前福井県議会議員 さとう正雄 福井県政に喝!

前福井県議会議員・さとう正雄の活動日誌。ご意見・情報は smmasao.sato@gmail.com までお願いします。

拉致事件の空白

2009年03月18日 | Weblog
ひきつづき拉致問題について。
2002年12月福井県議会・予算特別委員会でわたしは拉致問題をとりあげた。きっかけは、地元紙「福井新聞」の記事。内容は、「県警は1970年代から、いわゆる北朝鮮の工作員の出入国、あるいは日本国内での活動を監視するという体制をとっていた」「県警の北朝鮮関係の講習会が開かれており、1979年か1980年ごろには拉致がテーマになって、小浜市の事件も内部では拉致事件だということでほぼ確定という認識だったということが警察官によって証言されている」。

講習に参加した捜査員は「ああ、だからいくら捜しても見つからないのだ」と思ったそうだ。
8年~9年ぐらい被害者家族・国民に情報が隠されていたのか。思わず新聞社に電話して担当記者に話を聞いて信憑性を確認した。その記者氏からも「県議会でも取り上げていただくことが必要です」と言われた。

もし「空白の8~9年」がなく、北朝鮮にたいして要求していたら、田口さん、横田さんも今頃日本で生活できていたかもしれない。
   「日朝平壌宣言」は評価しつつも、自民党政治の罪は重い、と思う。
    以下は、2002年の私の県議会質問です。

        ★
◯佐藤委員  県警本部長に、拉致問題について何点か伺う。
 まず、この拉致が疑惑ではなく実際の犯罪ということになったが、捜査状況と、今後の捜査の方針はどうなっているのか。

◯県警本部長  県警としては、事案の全容解明のため現場周辺の状況や過去の捜査資料の精査など、警察庁初め各県警等とも緊密な連携をとって所要の捜査を推進しているところである。

◯佐藤委員  県警として、これは全国一本かもしれないが、今回の事件が北朝鮮による犯行の疑いだということを認識した時期はいつなのか。また、北朝鮮による犯行だと確定した時期はいつなのか。

◯県警本部長  疑いといっても、疑いには濃淡がある。また、確定というのもいろいろな解釈の仕方があるのではないかと思う。
 まず、疑いという点であるが、例えば本県にとってみると、小浜で拉致された当時は本当に行方不明なのかどうなのか全くわからなかった。しかし翌昭和54年には富山で未遂事件が起こっている。さらに昭和55年には国会で質問があり、このときの答弁、あるいはサンケイ新聞の報道等でそのような疑いもほのめかされている。また、昭和52年に、石川県で宇出津事件の検挙もあったので、当時からある程度そういう疑いは視野に入れておくべきことではなかったかと思う。
 それから確定であるが、国の最高責任者である人が犯行を自認したわけであるので、それはもちろん大きな要素であるが、捜査機関としてはきちんと全容を解明するというか、被疑者を特定し、訴追し、裁判で確定すれば、それで確定ということだが、今のところまだそこまでには至っていないため、一生懸命やっているところである。

◯佐藤委員  先日、12月5日付の福井新聞に掲載された記事だが、これを読んで私は非常に衝撃を受けた。これには二つのポイントがある。一つは、県警は1970年代から、いわゆる北朝鮮の工作員の出入国、あるいは日本国内での活動を監視するという体制をとっていたということ。二つ目が、県警の北朝鮮関係の講習会が開かれており、1979年か1980年ごろには拉致がテーマになって、小浜市の事件も内部では拉致事件だということでほぼ確定という認識だったということが警察官によって証言されているわけだが、これについてはどういう見解か。

◯県警本部長  新聞記事がどういう内容であるかはともかくとして、先ほど疑いの濃淡ということを申し上げたが、昭和63年の国会で北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚と言っているし、少なくとも北朝鮮による対日有害活動においては検挙の都度公表もしており、その辺はそういった状況を総合的に判断し、その都度適切に状況を訴えてきたのではないかと思う。

