昨日は福井市9条の会で尖閣問題と国会比例代表定数削減問題を学習しました。尖閣問題は私が、比例削減問題は茂呂弁護士が講師をつとめました。
わたしは日本共産党が発表した見解を紹介しながら、「日中国交回復の田中角栄ー周恩来会談でも周恩来に議論を拒否されて引き下がっている。そういう主張しない外交がずっとつづいてきた。だから外国マスコミの報道でも、尖閣が日本の領土として中国をたしなめる論調はまったくみられない。」などとお話しました。
議論では、「今回の事件でやはり日米同盟、沖縄の米軍基地が必要、という声もでている。問題解決を軍事ではなく、9条をいかす立場で、と発信することが大事」「中国の一党独裁、軍の力の問題もあるのではないか」「経済界の思惑はどう働いているのか。尖閣より経済利益という考えもあるのでは」などさまざさまな意見がだされました。
日本政府がきっぱり主張できない問題の根っこにはかつての侵略戦争無反省もあるのだと思います。
国会の比例定数削減計画の問題では、より民意を反映しない国会構成になること、単純小選挙区制のイギリス、オーストラリアでは弊害が顕著になってきている、日本の議員はG7のなかでもアメリカについで少ない、などの点を茂呂弁護士がわかりやすく解説しました。
わたしも「市町村合併で地方議員が大幅に減ったが、それで地方がよくなった、という話はきかない。合併や道州制で議員を減らしても、財界いいなりの無駄づかいはなくならない。むしろ住民の立場でのチェック機能が低下する懸念がつよい。国会議員削減でも、無駄の削減なら320億円の政党助成金をやめた方が、80議席減らすよりも6倍も効果が大きい。こういうことをマスコミもとりあげず、国民がごまかされている」と発言しました。
以下、わたしのレジュメの一部を参考に載せておきます。
★
尖閣諸島問題 2010年10月10日 佐藤
1、最近の経過 ウィキペディアより
5月27日:鳩山由紀夫首相(当時)が「尖閣諸島の帰属問題は日中当事者同士で議論して結論出す」と発言。後日岡田克也(当時外相)が会見で「尖閣に日本の領土問題はない。議論の余地はない」と鳩山発言の内容を否定した。
9月7日午前、中国漁船が日本の領海である沖縄県尖閣諸島付近で操業中、日本の海上保安庁の巡視船が発見。停船を勧告するもそれを無視して漁船は逃走。逃走時に海上保安庁の巡視船に衝突を繰り返し、巡視船2隻を破損。同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕するという事件が起きる。
9月24日:公務執行妨害の疑いで逮捕した中国人船長を処分保留のまま釈放すると発表。船長は25日未明に釈放された。民主党、岡田克也(幹事長)は「政治的な介入はしておらず、検察がみずからの判断で行った。」と政治責任問題を回避する発言に終始する。この間にも中国の漁船(工作船とおぼしき船を含む)は20隻以上、日本の領海である沖縄県尖閣諸島付近に入り込んでいるが、日本政府は特に対応を行っていない。
9月25日:中国政府が中国人船長逮捕に関して日本に謝罪と賠償を要求。菅直人首相は26日、「尖閣はわが国固有の領土だ。そういう観点から賠償は考えられず、全く応じられない」と拒否する考えを示した。
2、日本共産党の見解が注目されています。
井上さとし議員HP・・・市田書記局長のところには民主党の某大物議員から電話があり、「今後、マスコミに出た時はこの立場で話すけどいいか」とのお話だったそうです。外務省の元高官からも賛意が寄せられ「民主党は勉強が足りない」と述べられています。
日本共産党の見解
志位氏はまず、尖閣諸島が近代までいずれの国の支配も及んでいない「無主の地」であり、1895年1月の閣議決定で日本領に編入され、その後、日本の実効支配が続いてきたことをあげ、歴史的にも国際法上も日本の領有権は明らかだと強調しました。
志位氏は、「中国側の主張の最大の問題点は、中国が1895年から1970年までの75年間、一度も日本による領有について異議も抗議も行っていないという事実だ」と指摘。“尖閣諸島は、台湾に付属する島嶼(しょ)として中国固有の領土であり、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだ”という中国側の主張が成り立たないことを、日本への台湾・澎湖列島の割譲を決めた日清講和条約(下関条約、1895年4月)とそれにかかわる交渉過程の詳細な検証を踏まえて明らかにし、「日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾・澎湖列島の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる、正当な行為だった」とのべました。
