風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

中・韓が見る日本

2013-02-11 09:13:36 | 時事放談
 ネット上の調査がどこまで現実を反映するかは、調査方法、とりわけ回答者の属性を詳細に確認する必要がありますが、調査結果そのものだけでなく、その結果に対する受け止め方、あるいはある種の命題に対するコメントの中に、真実の一端が垣間見えるように思いますので、いくつか紹介します。
 先ず一つめは、昨年12月、韓国のコミュニティーサイト「ガセンイドットコム」の掲示板に「最新のアジア10ヶ国、親日度調査の結果」とのスレッドが立てられ、親日度調査に関する記事が紹介されたことに対して、さまざまな意見が寄せられたようです(サーチナニュースによる)。
 先ずは調査結果で、「日本という国が『大好き』『好き』」という回答の構成比率は、
     ベトナム   計97(それぞれ45・52)
     フィリピン  計94(67・27)
     タイ     計93(58・35)
     インドネシア 計91(41・50)
     シンガポール 計90(66・24)
     マレーシア  計86(41・45)
     台湾     計84(49・35)
     香港     計84(46・38)
     中国     計55(14・41)
     韓国     計36(8・28)
 回答数(規模)はよく分かりませんが、少なくともネットにアクセスする(従いそれなりにさばけているであろう)若者の国毎の傾向は読み取れ、これ自体は、まあこんなものだろうと誰もが納得するように思いますが、面白いのは、同じ調査で更に「日本人が好きか」「日本へ旅行に行きたいか」「日本の商品・サービスは好きか」といった、似たような、しかし明確に趣旨の異なる質問を続けて問うているところです。
 「日本人が『大好き』『好き』」については、「大好き」が減って「好き」の割合が増えますが、全体としては「日本が~」と似たような傾向です。ところが、「日本へ旅行に『とても行きたい』『行きたい』」、更には「日本の商品・サービスは『大好き』『好き』」になると、他国はともかく、中国では計65(それぞれ32・33)から計82(それぞれ28・54)へ、韓国では計52(それぞれ20・32)から計67(それぞれ12・55)へ跳ね上がります。根っこのところでは、相変わらず政府(あるいは党)による歴史教育を中心とする情報操作で基本的な日本の国家像・日本人像が歪められている現実を想像させますが、日常生活で辛うじて接する、ある意味で表面的な日本の存在を、それなりに現実的に好意的に認識している姿が見えて来ます。
 この調査結果に対するコメントは、残念ながら総論的な見方が多く、意外に冷静なところがある反面、歴史観に揺るぎがないことは明らかで、やはり歴史教育の影響は根強いようです。

○「調査方法がネットリサーチとは。ネット上にいる韓国人が日本を好きなわけがない」
○「東南アジアの国々の好感度は、日本の経済力と文化波及力が根本にある。日本の過去の問題や右翼化などのネガティブなイメージは、これを問題視する韓国と中国の国力の伸長とかみ合って、ますます強くなっているのが現実」
○「この調査結果は、“韓国は中国よりも世界最高の反日教育、反日国家”と広報するために、極右が業者に作成させたねつ造資料にしか見えません。」
○「なぜいつも日本人はこのような調査をするの?「日本が好き」「日本人が好き」という項目を作成すること自体が本当に笑わせる。いつも世界中から「嫌われて」はいないかと気をもんでいるような気がする(笑)」
○「今、私たちが使用しているサイト(ガセンイドットコム)も “海外の人々は私たちをどのように見るか気になる”というもの。結局は同じでは?」

 次に、ちょうど同じ頃(昨年12月)、韓国のコミュニティーサイト「etorrent」の掲示板で、折しも衆院選挙で民主党の枝野氏が東京都内で街頭演説をしていた際、民団(在日本大韓民国民団)と称する集団(右翼日本人と思われる)が韓国国旗を手に「民主党は韓国の味方だ!民主党がんばれ」などと叫んでいた動画を紹介した上で、「日本は本当に滅びていきますね」とのスレッドを立てたところ、さまざまな意見が寄せられたようです(これもサーチナニュースから)。コメントを見ると、スレ主に同意するものから、冷静なものまで、いろいろで、愛国心との狭間でmixed feelingsが顔を覗かせているのが、なんとも微笑ましい。

○「日本はただでさえ経済が下降しているが、周辺国との交流を自ら狭め、昔の鎖国政策へと進んでいるようだ」
○「日本の電子産業の大手企業は、早期の回復は不可能。今後数十年は掛かるのではないか。電子産業の余波で、ほかの分野も崩れている」
○「経済規模、技術力も重要だが、より重要なのは市民の意識。いくら極右派のおかしな人たちであっても、こんな愚かな行動を始めたのには、さまざまな意味があると思う」
○「日本が下落傾向は確かだが、まだ私たちが見下せるようなレベルではない、まだとてもしっかりしている」
○「日本の大手企業が少し停滞していますが、日本は中小企業も強い。職人的なドイツと日本は生き残るでしょう」
○「日本は滅びゆくことはおろか、最近ますますサービス技術などを再検討し、発展させようと努力しています。大きな災害が無い限り、そんなことはなさそう」
○「まだ強大です。ノーベル賞受賞者だけでも、比較すら不可能」
○「それでもまだ韓国よりはるかに先進国、くそ」
○「滅びても経済的な部分では、わが国よりも優れている」

