前福井県議会議員 さとう正雄 福井県政に喝!

前福井県議会議員・さとう正雄の活動日誌。ご意見・情報は smmasao.sato@gmail.com までお願いします。

3月県議会、原発特別委。原子力防災訓練問題。活断層。福井県と原発輸出

2013年06月16日 | Weblog
2013年03月12 日: 原子力発電・防災対策特別委員会での質疑記録です。


原発と活断層

◯佐藤委員  今の議論や部長報告の、科学的根拠に基づき透明性と公平性を確保した結論をというくだりであるけれども、以前の原子力発電所の耐震性の審査については、そもそもどういう認識なのか。

◯原子力安全対策課長  これについては、新潟県中越沖地震の際に、過去の安全審査でどういう議論がなされたのか、当時の原子力安全委員会側、もしくは原子力安全・保安院側でいろいろな議論をした。過去には、先ほど言ったように、原子力安全・保安院で審査部会をつくり、専門家の先生方がまず審査をし、それから、二次審査として原子力安全委員会側でも審査をしており、そういう意味では、それぞれ違う専門家の先生方によるダブルチェックという形で非常にしっかりと審査がなされたと我々は理解をしている。

◯佐藤委員  当時審査した結果は、今回見直しに至らざるを得ない状況を生み出しているわけである。先ほど、課長は福島第一原発の事故では地震の影響はなかったと思われると言われたけれども、それだってわからない。例えば、女川原発だって、電源系統が1系統だけ生き残っていたから、辛うじて首の皮1枚つながって助かったのであるし、東海第二原発も、防潮堤とかいろいろな仕掛けがちょうど直前に完成していたから助かったということであり、これも首の皮1枚つながった。福島第一原発・第二原発にしても、福井県内にはまだないけれども重要免震棟をつくっていたからそこで指揮がとれたのであり、もし福井のようになかったら、さらに壊滅的な被害になっていたわけである。だから、福島第一原発事故を受けて、国民にも、本当に日本の国がどうなるかわからないような大変な事態になりかねないという危機感があるし、当然学会の中でも危機感があるということだと思う。
 もともと、たしか1980年ごろに活断層研究会が、「日本の活断層」という本を出して、活断層の問題を指摘したが、途端に原子力の土木学会が、平たく言えば、原発の建設を邪魔するような学会の活動は許さないと猛烈に批判して、それこそ横やりを入れたのである。そういうことで、学者の中でも活断層を長く評価するような学者は次々排除されて、短く評価して次々と原発をつくっていくことが実際にされて、今、いろいろと批判や反省の弁が述べられたりしているけれども、やはり当時の国の基準そのものが、非常に不十分だったことが明らかではないか。

◯原子力安全対策課長  委員のおっしゃった活断層学会の中の動きの詳細は承知していないが、基本的に断層の長さをどう判断するのかについては、例えば、近接する5キロメートル以内のものは連続させようなどといういろいろなルールを専門家の先生方がつくり、それで原子力発電所付近の活断層の距離などを議論されたところはある。
 一方で、平成18年に新しい耐震指針ができて以降は、より厳しい連動性なり、同時活動性なりという言葉で、長さを長く捉えた上で評価するよう事業者に求めているのも実態かと思う。例えば、福井県でいくと干飯崎からずっと南の方への連動を評価しろといった形でバックチェックなどもされていたので、近年においては、活断層の同時活動性や連動の問題は非常に長く見る形で評価がなされていると思っている。

◯佐藤委員  あわせて、先ほど議論もあったけれども、活断層の評価については、十二、三万年前以降なのか、40万年前以降なのかが、問題になっている。原子力規制委員会も最近揺らぎ初めて、40万年前以降で評価しないといけないと言ったのを、取り下げるというか、もとに戻るような動きも出てきている。もし仮に40万年前以降まで考えないといけないとなると、全ての原発について再度調査、点検が行われなければいけないけれども、従来どおり十二、三万年前ならそういうことは必要なくなるので、再稼働準備のため揺れ戻しではないかと私は思っているところである。
 やはり、透明性、公平性が言われているのであるから、福島第一原発事故や東日本大震災を受けて、より厳しいチェックをしていかなければいけないのは、当然だと思う。だから、従来の耐震性の判断、断層の活動年代の判断、あるいは変動地形学の知見を排除してきた判断といったものを反省して、より厳しく、安全側の立場で仕事をすることこそ、福井県が求めるべきことではないか。

