風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

参院選(2)百家争鳴

2010-07-09 00:01:37 | 時事放談
 日本に二大政党制が確立したか、定着するかと言うと、これまでのところ、お世辞にもそうは言えそうになく、先は長いと言わざるを得ません。反・自民という風潮は今に始まったことではなく、小泉政権以来の傾向だと、ずっと以前にこのブログでも書きましたが、そういう逆風下にあって、自民党にはなお反省の気配はなく、官僚の作文を読むだけで結局は無策だったかつての習性を変えるに至らず、与党に対抗し得る政権構想、すなわち保守の理念や国家のグランド・デザインといったものが見えて来ません。一方の民主党は、自民党との違いを強調する余り、反対のための反対という万年野党の意識から抜け切れなかった鳩山政権と比べれば、菅政権になってようやく修正しつつあるように見え、学習効果があったと言えそうですが、マニフェストからは財源も工程表も消え、政局を睨んだ方便のような俄か変節振りと言うべきです。
 二大政党制では政策がお互いに似てくるものだそうで(政治の安定という意味では、ある程度そうなってもらわないと困るのですが)、実際に、菅政権になって、かつては「対等な日米関係」(その実、日中接近による日米中の正三角形論)と言って憚らなかった外交・安保では、「日米同盟の深化」を言い、かつて4年間は消費税率引き上げを行わないと公言して、目配りが見られなかった財政では、自民党の10%を参考にすると言及しましたが、どこまで本気で言っていることなのか。とりわけ消費税は、選挙前に語ることはタブー視されて来たにも係らず、自民党が言い出したからには、民主党だけが悪者になることはないと楽観したか、今の財政悪化は自民党時代の失政によるものであって、民主党が尻拭いをするのは割りに合わず、超党派という言葉には自民党を巻き込み、自らの責任を逃れる下心があるのか、はたまた過去10ヶ月の鳩山政権の失政を、敢えて消費税を言い出すことで争点を逸らせようと画策したか、あるいはこれまで民主党のアキレス腱とされて来た経済(成長)や財政(再建)にも切り込んで、本格政権を目指そうとする野心があるのか。
 こうして二大政党が傑出したリーダーシップを発揮し得ない体たらくにあって、それが第三極と呼ばれる新興野党グループにチャンス到来とはならず、民主・自民の二大政党を追い詰めていないところが残念ではあります。旧来の野党である共産党や社民党とは一線を画して、常に政権与党たり得る現実的な政策を掲げて競い合うのは良いのですが、どこも似たり寄ったりでありながら、百家争鳴、結局、小異を捨てて大同につけないのが、もどかしくもあります。そこが政治家が小粒になったと言われる所以かも知れません。小選挙区のせいでしょうか。
 問題は政治家だけにとどまらず、国民の側にも問題があります。日本人は国家意識が欠落している・・・と言って言い過ぎなら、極めて希薄だとは言えましょう。それは先日紹介したピュー・グローバルという調査機関が実施した意識調査にも見られる特徴で、江戸時代以来の伝統か、あるいは高度成長期の影響かはシカとは分かりませんが、お上を頼らない根性が染みついていて、国と地方公共団体が抱える借金が、他の先進諸国と比べて対GDPで途方もないレベルに達していることを、国民一人ひとりがどこまで深刻に捉えているのか疑問です。恐らく、高度成長期以来、与党の政治家が人気取りのために地方にばら撒いたツケとしか見ていないくて、今さら国民が負担するのは真っ平ごめんとでも思っているのでしょうか。消費税論議がまるで他人事のように盛り上がらず、伝統的に人気を呼ばない背景には、国民のそうした意識が潜んでいるように思います。
 更に第四の権力と言われて久しいマスコミまでもが百家争鳴の状態で、国難とも言えるこの期に及んで、日本はなお漂流しているように見えて仕方ありません。参院選の投票率は果たして上がるのでしょうか。
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