◯佐藤委員  今おっしゃったように、昭和63年の国会で、当時の本庁の警備局長並びに当時の梶山国家公安委員長が、北朝鮮による疑いが濃厚だということで、一連の事件を初めて認められた。私が思うのは、この間、家族の方は必死の思いで探されていたわけである。その家族の方に対してこういう情報が全く提供されなかったのか、あるいは部分的にでももっと早目に何らかの形で提供されていれば、大変苦労をされて、あちこち占いに回ったり浜辺を探し回ったり、無駄とは言わないが、もう少し的を絞れることになったのではないか。その辺についてはどうか。

◯県警本部長  国会の場で、国としてきちんと北朝鮮の疑いではないかというような態度決定がなされていない以上、例えば県警として、あるいは捜査官個々として北朝鮮の疑いであるというふうに断定的なことを申し上げるというのは、立場としては余り適当ではなかったのではないかと思う。

◯佐藤委員  本部長が言われることもよくわかる。だから日本共産党も国会質問では何回か取り上げてきており、ある意味では警察に対して、また政府に対して叱咤激励をしてこの問題をきちんと解明して、そして御家族の皆さんに提供できるようにということで頑張ってきたわけである。だからこういう事件が二度と、もちろん起こってはならないし、日本の国の主権が侵されるような、ひどい事件であるから、ぜひ、本部長言われたように、全容を解明し訴追し裁判にかけるという点で、時効はとまっているという認識でいいか。

◯県警本部長  被疑者が海外にいれば時効はとまっているということである。ただ、そのことについてもきちんと捜査をしなければ解明できたことにはならない。とまっている、とまっていないということも、まさに確定するには至っていない。

◯佐藤委員  今後の捜査等を期待する。

白熱の拉致問題質疑

2009年03月18日 | Weblog
福井県民らが拉致された事件を国会で最初にとりあげて、北朝鮮による犯行の疑いがあると認めさせたのは、1988年3月26日参議院予算委員会での日本共産党・橋本敦議員の質疑でした。

先日は、釜山で大韓航空858便爆破事件の実行犯である金賢姫元工作員と拉致被害者・田口八重子さんの兄の飯塚繁雄さん、八重子さんの息子の耕一郎さんとの対面が大きく報道されました。また、参院拉致問題特別委員会のメンバー12人が佐渡市を訪れ、曽我ひとみさんらが北朝鮮の工作員に拉致された現場などを視察しています。この視察には日本共産党の山下議員が参加しています。
日本共産党は、大韓航空機爆破事件など北朝鮮の国際犯罪を日本の政党のなかで最も早く厳しく批判してきました。その姿勢が、拉致問題の追及にもいきたと思います。

かつて1960年代後半に、当時の宮本顕治書記長ら日本共産党代表団が北朝鮮を訪問したとき、ホテルの部屋には盗聴器が仕掛けられていて、代表団が偶然発見したことがありました。「もうこんな国には来ない」と宮本さんは憤ったそうです。
いま、あらためて1988年の橋本参議院議員の白熱の質疑を紹介しておきたいと思います。
          ★

○橋本敦君 金賢姫を教育したウネあるいはウンへなる人物の問題ですが、この人物については鋭意調査を遂げられておるようですが、経過はどうですか。

○政府委員(城内康光君) お答えします。
 この恩恵の所在捜査の進捗状況でございますけれども、李恩恵なる人物を割り出すために、身元に関する情報及び似顔絵をもとにしまして、家出人の手配データなどを利用して、現在幅広く類似の行方不明者について調べておるところでございます。また、ポスター、チラシなどを全国に配布して、広範な広報活動をやっておるわけでございます。
 特に、本件につきましては捜査というよりはむしろ人捜しという分野でございますので、情報などを国民にできるだけ多く提供して御協力を得たいということでございまして、現在進行形であるということでございます。