◯原子力安全対策課長  東日本大震災が起きた前後で、当時の原子力安全・保安院が問題視したのは、東日本大震災以前は日本列島全体が圧縮されるような応力場であり、圧縮されることで生まれる断層が逆断層系というか乗り上がるような形なのだが、それ以前の日本列島は、膨張するというか、外側に引っ張られる正断層系であり、過去に見つかった断層でも、古い正断層系のものはもう動かないだろうという評価がなされたのが、東日本大震災以降、応力場が、全体として日本列島が大きく動いていることで変わったのではないかという指摘があったことである。もう一度、正断層が古いものであっても本当に動くのかどうか、応力場と言われる周りにかかる力を含めて再評価すべき、これが東日本大震災以降の耐震の一つの大きな課題かと思う。
 それを含めて、今、敦賀原発や大飯原発の破砕帯の活動性などの議論がなされているかと思う。そういう意味では、今後、より厳しく、新しい目で各発電所を見ることになるかと思っている。

◯佐藤委員  では、具体的にお聞きするが、敦賀原発2号機の問題で、最初、原子力規制委員会の有識者会合が調査に入って、浦底断層と連動しているという判断もされた。しかし、日本原子力発電が異議を出されて、再度ほかの専門家も入れて協議をしたところ、私も新聞報道しか知らないが、この破砕帯については活動性があるという判断がされ、再度日本原子力発電が異議の申し立てをされたという記事を読んだけれども、県としては、この局面をどう見ているのか。原子力規制委員会と有識者会合の検討で、何が十分で何が不十分だというのがあれば、答えていただきたい。

◯原子力安全対策課長  議論を見て端的に申し上げるが、昨年4月の局面で問題視されたのが、今、委員が言われたように、浦底断層が動いて一緒にこちらの破砕帯が動くのではないかという議論である。先週行われたピアレビューで、浦底断層は4,000年間隔ぐらいの活動周期であり、過去に何回か動いているだろうが、一方で、破砕帯の動いた時期は十何万年前ごろとなると、浦底断層が動いて破砕帯が動くという概念は年代的に本当なのだろうかと言う先生もいらっしゃった。それと、日本原子力発電は、動いた方向を見るための資料片として岩石の薄片をとっているけれども、そういう見方が正しいのかと言われる先生もいらっしゃるので、それぞれの議論の中で、やはり納得するような議論をしっかりとやっていただくのがいいのではないか。先ほど言ったように、浦底断層が動いて破砕帯が動くという議論から、破砕帯だけが単独で動くという議論になっているので、今後、有識者会合においてどういう形で議論されるのかを、我々も注目していこうと思う。

◯佐藤委員  ただ、はっきりしておかなければいけないが、日本原子力発電は、もともと浦底断層にしても、活断層でなかったという主張をずっと続けてきたわけである。そして、国はそういうことも含めて認めてきた経過があるわけである。課長が言われるように、日本原子力発電の主張を検討するのはもちろん構わないけれども、原子力規制委員会という立場の専門家、学会の専門家、事業者側で何とか運転再開したいと思っている専門家とでは、利害が対立するのであるから、議論が合わないことが出てくるのは、当たり前であろう。そこで、県民の立場に立って、より安全に考えればどう判断すべきなのか、そういうことをするのが福井県の仕事である。違うか。

◯原子力安全対策課長  先ほども申したが、地質の中の動き方を分析するというか、例えば、年代測定にしても土の中にあるものをいろいろ議論するのだが、科学的根拠で事業者なりが調査をし、またそれに対して有識者会合の評価をしっかりやっていくべきだと思っているので、どういうとり方でどういう議論をするのか、そこが一番の鍵になるかと思っている。