志位氏は、「わが党は過去の日本による侵略戦争や植民地支配にもっとも厳しく反対し命がけでたたかってきた政党だが、尖閣諸島に対する日本の領有権は、侵略とは別の問題であり、まったく正当だということは間違いない歴史的事実だ」とのべました。
さらに、志位氏は、日本側の最大の問題は、1972年の日中国交正常化以降、日本の領有の正当性を訴えるべき機会が何度もあったにもかかわらず、旧政権から民主党政権にいたるまで、国際社会や中国政府に、道理を尽くして領有の正当性を主張してきたとはいえないことにあると強調。「日本政府に、これまでの態度をあらため、歴史的事実と国際法の道理にそくして尖閣諸島の領有の正当性を、国際社会と中国政府に堂々と主張する外交努力を強めることを求める」とのべました。
同時に、「中国政府に対しても、今回のような問題が起こった場合、事態をエスカレートさせたり、緊張を高める対応を避け、冷静な言動や対応を行うことを求める」と表明しました。
志位氏は、今後、この「見解」に明記された日本共産党の立場を、駐日大使館を通じて、中国を含む各国政府に伝える活動を行うことを明らかにしました。
3、志位委員長代表質問
つぎに尖閣諸島問題について質問します。私は、この間の中国漁船衝突事件のような事態を繰り返させないために何よりも重要なことは、日本政府が、尖閣諸島の領有の大義を理をつくして主張することにあると考えます。
日本共産党は、1972年に見解を発表し、日本の領有には歴史的にも国際法上も明確な根拠があることを明らかにしています。さらに10月4日、より踏み込んだ見解を発表し、日本政府ならびに各国政府にわが党の見解を伝えています。
尖閣諸島の存在は、古くから日本にも中国にも知られていましたが、近代にいたるまでいずれの国の領有にも属さない、国際法でいう「無主の地」――持ち主のない土地でした。日本政府は、1895年1月14日の閣議決定によって尖閣諸島を日本領に編入しましたが、これが歴史的には最初の領有行為となりました。これは「無主の地」を領有の意思をもって占有する、国際法でいう「先占」にあたります。そしてそれ以降、今日にいたるまで、尖閣諸島は、戦後の一時期、米国の施政下に置かれたことがありましたが、日本による実効支配が続いています。以上の歴史的事実にてらして、日本による領有は国際法上明確な根拠があることは明らかですが、まず総理に確認しておきたい。
中国側は、尖閣諸島の領有権を主張していますが、その最大の問題点は、中国が1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議もおこなっていないという事実にあります。中国は、1970年代に入ってからにわかに尖閣諸島の領有権を主張し、その主張の中心点は、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだというものです。しかし、日清戦争の講和を取り決めた下関条約とそれに関するすべての交渉記録にてらしても、日本が中国から侵略によって奪ったのは台湾と澎湖(ほうこ)列島であり、尖閣諸島はそこに含まれていないことは明らかです。
日本共産党は、過去の日本による侵略戦争や植民地支配にもっともきびしく反対してきた政党ですが、日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による侵略とはまったく性格が異なる正当な行為であり、中国側の主張が成り立たないことは明瞭(めいりょう)だと考えます。総理の見解を示していただきたい。
日本側の問題点はどこにあるか。それは、歴代政府が、1972年の日中国交正常化以来、本腰を入れて日本の領有の正当性を主張してきたとはいえない点にあります。