○橋本敦君 これは、警察としてはこの恩恵なる人物は日本女性で、日本から位致された疑いが強いと見ているんじゃありませんか。

○政府委員(城内康光君) お答えします。 そのように考えております。

○橋本敦君 それが事実はっきりいたしますと、これはまさに外国からの重大な人権侵犯事件であり、我が国の主権をも侵害する重大な事犯の可能性を含んでいる重大な事件である。ですから、これがはっきりしますと、当然本人の意思を確認して、主権侵害の疑いがあれば原状回復を要求するなど、政府としての断固たる措置をとる必要がある。
 外務大臣、今までの捜査の経過、答弁をお聞きになってどう御判断でしょうか。

○国務大臣(宇野宗佑君) 警察当局からの答弁どおり、ただいま鋭意捜査中でございますから仮定の問題なのかもしれません。しかし仮に、真相究明の結果主権が侵害されたということが確認された場合には、当然日本は主権国家でございますから、それに対する措置を講じなければならない、かように考えています。

○橋本敦君 国家公安委員長として、この恩恵の拉致事件についてどう御判断ですか。

○国務大臣(梶山静六君) 問題の女性の身元割り出しは困難な面があることは否めないことでありますけれども、日本から拉致をされた疑いの持たれることから、事態の重大性にかんがみ、今後とも国民の協力を得つつ力を尽くす所存でございます。

○橋本敦君 拉致事件について言いますならば、単に問題はこれだけではなくて、昭和五十三年七月と八月、わずか二カ月間に四件にわたって若い男女のカップルが突然姿を消すという事件が立て続けに起こっているのであります。これは極めて重大な事件でありますが、福井、新潟、鹿児島そして富山、こうなりますが、一件は未遂であります。
 警察庁、簡単で結構ですが、この三件の事件の概要について述べてください。

○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
 まず、五十三年の七月七日に福井県の小浜市で起きました男女の行方不明事件についてでございますが、当該男性は七月七日に同伴者とデートに行くと言って軽貨物自動車で家を出たまま帰宅しなかった。自動車はキーをつけたままの状態で発見されております。当該女性はデートに行くと言ったまま帰宅しなかったけれども、この同伴者と結婚することになり大変喜んでいた状況がございまして、自殺することは考えられません。
 それからまた、同年七月三十一日に新潟県の柏崎市で起きた事件でございますけれども、やはり当該男性が家の者に、ちょっと出かけてくる、自転車を貸してくれと言って自転車で出かけたまま帰宅しなかった。自転車は柏崎の図書館前に置いてあったのが発見されたわけであります。当該女性は、勤務先の化粧品店で仕事が終わった後、同伴者とデートすると店の従業員に話しておりまして、これも家出などの動機はございません。
 それから三つ目に、同年八月十二日に鹿児島県で起きた事件でございますが、当該男性は同伴者を誘って浜に、海岸に夕日を見に行くと言って出たきり帰宅しなかったということでございます。十四日の日に、その浜のキャンプ場付近でドアロックされたまま車両が発見されております。女性も家の者に、同伴者と浜へ、海岸に夕日を見に行くと言って出たままであるということで、これも動機はございません。
 それから、富山県で起きました未遂事件のことでございますけれども、この事件につきましては、八月十五日の午後六時三十分ごろ、海岸端を歩いていた被害者である男女が自分たちの乗車してきた自家用車の駐車場に帰るために防風林の中を歩いていたということで、そうしたら前方を歩いていた四人組がいきなり襲いかかって、防風林内に引きずり込んでゴム製猿ぐつわあるいは手錠、タオル等を使用して縛り上げて、それぞれ寝袋様のものに入れたと。そして現場から数十メートル離れた松林内に運んで放置したということで、原因はわかりませんがその四人組はいなくなりまして、その後その男女は別々に自力で脱出いたしまして一一〇番した、こういう事件が発生しております。

