風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

25%

2009-09-27 15:42:18 | 時事放談
 先週は、鳩山さんが国連気候変動サミットの開会式で演説し、温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する、極めて意欲的な目標を表明したことが話題になりました。25%の根拠は明確ではありませんし、既にエネルギー効率が高い日本における実現可能性を巡っては、特にインパクトが大きい産業界からの反発が大きいようです。それもあって、そのコストが電力料金や車・家の価格に転嫁され国民負担が増えることがさりげなく喧伝され、国民心理の不安を煽っています。
 実際に、単純な私などは、各家庭でも出来ることもあって、新築の住宅に高断熱と太陽光発電パネルを設置するよう政策誘導すれば随分効果があがるように思いますが、現時点では、パネル費用に200万円、その重量に耐える構造にすることまで含めると500万円かかるとする試算があるのを聞くと、道のりは決して平坦ではないと思わざるを得ません。
 しかし、麻生政権が掲げていた2005年比15%削減(1990年比8%削減)の目標では、国内削減分だけを計上していたという定義上の違いがあるにせよ、全く迫力がありませんでした。そこがリーダーシップの難しさでしょう。麻生さん目標は、経団連と霞ヶ関と自民党が一緒になって作成(実態は霞ヶ関が経団連の意向を聞きながら纏めたと想像)されますが、実現可能性という点では誰もが納得するレベルであっても、リスクを負わないという点から言えば、変化を起こすことは難しい。そういう意味で、25%という数値目標には困難さが伴うとは言え、久しぶりに日本が国際社会をリードせんとする鳩山さんの決意が感じられ、これまでの自民党のやり方からの変化を象徴する目玉の一つと言えます。
 因みに、自民党総裁戦候補者の反応は、河野氏は素晴らしいと絶賛したのに対し、西村氏は米国や中国を新たな国際ルールの枠組みの中に組み込まないと効果がないと指摘し、谷垣氏は国内議論が未成熟で評価はこれからと慎重で、三者三様、これまでの自民党的なものを色濃く残す人ほどネガティブに映ります。
 かつて公害問題が起こった時に、アメリカでは弁護士を大挙して雇い法的な対応を取ろうとした、それに対して日本では正面から取組み技術的な対応を取ろうとした、それがその後の両国の産業の行方を左右したというたとえ話があります。そうした教訓を意識したかどうか、オバマ大統領は政権公約でグリーン・ニューディール政策を打ち出し、かつてパソコンやインターネットによって情報産業分野で日本を凌駕したように、環境・エネルギー分野でもアメリカが台頭することを狙っています。
 25%という目標は、本質的に流動性が低い日本の産業構造を成長分野にシフトさせ(あるいはそれを加速し)、既に江戸期に循環型経済を実現していた日本があらたに低炭素社会のモデルとなる、その契機となり得る潜在力を秘めています。内向きのバラマキ政策が多い民主党にあって、これまで自民党政権ではなかなか言い出せなかったという意味で大胆で、無謀にすら見えますが、今後何十年かの日本の方向性を指し示す積極的・対外的なものとして、大いに期待しています。
 上の写真はペナン島の西海岸にいまも残る高床式の家。これまでの一本調子の成長ではないあらたな発想が必要かも知れません。
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