風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ボストン・マラソン・テロ事件(続)

2013-04-21 15:15:33 | 時事放談
 事件の進展は速かったですね。FBIによって、事件の容疑者とみられる男二人の写真と映像が公開されたのは18日のことで、その深夜から未明にかけて、ボストン近郊ウォータータウンで地元警察当局と銃撃戦になり、一人(兄)は負傷し拘束されて病院で死亡、もう一人(弟)も間もなく拘束されました。
 一番のポイントは、日本でも、最近、ニュースによく登場する、街中に設置される監視カメラの映像で、こうして見ると、私たちは、特に人通りの多い街中では監視カメラに囲まれていると言えなくもありません。Wikipediaによると、「イギリスで2005年7月7日に起きたバス、地下鉄を標的とした爆弾テロにおいて、犯人検挙が迅速に行われたのは、監視カメラの記録に負うところ大」、とあり、テロをきっかけに防犯意識が高まり、映像記録技術の進歩とともに、犯罪行為の証拠の記録とともに、予防効果も狙って、繁華街や街頭、街路周辺に設置されることが多くなっているのでしょう。
 もう一つ面白いと思ったのは、新しいメディアとの関わりです。監視カメラも、顔認証技術と、Facebookなどの「プロフィール写真」や「今ここにいる」位置情報が組み合わされれば、いずれ外出中の個人が特定出来てしまいかねないといった警告記事を読んだことがありますが、将来のことと言わず、今、既に公表されている情報(例えば経歴だけでなく何に対して「いいね」と投票しているか、とか)だけからでもかなり正確に個人の政治思想や性格診断が出来ると言われるほどの世の中です。民間企業だけでなく公共団体が持つビッグデータの活用にも注目が集まるご時世で、情報の砂漠の中からコンピュータ技術を駆使すれば貴重な金粉を掘り出すことはわけがない・・・というのは近い将来のことで今回はそこまでは行きませんが、それでも、出身高校のことや、「宗教はイスラム教」「人生で最も重要なこと職業とカネ」など、ロシア系SNSに登録されている本人ページの情報が報道されていました。また記載されている内容にはイスラム教に関するものが多く、プロフィール頁には、「イスラム聖戦士にシリアへ行って反乱軍とともに戦うことを煽っているもの」と、「コーランを暗唱しながら育った盲目の少年とクウェートのファハド・アル・カンダリとのインタビュー」の動画が掲載されているそうです。そして、19日に名前が公表されるや、「怒りに満ちた糾弾のメッセージや『ギフト』機能を利用したパトカーやダイナマイト、レンガの画像などが投稿され始めた」そうです(ウォールストリートジャーナル)。
 犯人はチェチェン共和国出身のイスラム教徒ということで、テロ組織との関連が疑われています。当初は、最近(10年くらい前)移民したけれども所謂「負け組」で社会に馴染めないことが原因といった報道も見られましたが、それだけであれほど大掛かりな爆破事件を起こすものかと疑問に思っていたところ、どうやら兄弟は成績優秀で、しかし宗教にのめり込んでいったことがクローズアップされるようになりました。経済的背景ではせいぜい銃による乱射、無差別殺人事件を起こす程度で(そうは言っても重大ですが)、爆破テロに発展した背景に宗教的確信があったことには、なんとなく納得しました(それにしては、今回は殉教性がないのが不思議)。さらに、そんな二人が永住権と国籍をそれぞれ取得しているという報道に接して、移民大国・アメリカのアキレス腱となっているところのものを感じました。かつて国内の融和を重視して国際的に孤立主義を標榜していた頃までは良かったのですが、経済大国そして政治大国として台頭し、「世界の警察官」として積極的に世界と関わりを深めるほどに、世界各地で起こす摩擦が、そのまま移民大国として国内に飛び火して社会不安を引き起こしかねないからです。もともと宗教国と言えるほど、進化論教育や妊娠中絶などの宗教を背景とする問題を抱えるほか、銃規制問題に見られるように、国としての成り立ち、いわば「国づくり神話」を大切にする保守派勢力が今もなお根強い一方で、英語を話さない人が増え、民族固有の文化を守りながら必ずしも移民先のアメリカに忠誠を尽くすわけではない人が増えている現実があります。以前、他のブログで、日本は共通の歴史という過去でまとまる国、アメリカはアメリカン・ドリームという未来に向かってまとまる国と表現したことがありますが、かつては私も憧れたアメリカに、圧倒的な力や勢いがなくなり、格差社会で誰もが幸せになる夢や可能性が遠のきつつある中で、流動化する国際社会を映す鏡のようなアメリカは、多様性の圧力に動揺し、社会的な分断状況を隠せなくなり、国としての輝きを失いつつある寂しさを感じます。難しい時代になったものです。
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