○橋本敦君 未遂事件を除いて忽然と姿を消した三組の男女について、今も動機はないとおっしゃいましたが、いずれも結婚の約束をして挙式を目前にしている。そういうわけで家族も、家出などは絶対考えられない、こう言っておりますし、さらにまた残されたカメラを現像してみますと、仲よくそれぞれ写真を撮ってそのまま残しているということで、こういう笑顔を残して蒸発してしまうということも、これも異様である。こういうことから、当然これは誘拐された、こう見るのが当然だと思いますが、どうですか。

○政府委員(城内康光君) おおむねそういうことではないかというふうに考えております。

○橋本敦君 したがって、水難で海で死んだとか、自殺をしたとかいったような状況も一切ないわけですね。そこで問題は、この三件について幾つかの点で重要な共通点がある。いずれも日本海側の浜辺、これが犯行現場と目される。それから若い男女がねらわれている。それからもう一つの点として言うならば、全く動機が何にもないということと、その後営利誘拐と見られるあるいはその他犯罪と国内で見られるような国内的状況が一切ない、こういう状況がはっきりしている。いかがですか。

○政府委員(城内康光君) 諸般の状況から考えますと、拉致された疑いがあるのではないかというふうに考えております。

○橋本敦君 未遂事件で遺留した物品があったようですが、これについての検討で犯人像は何か出てきませんか。

○政府委員(城内康光君) お答えします。
 遺留品について見ますと、ゴム製猿ぐつわ、手錠、タオル、寝袋などがあるわけでございますが、その使われましたタオルのうちの一本が大阪府下で製造された品物であるということがわかっておりますが、他のものにつきましてはいずれも粗悪品でありまして、製造場所とか販売ルートなどは不明でございます。

○橋本敦君 袋とか手錠とか、はめた猿ぐつわとか、日本で販売している、日本で製造されている、そういった状況は一切なかったわけですか。

○政府委員(城内康光君) お答えします。
 そういった点につきましては、もちろん手を尽くしていろいろ調べたわけでございますが、結果として、先ほど申し上げたように、製造元とかあるいは販売ルートなどがわからなかったということでございます。

○橋本敦君 ところで話は変わりますが、大阪でコックをしていた原さんという人が突然誘拐されたらしくて所在不明になった。ところが、この原氏と名のる、成り済ました人物が逮捕されてこのことがはっきりしてきたという事件があるようですが、警察庁、説明してください。

○政府委員(城内康光君) お答えします。
 ただいま御質問にありました事件は、いわゆる辛光洙事件というものでございます。これは韓国におきまして一九八五年に摘発した事件でございます。その事件の捜査を韓国側でやったわけでございますが、私どもはICPOルートを通じてそういったことを掌握しておるわけでございまして、それによりますと、一九八〇年に、大阪の当時四十三歳、独身の中華料理店のコックさんが宮崎の青島海岸付近から船に乗せられて拉致されたというような状況がわかっております。

○橋本敦君 辛光洙とはどういう人物ですか。

○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
 本件につきましては、私どもの方で捜査をしたわけではございませんので十分知り得ませんが、私どもとしては恐らく不法に侵入した北朝鮮の工作員であろうというふうに考えております。

○橋本敦君 共犯があると思いますが、共犯者はどういう名前ですか。

○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
 共犯者としては、名前が出ておりますのは、同じく北朝鮮工作員の金吉旭という名前が出ております。

○橋本敦君 その金吉旭は、日本女性の拉致という問題について何らか供述しているという情報に接しておりませんか。

○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
 この北朝鮮工作員金吉旭が一九七八年に次のような指示を上部から受けておるということを承知しております。すなわち、四十五歳から五十歳の独身日本人男性と二十歳代の未婚の日本人女性を北朝鮮へ連れてくるようにという指示を受けていたということでございます。

○橋本敦君 それらが事実とするならば、恐るべき許しがたい国際的謀略であると言わなければなりません。 外務省に伺いますが、同じ昭和五十三年、私が問題にしている一連の事件と同じ年ですが、レバノンでも女性の誘拐事件があったというそういう情報を御存じですか。