原子力防災訓練問題

◯佐藤委員  関連であるけれども、今年度は、これまでずっと行ってきた住民参加の原子力防災訓練を、事実上やらないことになった。住民参加の訓練を10年余りずっとやってきたのに、なぜ今年度はやらないのかと、マスコミでも住民の批判の声がたくさん報道されていた。なぜやらないのか。いつやらないと決めたのか。

◯危機対策・防災課長  福井県では実効性のある訓練を実施することを考えており、そのために、原子力規制委員会の指針の中でどのようなものが出てくるかを待っていた。けれども、それが出てこないので、まず、5キロメートル圏の計画をつくり、訓練を実施したいと考えている。

◯佐藤委員  いつやらないと決めたのか。

◯安全環境部長  今ほど課長が申したように、ことしの原子力防災訓練については、避難の経路について見直しがあるので、それを踏まえて行う手順で考えている。2月27日に国が案を示して、私どもが常々申し上げてきたように、5キロメートル圏内の3段階の避難の基準を出した。これで一応の形はできるので、これに応じて5キロメートル圏の計画をつくり、その検証として訓練をやろうとしている。
 2月27日の国の基準を見て、先日、議会で知事から手順としてはそういうふうになると申し上げたところである。

◯佐藤委員  これまでの県の答弁とちょっと違う。これまでは、議会に対して、新しいものができるまでは従来のものがあるからそれでやればいいのだ、もし事故が起こったときには、これでいいとは言わないけれども、とにかく不十分ながらも計画がないわけではないのだという説明であった。ところが、今度は、原子力規制委員会の指針を待ってから訓練をやらなかったのだというが、それは全くおかしいと思う。先ほど、石川委員からも常日ごろの備えが住民には大事だからもう一度やりなさいと指摘され、わかったと言っているが、県自身がそういう常日ごろの備えを怠っているではないのか。

◯危機対策監  今御説明したのは、実際に実践的な訓練をやろうと思うと、それまでにもとになる計画をつくり、それに基づいて実践的な訓練をやることがやり方として一番いいと考えているということである。5キロメートル圏内については、今まで国が出してきたものを踏まえて計画をつくることができるので、その検証ということで実践的な訓練をするのが訓練のやり方としては一番いいと考えているところである。

◯佐藤委員  全然反省していない。今年度訓練をやらないことについては、地域の住民からの批判や不安の声がある。持ち回りではあるけれども、ずっと十数年にわたって、せっかく住民参加の原子力防災訓練を続けてきたのに、今年度はやらない。そういうことでいいのか。

◯安全環境部長  何も反省していないとおっしゃることがわからないが、福島第一原発事故が起きてから、昨年、現計画で訓練は一度やっている。今回は5キロメートル圏の計画をつくり、その検証をしたいということで、年度にこだわるのがよくわからないところであるけれども、そういう手順で行いたいと考えている。

◯佐藤委員  年度で訓練してきたのは県である。とにかく敦賀市、美浜町、おおい町、高浜町と持ち回りで訓練をするという流れをつくってきたのも県であるのだから、今年度だけやらないというのはいかがなものかと申し上げた。
 そこで、今回出された計画であるが、部長の報告にもあったように、万一の損害が大きくなる可能性がある立地地域の安全を第一に考えるということであるが、福島第一原発事故を見れば、事故の進展が早いケースもあることが明らかになっているし、放射能の影響が及ぶ範囲が急激に広がるとことも明らかになったと思う。福島県では、10キロメートル圏内避難と言っていたと思うと20キロメートル圏内に広げられたり、飯舘村が全村避難になったりしたのであるけれども、なぜ、万一の損害が大きくなるのが5キロメートル圏内だと限定して考えないといけないのかをまずお尋ねする。

◯危機対策・防災課長  まずは、5キロメートル圏内の実効性ある訓練を行い、それを徐々に広めていきたいと考えている。

◯佐藤委員  そういうことも含めて見通しを言わないと、5キロメートル圏内ということでマスコミが大きく報道すると、万一の事故の際は5キロメートル圏内だけでいいのかと思ってしまうわけである。先ほどの議論にもあったように、防災は常に備えないといけないと日ごろから言っているわけだから、20キロメートル圏内であろうと、飯舘村のように四、五十キロメートル離れていようと、万が一の場合はああいう事態もあり得ると、県としてもきちんと教育もするし、これからそれに備えた計画もつくっていくけれども、まず今回はこれでやらせてもらうという流れを説明せずに、これだけ出すから誤解を受けるのではないか。