1978年の日中平和友好条約締結のさいに、中国の小平副首相が尖閣諸島の領有問題の「一時棚上げ」を唱えたのにたいし、日本側は領有権を明確な形では主張しませんでした。1992年に中国が「領海法」を決め、尖閣諸島を自国領と明記したさいにも、外務省が口頭で抗議しただけで、政府としての本腰を入れた政治的・外交的対応が何らなされなかったことはきわめて重大です。
そして、今回の事件でも、民主党政権は、「国内法で粛々と対処する」というだけで、領有の大義を根拠を示し、理をつくして主張するという外交活動をおこなっているとはいえません。総理、ここにこそ一番の問題があると考えませんか。
わが党は、日本政府に、こうした態度をあらため、歴史的事実、国際法の道理にそくして、尖閣諸島の領有の正当性を、中国政府と国際社会に堂々と主張する外交努力を強めることを求めるものです。
同時に、中国政府に対しても、今回のような事件が起こった場合、事態をエスカレートさせたり、緊張を高める対応を避け、冷静な言動や対応をおこなうことを求めます。
参考
▼稲田朋美・自民党副幹事長の代表質問
菅政権は外交、安全保障に無責任、無策だ。中国人船長の釈放の判断を検察当局に委ねたのは「政治主導」の自殺行為だ。対中問題をどう認識するか。
外国人に地方選挙権を与えるのは憲法違反ではないか。事実上首相を決める民主党代表選に外国籍の党員、サポーターが投票権を持つことへの見解を。
総理答弁
検察当局が、被害が軽微で犯行の計画性がなく、初犯であることなど事件の性質に加え、我が国国民への影響や日中関係などを総合的に考慮した上で、国内法に基づき粛々と判断した結果だ。検察当局の判断は適切だった。中国に対し間違った教訓を与えたとの指摘はまったく当たらない。尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いなく、解決すべき領有権の問題はそもそも存在していない。
那覇地検次席検事と検事総長の証人喚問は、国会で検討されるべき問題だ。検察捜査の独立性の保障が要請されており、検察官の証人喚問は独立性に悪影響を及ぼす恐れがある。衝突時のビデオの公開は、現在の捜査状況や国会の要望を踏まえ、捜査当局において適切な判断がなされると考える。
日中両国間にさまざまな問題が生じたとしても、隣国同士として冷静に対処することが重要。大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠だ。私と温家宝首相との懇談でも、戦略的互恵関係の推進について改めて確認した。
4、中国、アメリカなどの論評
◆ 新華社 9月22日
温家宝首相 「船長の即時、無条件の釈放を。応じない場合はいっそうの措置をとる」
◆ 中国「環球時報」 9月8日
「日本の巡視船が釣魚島海域で中国漁船に衝突し、中日間の新たな渉外事件となっている。・・・『ぶつかる』のは日本の戦術で、その目的は海域に入る中国漁船のリスクとコストを増すこと・・。」
◆ 米紙「ニューヨーク・タイムズ」 9月22日
「中国と日本との緊張の高まりによって、日本は米国の安全保障の傘の下に回帰しつつある。・・・『米日同盟と自らの軍事力を強化するしか選択肢がない』とシンガポール国立大学の中国軍研究者のホアン・ジン氏は述べた。・・・」
◆ インターネット誌「北京週報日本語版」 9月25日
「この一年来、民主党の『疎米親中』政策は日本の国内保守勢力の攻撃を受けたにとどまらず、世論も民主党の国家利益維持に対して懐疑的であり、そのため、民主党は国を治める正当性を強固にするために、・・強硬な姿勢を示さざるを得なかった。」「中国政府の今回の事件に対する強い姿勢は、台頭した中国には国家利益にかかわる問題で新たな考えがある、ということを日本に暗示しているかのようである」
◆ 米紙「ワシントン・ポスト」 9月23日
「日本の当局者は、日本で尖閣列島と称される係争中の島々をめぐる紛争の責任は人民解放軍だという。・・これまでの事件の場合には中国外務省が事態沈静化の方向で動いたが、今回は軍が指揮した、と日本の外交官は語った。・・・尖閣の紛争は、党中央指導部以外のプレーヤーが中国の外部世界への関与を展開している最新の事例である」
◆ 仏紙「ルモンド」 10月2日
「これほどまでの攻撃性は、中国海周辺に恐怖を撒き散らした。・・なぜ中国は、中国のイメージや国益にも、こんなに逆効果である方法を選んだのか?・・・予測できる結末は、この地域の多くの国が、米国と密かに戦略的接近を図る必要性を感じたということだ」