○政府委員(恩田宗君) 昭和五十三年の十月三十日から十一月九日までの間に、数回にわたりまして「アンナハール」、それから「ロリアン」というレバノンの日刊紙が誘拐事件について報道している、その報道内容は承知しております。

○橋本敦君 説明してください。

○政府委員(恩田宗君) 内容は、昭和五十三年の春にレバノン人女性五名、これは四名と言っている新聞もございます、が、東京または香港のいずれかのホテルで働くためと言われ、レバノン人に連れられて出国し、最終的には平壌に連れていかれ、訓練キャンプにおいて柔道、空手、諜報技術等を学ばされたが、昭和五十四年秋までにすべての女性がレバノンに帰国した、こういう事実が報道されております。

○橋本敦君 その事実が発覚をして、レバノンのブトロス外務大臣が北朝鮮に厳重に抗議をして、ようやくみんなレバノンに帰ることができたというのが事実じゃありませんか。

○政府委員(恩田宗君) 私どもが承知しておりますのは新聞の報道でございまして、新聞の報道によりますと、レバノン外務省儀典長が当時の北朝鮮通商代表部、レバノンにある通商代表部に申し入れたということだそうでございます。

○橋本敦君 だから、基本的に私が言っている事実に合っているわけです。
 もう一つ、外務省、こういう事実を知っていますか。つまり、昭和五十三年六月のことですが、韓国の映画監督の申相玉氏とその夫人の崔銀姫、この二人、これの拉致事件が起こっていた。この二人はその後脱出をして今アメリカに在住しているようですが、御存じですか。

○政府委員(藤田公郎君) 私ども承知いたしておりますのは、女優の崔銀姫さんが五十三年の一月、映画監督の申相玉さんが同じ年の七月にそれぞれ香港で北朝鮮に拉致をされ、特に監督の方は後を追って行かれたわけですが、投獄をされたりしてしばらく北鮮におられた後映画作製に従事をされ、すきを見て昭和六十一年三月、オーストリアにおきまして米国大使館に逃げ込まれた、日本のジャーナリストの協力を得て逃げ込まれたそうですが、ということが三月に報道が行われまして、五月にお二人が米国において記者会見をされて詳細な事実関係の発表をしておられます。
 ちなみに、明らかになります前に、五十九年には韓国の国家安全企画部が既にこのお二人が北朝鮮に拉致されたという発表を行いまして、これがうそだという応酬などが双方であったわけですが、結果的にお二人が出てこられた。それで、真相と申しますか、韓国側の発表どおりのことをお二人が詳細に説明をされたということでございます。

○橋本敦君 外務省にもう一点聞きますが、その申相玉氏あるいは崔銀姫氏ですが、北朝鮮に連行されたときに、いわゆる東北里招待所、これは訓練所とも金賢姫は言っておりますが、その訓練所で日本人を目撃したということを言っているという情報があるようですが、事実はどうですか。

○政府委員(藤田公郎君) 私もこの金賢姫事件の起こりました後報道で拝読した覚えがありますが、現物は今持っておりません。

○橋本敦君 捜査当局に伺いますが、この発言は恩恵の捜査とも関連し、私が指摘した三組のアベックの拉致事件とも関連をして、東北里で日本人を目撃したというこういう証言というのは、捜査上は非常に大事な関心を持たなくちゃならぬ、あるいは捜査の重大な端緒にもなり得る、こういう発言、情報だとこう思いますが、どうお考えですか。

○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
 東北里でその李恩恵なる人物が日本人を見たというのではなくて、その東北里で李恩恵とそれから金賢姫が一緒だったときに、金賢姫が李恩恵から自分、つまり李恩恵が金正日の誕生パーティーに出たときに日本人の自分と同じような境遇の、つまり拉致されてきた日本人の男女を見たということを言ったということを伝え聞きしておるわけでございます。

