風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

キムチ起源論争

2021-02-07 22:43:18 | グルメとして
 私は、韓国料理と聞くと、懐かしさとともに感謝の念を抱く。四半世紀前、ボストンに駐在していた頃、外食と言えば、和食に近い韓国料理がお手軽で、足繁く通ってお世話になったからだ。和食レストランが近所(独立戦争で有名なレキシントン・コンコードの戦いのコンコード)に出来たというので喜んだのも束の間、寿司主体で高級の部類に属するため、たまに贅沢をする時にしか使わなかった。当時は乳飲み子を抱えて、マクドナルドでは寂しいし、大味のステーキでは胃がもたれるし、シーフィードや中華料理は毎週だと飽きてしまう。移民の国アメリカとは言っても、半ばアジアとも言える西海岸とは異なる、東海岸の、ハリウッド映画がヨーロッパ・ロケの代用とするようなニューイングランドと呼ばれる地の一コマである。在韓米軍のお陰で、韓国人女性と結婚する兵士がいて、米軍基地の近くには韓国レストランが多いのだと聞いた。マレーシアに駐在していた頃も、どうしても和食が寿司・天婦羅など高級食と扱われる中で、韓国料理は外食での定番のひとつであり、付け出しの小皿が5~6皿、キムチ食べ放題なのが嬉しかった。
 そんなわけで、前置きが長くなったが、韓国と中国の間で俄かにキムチ起源論争が勃発したと聞くと、有名なソメイヨシノをはじめ、武士道、天皇、神道、相撲、剣道、茶道、歌舞伎、俳句、和歌、芸者、忍者、日本建築、神代文字、扇子、折り紙、寿司、刺身、納豆、天照大神、卑弥呼、徳川家康、錦鯉、秋田犬に至るまで、また中国との間でも、漢字、石碑、印刷技術、鍼灸、孔子、秦の始皇帝まで、何でも韓国発祥だったり韓国人にしてしまう「ウリジナル」の韓国ではあるが(笑)、キムチはやっぱり韓国だよなあ、と思ってあげたくなる。
 発端は、昨年11月、中国四川省の塩漬け発酵野菜「泡菜(パオツァイ)」の製法や保存法が国際標準化機構(ISO)の認証を受け、中国共産党の機関紙・環球時報が「キムチ宗主国の屈辱」と報道したことで、韓国の人気モッパン(飲食の様子を撮影した動画)ユーチューバーHamzyさんが「中国人がキムチやサムなどを自国の伝統文化だと主張する」と反応すると、すべてのコンテンツが中国のSNSや動画共有プラットフォームから突然削除されたあたりから(金遥楽さんによる)のようだ。何と言っても3000年だか4000年だかの歴史と独自文明を誇ることが出来る中国のことだから、韓国を挑発する(揶揄う)のは、単に「ウリジナル」韓国への意趣返しであろう。
 私自身は幸か不幸か韓国人と仕事をした経験はないに等しいが、一度、韓国系企業の駐在員と食事したときに、韓国人は子供の頃からキムチを食って平気なのかと聞いたら、いや、韓国人でも子供の頃は辛いものは苦手だと笑っていた。
 ムキになる韓国の地理的・歴史的な生い立ちは気の毒だと思う。しかし、たかがキムチ(されどキムチ)である。日本のラーメンや焼き餃子は中国が発祥だし、カレーはインドが発祥だが、今や日本の食事には欠かせないほどの存在感で大いに楽しませてもらっている・・・というように、文化は伝播し、行く先々の土地で独特の発展を遂げるものであって、どちらが先などと目くじらをたてるほどのものではないように思う。
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