わたしは日本共産党が発表した見解を紹介しながら、「日中国交回復の田中角栄ー周恩来会談でも周恩来に議論を拒否されて引き下がっている。そういう主張しない外交がずっとつづいてきた。だから外国マスコミの報道でも、尖閣が日本の領土として中国をたしなめる論調はまったくみられない。」などとお話しました。
議論では、「今回の事件でやはり日米同盟、沖縄の米軍基地が必要、という声もでている。問題解決を軍事ではなく、9条をいかす立場で、と発信することが大事」「中国の一党独裁、軍の力の問題もあるのではないか」「経済界の思惑はどう働いているのか。尖閣より経済利益という考えもあるのでは」などさまざさまな意見がだされました。
日本政府がきっぱり主張できない問題の根っこにはかつての侵略戦争無反省もあるのだと思います。
国会の比例定数削減計画の問題では、より民意を反映しない国会構成になること、単純小選挙区制のイギリス、オーストラリアでは弊害が顕著になってきている、日本の議員はG7のなかでもアメリカについで少ない、などの点を茂呂弁護士がわかりやすく解説しました。
わたしも「市町村合併で地方議員が大幅に減ったが、それで地方がよくなった、という話はきかない。合併や道州制で議員を減らしても、財界いいなりの無駄づかいはなくならない。むしろ住民の立場でのチェック機能が低下する懸念がつよい。国会議員削減でも、無駄の削減なら320億円の政党助成金をやめた方が、80議席減らすよりも6倍も効果が大きい。こういうことをマスコミもとりあげず、国民がごまかされている」と発言しました。
以下、わたしのレジュメの一部を参考に載せておきます。
★
尖閣諸島問題 2010年10月10日 佐藤
1、最近の経過 ウィキペディアより
5月27日:鳩山由紀夫首相(当時)が「尖閣諸島の帰属問題は日中当事者同士で議論して結論出す」と発言。後日岡田克也(当時外相)が会見で「尖閣に日本の領土問題はない。議論の余地はない」と鳩山発言の内容を否定した。
9月7日午前、中国漁船が日本の領海である沖縄県尖閣諸島付近で操業中、日本の海上保安庁の巡視船が発見。停船を勧告するもそれを無視して漁船は逃走。逃走時に海上保安庁の巡視船に衝突を繰り返し、巡視船2隻を破損。同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕するという事件が起きる。
9月24日:公務執行妨害の疑いで逮捕した中国人船長を処分保留のまま釈放すると発表。船長は25日未明に釈放された。民主党、岡田克也(幹事長)は「政治的な介入はしておらず、検察がみずからの判断で行った。」と政治責任問題を回避する発言に終始する。この間にも中国の漁船(工作船とおぼしき船を含む)は20隻以上、日本の領海である沖縄県尖閣諸島付近に入り込んでいるが、日本政府は特に対応を行っていない。
9月25日:中国政府が中国人船長逮捕に関して日本に謝罪と賠償を要求。菅直人首相は26日、「尖閣はわが国固有の領土だ。そういう観点から賠償は考えられず、全く応じられない」と拒否する考えを示した。
2、日本共産党の見解が注目されています。
井上さとし議員HP・・・市田書記局長のところには民主党の某大物議員から電話があり、「今後、マスコミに出た時はこの立場で話すけどいいか」とのお話だったそうです。外務省の元高官からも賛意が寄せられ「民主党は勉強が足りない」と述べられています。
日本共産党の見解
志位氏はまず、尖閣諸島が近代までいずれの国の支配も及んでいない「無主の地」であり、1895年1月の閣議決定で日本領に編入され、その後、日本の実効支配が続いてきたことをあげ、歴史的にも国際法上も日本の領有権は明らかだと強調しました。
志位氏は、「中国側の主張の最大の問題点は、中国が1895年から1970年までの75年間、一度も日本による領有について異議も抗議も行っていないという事実だ」と指摘。“尖閣諸島は、台湾に付属する島嶼(しょ)として中国固有の領土であり、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだ”という中国側の主張が成り立たないことを、日本への台湾・澎湖列島の割譲を決めた日清講和条約(下関条約、1895年4月)とそれにかかわる交渉過程の詳細な検証を踏まえて明らかにし、「日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾・澎湖列島の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる、正当な行為だった」とのべました。