○橋本敦君 いずれにしても、その訓練所から脱出をしてきて現にアメリカにいるというこの二人については、十分な情報を収集するという意味で関心を持って調査をしてもよいと私は思って聞いておるんですが、どうですか。

○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
 今の監督とそれからその女優さんのことにつきましては、我が国の法令違反ではございませんので捜査対象というふうなことではありませんが、十分関心を持っているところでございます。

○橋本敦君 外務大臣、自治大臣にお聞きいただきたいんですが、この三組の男女の人たちが行方不明になってから、家族の心痛というのはこれはもうはかりがたいものがあるんですね。
 実際に調べてみましたけれども、六人のうちの二人のお母さんを調べてみましたが、心痛の余り気がおかしくなるような状態に陥っておられましてね、それで、その子供の名前が出ると突然やっぱりおえつ、それから精神的に不安定状況に陥るというのがいまだに続いている。それからある人は、夜中にことりと音がすると、帰ってきたんじゃないかということで、その戸口のところへ行かなければもう寝つかれないという思いがする。それからあるお父さんは、突然いなくなった息子の下宿代や学費を、いつかは帰ると思って払い続けてきたという話もありますね。
 それから、御存じのように新潟柏崎というのは長い日本海海岸ですが、万が一水にはまって死んで浮かんでいないだろうかという思いで親が長い海岸線を、列車で二時間もかかる距離ですが、ひたすら海岸を捜索して歩いた。あるいはまた、一市民が情報を知りたいというのは大変なことですけれども、あらゆる新聞、週刊誌を集めまして何遍も何遍も読んで、もう真っ黒になるほどそれを読み直している家族がある。こう見てみますと、本当に心痛というのはもう大変なものですね。上海でああいう悲惨な事件も起こりましたけれども、家族や両親にとっては耐えられない思いです。
 こういうことで、この問題については、国民の生命あるいは安全を守らなきゃならぬ政府としては、あらゆる情報にも注意力を払い手だてを尽くして、全力を挙げてこの三組の若い男女の行方を、あるいは恩恵を含めて徹底的に調べて、捜査、調査を遂げなきゃならぬという責任があるんだというように私は思うんですね。そういう点について、捜査を預かっていらっしゃる国家公安委員長として、こういう家族の今の苦しみや思いをお聞きになりながらどんなふうにお考えでしょうか。

○国務大臣(梶山静六君) 昭和五十三年以来の一連のアベック行方不明事犯、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございます。解明が大変困難ではございますけれども、事態の重大性にかんがみ、今後とも真相究明のために全力を尽くしていかなければならないと考えておりますし、本人はもちろんでございますが、御家族の皆さん方に深い御同情を申し上げる次第であります。

○橋本敦君 外務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(宇野宗佑君) ただいま国家公安委員長が申されたような気持ち、全く同じでございます。もし、この近代国家、我々の主権が侵されておったという問題は先ほど申し上げましたけれども、このような今平和な世界において全くもって許しがたい人道上の問題がかりそめにも行われておるということに対しましては、むしろ強い憤りを覚えております。

○橋本敦君 警備局長にお伺いしますが、これが誘拐事件だとして、時効の点を私は心配するわけであります。しかし、今国家公安委員長もお話しのように、あるいは外務大臣もお話しのように、これが北朝鮮の工作グループによる犯行だというそういう疑いがある。これが疑いじゃなくて事実がはっきりするならば、これは犯人は外国にいるという状況がはっきりしますから、その意味では時効にはかからない、そういうことは法律的に言えるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
 まず、一連の事件につきましては北朝鮮による拉致の疑いが持たれるところでありまして、既にそういった観点から捜査を行っておるわけであります。一般論としてお答えいたしますと、被疑者が国外に逃亡している場合には時効は停止しているということが法律の規定でございます。