 続いて、昨年5月、今度は中国の大手検索サイト百度の掲示板に「中国はいつになったら日本より進んだ先進国になるのか?」というスレッドが立てられました(これもサーチナニュースから)。尖閣問題が先鋭化する前でもあり、比較的穏当なコメントも見られます。

○「スレ主が生きているうちには必ず日本を超えると言い切れる」
○「20年とかからずに日本を超える」
○「20年もすれば1人当たりGDPも日本を超える。その時には日・中の技術面での差もほぼなくなる。中国の市場規模の大きさと資源の豊富さを考えればまちがいない」
○「経済では20-30年、民衆の民度は50年。全体の科学技術面では差はない」
○「中国の経済や人的分野、文化的分野では日本を超えているかもしれない。でも環境問題では永遠に発展途上国」
○「そんなことは永遠に考えない方がいい」
○「自分が生きているうちはまず無理だな」
○「世界大戦か大きな災害でも起きない限り、日本を超えるのを見ることはない」
○「もっと現実的な小さなところから見てみようよ。信号を守ることができるようになってから、日本を超えることを語ろう」
○「科学技術と民度が一緒に進歩しないと意味がない。腐敗役人多すぎ」
○「全国民のマナーが向上すれば、日本を超える日を見られる」

 更に、かれこれ一年前(昨年3月)、同じく中国の大手検索サイト百度の掲示板に「米国が衰退したら日本は東アジアの超大国となるのか?」というスレッドが立てられました(これもサーチナニュースから)。同じく尖閣問題が先鋭化する前ですが、中国とは言っても、さまざまな意見があることが分かります。

○「当然そうなるさ。」
○「米国が衰退したら血なまぐさいことになるに違いない。ちょうど英国の衰退が世界大戦を引き起こしたようにだ。オレが生きているうちは米国に衰退してもらいたくないよ。」
○「中国人は日本消滅を夢にまで見るんだよなぁ。でも永遠に夢のままだ。」
○「米国が東アジアに駐留するのもいいことだね。中国にとっても有利な面があるよ。日本の軍国主義復活を防ぐことができているから。でも日本は作りたいと思えば3カ月で核兵器が作れる。」
○「日本の食料自給率は40%を切っているらしいぞ。米国からの食糧輸入がなければ、まずは食事の問題を解決しないと。たぶん東南アジアから輸入するようになるだろうけどね。」
○「日本は経済面だけは見ることができる。」
○「日本は経済的な優位性がある。人口はまだしも、面積、地理的位置、軍事、国力、影響力といったら…。」
○「中国のGDPは世界第2位だ。軍事力では日本に勝っている。」
○「日本が超大国なんてあり得ない。日中は近いんだ。中国の戦術ミサイルには閉口するって。」
○「日本のアジアにおける政治的地位は昔から属国と決まっている。島国が覇権をとろうなんて…前途はないね。」
○「欧米以外の地区は競争力を持った核心的な価値を有していない。欧米が終わったら全世界が中世の時代になるよ。」

 最後に、比較のため、一昨年の10月、フランスのオンラインマガジンサイト「Suite101」で、もしも日本が災害で沈没してしまったら?という状況を考察しているそうです(これもサーチナニュースから)。東日本大震災から半年経って、日本は自然災害の多い国であることが再認識されるとともに、復興もまた注目される中での、余り趣味が良いとは言えない、一種の思考の遊びですが、フランスというプライドが高い国の、クセはありますがそれなりに見識はありそうな人の見方として興味深いものがあります。以下はそのニュース記事の引用です。

(引用はじめ)
 まず、一国家がなくなった場合、事務的な問題があると指摘。国の合併や分割ならば、その後認定された国が、その領土内のことを引き継ぐ。しかし、沈没して消滅となると、国債の返済金などの支払いができなくなるほか、生存した日本人の国籍がどうなるかなどの問題が発生するだろうと述べている。
 また、政治的なバランスの崩れも挙げている。日本がなくなった場合、中国がアジアの覇者としてすぐに名乗りをあげ、アジア圏を独占するだろうと予測。また、米国は日本があったからこそ政治および軍事面でもアジアに力を持つことができている状況なので、米国の影響力はアジア圏で弱まる。この場合、日本にある米国の軍事施設などにより、安全が保たれている状況の台湾などの小国が受ける影響も多大だろうと記している。
 ほかには、日本が生み出し、世界に発信している技術力がなくなることは世界的な損失だと述べている。日本の技術は、日本以外では生み出せないような高度な技術もあり、日本がなくなると、今後の技術発展のスピードも落ちるだろうと予測している。
 筆者は、地球上の島が沈没することはこれまでにもあったとし、日本は島国の国家であるが、経済面でも技術面でも世界のトップクラスの国であり、これが沈没したら世界が変わることになる、との見方を示している。
(引用おわり)

 確かに日本人は、他者(他国)から自分(自国)がどう見られているかを気にする民族と言われ、これまでにも多くの日本論や日本人論がものされて来ました。もともと「出る杭は打たれる」と、足並み揃えることを気にする、長らく外に対する門戸を制限してきた農耕民族が、いきなり国際社会に門戸を開いて、しかも何かと存在感が目立つようになって、立ち居振る舞いや身だしなみを気にするサガのようなものなのでしょうか。大衆社会で、世論に訴えるのも重要と言われて久しいですが、前回、前々回に関連して、何かと外交面で付き合うのが簡単ではない中・韓の、それでは庶民レベルでは日本がどのように受け止められているかを見ることは、世論に訴えていく際に何らかの示唆を含むように思います。
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