志位氏は、「わが党は過去の日本による侵略戦争や植民地支配にもっとも厳しく反対し命がけでたたかってきた政党だが、尖閣諸島に対する日本の領有権は、侵略とは別の問題であり、まったく正当だということは間違いない歴史的事実だ」とのべました。
さらに、志位氏は、日本側の最大の問題は、1972年の日中国交正常化以降、日本の領有の正当性を訴えるべき機会が何度もあったにもかかわらず、旧政権から民主党政権にいたるまで、国際社会や中国政府に、道理を尽くして領有の正当性を主張してきたとはいえないことにあると強調。「日本政府に、これまでの態度をあらため、歴史的事実と国際法の道理にそくして尖閣諸島の領有の正当性を、国際社会と中国政府に堂々と主張する外交努力を強めることを求める」とのべました。
同時に、「中国政府に対しても、今回のような問題が起こった場合、事態をエスカレートさせたり、緊張を高める対応を避け、冷静な言動や対応を行うことを求める」と表明しました。
志位氏は、今後、この「見解」に明記された日本共産党の立場を、駐日大使館を通じて、中国を含む各国政府に伝える活動を行うことを明らかにしました。
3、志位委員長代表質問
つぎに尖閣諸島問題について質問します。私は、この間の中国漁船衝突事件のような事態を繰り返させないために何よりも重要なことは、日本政府が、尖閣諸島の領有の大義を理をつくして主張することにあると考えます。
日本共産党は、1972年に見解を発表し、日本の領有には歴史的にも国際法上も明確な根拠があることを明らかにしています。さらに10月4日、より踏み込んだ見解を発表し、日本政府ならびに各国政府にわが党の見解を伝えています。
尖閣諸島の存在は、古くから日本にも中国にも知られていましたが、近代にいたるまでいずれの国の領有にも属さない、国際法でいう「無主の地」――持ち主のない土地でした。日本政府は、1895年1月14日の閣議決定によって尖閣諸島を日本領に編入しましたが、これが歴史的には最初の領有行為となりました。これは「無主の地」を領有の意思をもって占有する、国際法でいう「先占」にあたります。そしてそれ以降、今日にいたるまで、尖閣諸島は、戦後の一時期、米国の施政下に置かれたことがありましたが、日本による実効支配が続いています。以上の歴史的事実にてらして、日本による領有は国際法上明確な根拠があることは明らかですが、まず総理に確認しておきたい。
中国側は、尖閣諸島の領有権を主張していますが、その最大の問題点は、中国が1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議もおこなっていないという事実にあります。中国は、1970年代に入ってからにわかに尖閣諸島の領有権を主張し、その主張の中心点は、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだというものです。しかし、日清戦争の講和を取り決めた下関条約とそれに関するすべての交渉記録にてらしても、日本が中国から侵略によって奪ったのは台湾と澎湖(ほうこ)列島であり、尖閣諸島はそこに含まれていないことは明らかです。
日本共産党は、過去の日本による侵略戦争や植民地支配にもっともきびしく反対してきた政党ですが、日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による侵略とはまったく性格が異なる正当な行為であり、中国側の主張が成り立たないことは明瞭(めいりょう)だと考えます。総理の見解を示していただきたい。
日本側の問題点はどこにあるか。それは、歴代政府が、1972年の日中国交正常化以来、本腰を入れて日本の領有の正当性を主張してきたとはいえない点にあります。
1978年の日中平和友好条約締結のさいに、中国の小平副首相が尖閣諸島の領有問題の「一時棚上げ」を唱えたのにたいし、日本側は領有権を明確な形では主張しませんでした。1992年に中国が「領海法」を決め、尖閣諸島を自国領と明記したさいにも、外務省が口頭で抗議しただけで、政府としての本腰を入れた政治的・外交的対応が何らなされなかったことはきわめて重大です。
