最後に訪問国の印象を点描する。
メルボルンは遠い。シンガポールまで7時間半、更に7時間半、待ち時間を挟んで16時間以上の長旅である。日本からの直行便がないのも一つの理由だが、そもそもオーストラリアという国が東の最果て、南の最果てなのである。イギリスが流刑の地としたのも故なしとしないが、そんなところにポツリと白人社会が出来たのだから不思議である。皮膚癌を気にしなければならないほどの陽光と、農業と資源で食って行けるほどの豊かな自然の恵みを受けて、どこか大らかな余裕を感じさせ、それが昔も今もなお人々を惹きつけるのであろう。シドニー駐在の頃、国の歴史にまつわる本を読んだところ、オーストラリアでは先祖のことを尋ねてはいけないとあった。勿論、今なお移民一世が増え続ける中では、もはやそんなことはあるまいが、アメリカが移民の国として所謂サラダボールと言われ、さまざまでありながらも、なおアメリカという国のアイデンティティを色濃く確立しつつあるのに対し、オーストラリアはサラダボールの素材がむき出しのままだ。その分、美味いイタリア料理やシーフードや、美味い珈琲に出会うことが出来る(アメリカでは素材が薄まってしまって、何もかも味が薄い)。
シンガポールは、この季節、ヘイズ(Haze)で曇っていた。越境汚染として問題となっている「煙霧」で、PM2.5も含まれる。主にスマトラ島(インドネシア)のプランテーションでの野焼きや森林火災が原因で、発生した煙がモンスーンの風に乗って渡ってくる。私も、ペナン島(マレーシア)に住んでいた三年間(2005~08年)で一度だけ、朝、煙に気付いて目が覚め、火事でも起こったのかと不安になったことがあった。実際にヘイズ自体は毎年のことなのだが、Wikipediaによると、「2006年と2013年に大規模な煙霧が越境汚染を引き起こした」とあるので、まさにこの2006年のことだったのだろう。周辺国のシンガポールやマレーシアとしては文句を言いたいところだが、近年、需要が急増するパーム油のために熱帯雨林が伐採され、焼き払われてパームヤシに植え替えられるのを、実はシンガポール資本やマレーシア資本が主導しているという話もあって、ややこしい。隣近所はとかく仲が良くないのは、東南アジアにしても同じことで、日本も気にすることはない。
ニューデリーは、まだまだ混沌としている。そのため、出張すると現地の人は(現地の水準からすれば)高級ホテルを予約してくれるのだが、そのホテルが植民地支配の時代の名残りか、大英帝国趣味を彷彿とさせて、余り気分が良いものではない。しかし、貧富の差がありながらも社会がそれほど混乱することなく、まがりなりにも民主的な政治が行われているのは、身分社会ゆえの安定性のお陰だろう。そう思うと、社会というのはそれぞれで、「アラブの春」で犯したアメリカの浅はかさを思う。
上の写真は、シンガポールのホテルからマリナ・ベイ方面を望む。朝の爽やかなはずの空も、ご覧の通り曇っている。
メルボルンは遠い。シンガポールまで7時間半、更に7時間半、待ち時間を挟んで16時間以上の長旅である。日本からの直行便がないのも一つの理由だが、そもそもオーストラリアという国が東の最果て、南の最果てなのである。イギリスが流刑の地としたのも故なしとしないが、そんなところにポツリと白人社会が出来たのだから不思議である。皮膚癌を気にしなければならないほどの陽光と、農業と資源で食って行けるほどの豊かな自然の恵みを受けて、どこか大らかな余裕を感じさせ、それが昔も今もなお人々を惹きつけるのであろう。シドニー駐在の頃、国の歴史にまつわる本を読んだところ、オーストラリアでは先祖のことを尋ねてはいけないとあった。勿論、今なお移民一世が増え続ける中では、もはやそんなことはあるまいが、アメリカが移民の国として所謂サラダボールと言われ、さまざまでありながらも、なおアメリカという国のアイデンティティを色濃く確立しつつあるのに対し、オーストラリアはサラダボールの素材がむき出しのままだ。その分、美味いイタリア料理やシーフードや、美味い珈琲に出会うことが出来る(アメリカでは素材が薄まってしまって、何もかも味が薄い)。
シンガポールは、この季節、ヘイズ(Haze)で曇っていた。越境汚染として問題となっている「煙霧」で、PM2.5も含まれる。主にスマトラ島(インドネシア)のプランテーションでの野焼きや森林火災が原因で、発生した煙がモンスーンの風に乗って渡ってくる。私も、ペナン島(マレーシア)に住んでいた三年間(2005~08年)で一度だけ、朝、煙に気付いて目が覚め、火事でも起こったのかと不安になったことがあった。実際にヘイズ自体は毎年のことなのだが、Wikipediaによると、「2006年と2013年に大規模な煙霧が越境汚染を引き起こした」とあるので、まさにこの2006年のことだったのだろう。周辺国のシンガポールやマレーシアとしては文句を言いたいところだが、近年、需要が急増するパーム油のために熱帯雨林が伐採され、焼き払われてパームヤシに植え替えられるのを、実はシンガポール資本やマレーシア資本が主導しているという話もあって、ややこしい。隣近所はとかく仲が良くないのは、東南アジアにしても同じことで、日本も気にすることはない。
ニューデリーは、まだまだ混沌としている。そのため、出張すると現地の人は(現地の水準からすれば)高級ホテルを予約してくれるのだが、そのホテルが植民地支配の時代の名残りか、大英帝国趣味を彷彿とさせて、余り気分が良いものではない。しかし、貧富の差がありながらも社会がそれほど混乱することなく、まがりなりにも民主的な政治が行われているのは、身分社会ゆえの安定性のお陰だろう。そう思うと、社会というのはそれぞれで、「アラブの春」で犯したアメリカの浅はかさを思う。
上の写真は、シンガポールのホテルからマリナ・ベイ方面を望む。朝の爽やかなはずの空も、ご覧の通り曇っている。
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