせた」「米国のたくらみは思い通りにならず、中国の利益を損なういかなる行為も必ずや反撃に遭う」と述べたと言うが、言いがかりにもほどがある。中国にとって最も恐れるべきはアメリカでもロシアでもなく、中国人民の反発なものだから、対外関係は国内向けメッセージとして容易に利用される。このあたりは、毎度のことながら、戦略的と褒めそやされる中国にしてはお粗末だと思う(だから私は中国のことはそれほど戦略的とは思わない)。
米中間の非難の応酬をもっと遡ると、ウォルター・ラッセル・ミード教授が2月3日付ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に「中国は『アジアの病人』」(China Is the Real Sick Man of Asia)と題するコラムを寄稿したことに始まる。2月18日に米国務省は、中国の5つの報道機関を中国共産党の「宣伝機関」と認定し、米国内で活動する場合に雇用や資産状況について米政府に報告を義務付ける措置を明らかにしたため、翌19日、中国は報復措置として、WSJの記者3人の記者証を無効にし、国外退去を命じた。さらに上記いきさつを経て、今日、中国は、NY Times、WSJ、ワシントン・ポストを対象に、中国駐在記者の記者証を前倒しで返還するよう求めると発表した。
前置きはこれくらいにして・・・ウォルター・ラッセル・ミード教授は懲りずにWSJに「コロナ禍を利用する中国の深謀」(China’s Coronavirus Opportunity)と題するコラムを寄稿された。これほどの混乱を世界中に撒き散らし、なお開き直る中国は、世界中からどう見られているか、他人事ながら気になるところだが、ミード教授に言わせれば、確かに一見すると、今回のパンデミックは、投資および貿易面で中国に依存し過ぎることのリスクを浮き彫りにしているが、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏が警告するように、「中国政府がグローバルな政策課題に重点を置き、西側諸国が国内の関心事のみを重視すれば、バランスが中国に有利な方向に再度傾く可能性がある」と言う。医療インフラが整備されていない開発途上国こそ困難に直面するため、援助の供与と中国型統治モデルが優れているとするプロパガンダは賛同を得やすく、中国政府はパンデミックという厄災を世界的なチャンスの場に変えることに成功するかも知れない、というわけだ。
安倍さんは、ついぞ「指示」「命令」を発出せず、飽くまで「要請」にとどめて、国のトップとして無責任のそしりを免れないかも知れないが、日本人はそれを素直に受け入れ、生得の、とも言うべき神道的な清らかさを遺憾なく発揮し、粛々とマスクと手洗いを励行して、大幅な行動制限がないにも関わらず、感染者数と言うより重篤者数さらには死亡者数を抑えることに、これまでのところは成功している。この緩さ加減は、欧米民主主義国が試行錯誤する非常事態宣言や強権発動とは比べるべくもなく、そのせいで日本からの渡航者に対して入国制限を課す国や地域は昨日午前6時の時点で75にも及んでいる。それでもなお国内には非常事態宣言は危険だの人権侵害しかねないなどと反発する人が多い。もとより私権の制限を安易に認めるべきではないことは言うまでもないが、今や欧米式の自由民主主義的な統治モデルと、中国式の権威主義敵な統治モデルとの、体制間競争が熾烈を極める時である。非常事態宣言に拒絶反応を示すなら、中国の強権発動と監視社会ぶりに対して、もっとモノ申してもよさそうなものだが・・・などとイヤミを言いたくもなる(笑) 自由民主主義国の強権発動のありようもあるはずで、単に中国をのさばらせたくないだけなのだが。