そして、今回の事件でも、民主党政権は、「国内法で粛々と対処する」というだけで、領有の大義を根拠を示し、理をつくして主張するという外交活動をおこなっているとはいえません。総理、ここにこそ一番の問題があると考えませんか。
わが党は、日本政府に、こうした態度をあらため、歴史的事実、国際法の道理にそくして、尖閣諸島の領有の正当性を、中国政府と国際社会に堂々と主張する外交努力を強めることを求めるものです。
同時に、中国政府に対しても、今回のような事件が起こった場合、事態をエスカレートさせたり、緊張を高める対応を避け、冷静な言動や対応をおこなうことを求めます。
参考
▼稲田朋美・自民党副幹事長の代表質問
菅政権は外交、安全保障に無責任、無策だ。中国人船長の釈放の判断を検察当局に委ねたのは「政治主導」の自殺行為だ。対中問題をどう認識するか。
外国人に地方選挙権を与えるのは憲法違反ではないか。事実上首相を決める民主党代表選に外国籍の党員、サポーターが投票権を持つことへの見解を。
総理答弁
検察当局が、被害が軽微で犯行の計画性がなく、初犯であることなど事件の性質に加え、我が国国民への影響や日中関係などを総合的に考慮した上で、国内法に基づき粛々と判断した結果だ。検察当局の判断は適切だった。中国に対し間違った教訓を与えたとの指摘はまったく当たらない。尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いなく、解決すべき領有権の問題はそもそも存在していない。
那覇地検次席検事と検事総長の証人喚問は、国会で検討されるべき問題だ。検察捜査の独立性の保障が要請されており、検察官の証人喚問は独立性に悪影響を及ぼす恐れがある。衝突時のビデオの公開は、現在の捜査状況や国会の要望を踏まえ、捜査当局において適切な判断がなされると考える。
日中両国間にさまざまな問題が生じたとしても、隣国同士として冷静に対処することが重要。大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠だ。私と温家宝首相との懇談でも、戦略的互恵関係の推進について改めて確認した。
4、中国、アメリカなどの論評
◆ 新華社 9月22日
温家宝首相 「船長の即時、無条件の釈放を。応じない場合はいっそうの措置をとる」
◆ 中国「環球時報」 9月8日
「日本の巡視船が釣魚島海域で中国漁船に衝突し、中日間の新たな渉外事件となっている。・・・『ぶつかる』のは日本の戦術で、その目的は海域に入る中国漁船のリスクとコストを増すこと・・。」
◆ 米紙「ニューヨーク・タイムズ」 9月22日
「中国と日本との緊張の高まりによって、日本は米国の安全保障の傘の下に回帰しつつある。・・・『米日同盟と自らの軍事力を強化するしか選択肢がない』とシンガポール国立大学の中国軍研究者のホアン・ジン氏は述べた。・・・」
◆ インターネット誌「北京週報日本語版」 9月25日
「この一年来、民主党の『疎米親中』政策は日本の国内保守勢力の攻撃を受けたにとどまらず、世論も民主党の国家利益維持に対して懐疑的であり、そのため、民主党は国を治める正当性を強固にするために、・・強硬な姿勢を示さざるを得なかった。」「中国政府の今回の事件に対する強い姿勢は、台頭した中国には国家利益にかかわる問題で新たな考えがある、ということを日本に暗示しているかのようである」
◆ 米紙「ワシントン・ポスト」 9月23日
「日本の当局者は、日本で尖閣列島と称される係争中の島々をめぐる紛争の責任は人民解放軍だという。・・これまでの事件の場合には中国外務省が事態沈静化の方向で動いたが、今回は軍が指揮した、と日本の外交官は語った。・・・尖閣の紛争は、党中央指導部以外のプレーヤーが中国の外部世界への関与を展開している最新の事例である」
◆ 仏紙「ルモンド」 10月2日
「これほどまでの攻撃性は、中国海周辺に恐怖を撒き散らした。・・なぜ中国は、中国のイメージや国益にも、こんなに逆効果である方法を選んだのか?・・・予測できる結末は、この地域の多くの国が、米国と密かに戦略的接近を図る必要性を感じたということだ」