○橋本敦君 そこで外務大臣、この問題が北朝鮮工作グループの犯行だという疑いがぬぐい切れないわけですけれども、そうだといたしますと、大臣が先ほどからおっしゃったように、誘拐された国民に対する重大な人権侵犯、犯罪行為であると同時に、我が国の主権に対する明白な侵害の疑いが出てまいるわけですね。だからそういう意味では、そういう立場で大臣がおっしゃったように主権国家として断固たる処置を将来とらなくてはならぬ、これは当然だと思いますが、その点については私はもう既に国民世論だと思うんです。
 例えば二月九日の読売新聞は、「日本の浜を無法の場にするな」、こういう表題で、
 とまれ、「李恩恵」という人物についての真相解明を急ぐべきであり、北朝鮮側によるら致が事実とあれば、わが国は北朝鮮に対し、原状の回復を求め、同時に、その責任の所在を明確にするための適切な措置をとることが必要である。
  わが国からわが国民をら致するような国に対しては、それがどの国であれ、動機が何であれ、毅然として対応すべきである。わが国がそのような非人道的無法行為の現場にされるいわれはまったくない。
こう言っておりますし、また同じ日の朝日新聞は、事実とすれば、日本の主権にかかわるきわめて重大な事件である。他の国の機関が、日本国内から力ずくで日本人を連れ去るといった理不尽なことが、許されるはずはない。
  日本の警察が北朝鮮にら致されたのではないかとみている三組の男女についても、疑惑は大きく膨らんでいる。
こういうように言っておるわけですね。
 私は、政府として、こういう重大な主権侵害事件として、これから事実が明らかになるにつれて毅然たる態度で原状回復を含めて処置をしていただきたいということをもう一度重ねて要求するのでありますが、いかがですか。

○国務大臣(宇野宗佑君) 先ほども御答弁申し上げましたが、繰り返して申し上げますと、ただいま捜査当局が鋭意捜査中である、したがいまして、あるいは仮定の問題であるかもしれぬ、しかしながら、仮にもしもそうしたことが明らかになれば主権国家として当然とるべき措置はとらねばならぬ、これが私の答えであります。

○橋本敦君 私はきょう、三組の男女、それから未遂事件について被害に遭った人の名前はここでは言いませんでした。警察の方も名前はおっしゃいませんでしたが、しかし捜査はほとんど公開捜査でなされておりますから名前等も明らかですね。また、公開で全国民に協力を呼びかけておられる家族もあるわけです。そうして、家族が一番心配しているのは、いつかこの問題が大きな問題になってくる中で、連れていった先で殺される心配があるのではないかということが本当に悲痛な心配であるんですね。そういうことも含めて私はきょうは名前なしに言いましたが、客観的には氏名等ははっきりしております。
 私はこの問題は、日本国内において断固としてこういった不法な人権侵害や主権侵害は許さない、この男女を救わねばならぬという国民世論がしっかり高まることと、国際的にも相手がどこの国であれこんな蛮行は許さぬ、そして誘拐された人たちは救出せねばならぬ、それが人道上も国際法上も主権国家として当然だという世論が大きく沸き起こりまして、こういう世論の中でこそ、命の安全を確保しながら捜査の資料を次々と引き出し、捜査の目的を遂げ、そして法律的にも事実上もきちんと原状回復を含めた始末をする、こういう方向が強まると思うんですね。隠してはいけない。恐れてはいけない。我が党も、相手がどこの国であれテロや暴力は一切許さないという立場で大韓航空機事件でも対処しているわけですが、そういう立場で、これらの人たちが救出されること、日本政府が毅然とした対処をとることを重ねて要求したいのでありますが、そういう問題について法務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。

○国務大臣(林田悠紀夫君) ただいま外務大臣、国家公安委員長から答弁がありましたように、我が国の主権を侵害するまことに重大な事件でございます。現在警察におきまして鋭意調査中でございまするので、法務省といたしましては重大な関心を持ってこれを見守っており、これが判明するということになりましたならばそこで処置をいたしたいと存じております。