◯危機対策監  今回、まず5キロメートル圏の計画をつくることにしたのは、5キロメートル圏内は発電所に一番近いところであるから、当然一番意識も高いし、いろいろな頻度とかそういったものも高くなってくるので、やはりここを最優先すべきだからである。また、国から出された防災指針の中で、5キロメートルの範囲での防護措置は避難だと決まっているので、それに基づいて計画をつくることができる。ただ、部長の報告でも申したが、今、佐藤委員のおっしゃるような5キロメートルの外は即避難ではなく、範囲を決めて、屋内退避や、避難所の開設、安定ヨウ素剤の服用など、複数の防護措置を含めて対応することになるので、その基準が国から示されないと実効性のある計画ができないのである。だから、我々はまず5キロメートル圏の計画をつくり、それに基づいて実効性のある訓練をすることによって、住民の方々にも安心をしていただけるだろうと考えている。また、一番不安に思っておられる近接の地域に住んでいる方々についても、そういう実践的な訓練をすることで安心をしていただきたい。その次の、外の話については、避難の範囲の特定の仕方であるとか安定ヨウ素剤の配布基準であるとか、モニタリングのやり方だとか、そういったものを国に出すように求めているけれども、それが出てくるのにあわせて、5キロメートル圏の計画をもとに範囲を広げて行っていこうと考えている。

◯佐藤委員  他県では、県境を越えた訓練を実施しているという報道がどんどん流れている。しかし、日本じゅうで唯一原発を動かしている福井県がなぜしないのだと、県民が不安に思うのは当然であろう。県としては、慎重に、実効性のあるものをと考えているのかもしれないが、県民の不安に機敏に応えていかないと、福井県は日本じゅうでただ一か所原発を動かしているわけであるから、そこでなぜ広域訓練が行われないのか、あるいは県境を超えたような発想での訓練が行われないのかと、県民は誰でもそう思う。何も5キロメートル圏の人だけでなく、福井県でもみんなが不安に思っているわけである。そういう県民ニーズに応えた計画づくりをきちんとやっていただけるのか。

◯危機対策監  まず、訓練についてであるが、先ほど石川委員から、本当に実態に即した実効性のある訓練をやらなければいけないという御指摘もあったが、そういった面では、今、5キロメートル圏についてはきちんと計画がつくれるので、それに基づいて実践的な、実態に即した訓練ができる。ただし、その外については、ほかの県のいろいろな訓練のやり方もあろうかと思うけれども、先ほど申したように、避難の範囲を特定する方法であるとか、モニタリングの方法とかも決まっていない段階で、実際に広い範囲での実践的な訓練をやることは、我々はできない。それでは、石川委員がおっしゃるように、想定で一応やろうということになりかねないので、まずは実践的な訓練を、今きちんと計画ができる5キロメートル圏でやることを考えている。

◯佐藤委員  まだ、県民の不安に全然応えていない。実践的、実効性のある訓練と言うけれども、国民は、福島第一原発事故のような過酷事故が起こったときには一体どうなるのかと心配をしているわけである。それに応えて、ではこの地域ではこうしようと考えるのが普通ではないか。確かに坂井市の人と地元の敦賀市の人では意識の違いも出てくるだろうけれども、坂井市でも福井市でも考えているわけであるから、福井県でもしあのような事故が起こったときにはこうするのだと県民にきちんとシナリオとして示していくことが必要なのではないのか。5キロメートル圏だけを強調し過ぎると逆効果だと思う。

◯危機対策監  何度も繰り返すが、まずは何を優先的に取り組むか、また何ができるかということから考えて、まずは5キロメートル圏をきちんとやっていきたい。その外については、今、国にいろいろな作戦を考えるために必要となるものを早く出すようにと言っているけれども、そういった国から出てくるものも踏まえて、5キロメートル圏の計画をきちんとやった上で広げていきたいと考えている。

◯山岸委員長  5キロメートル圏内の問題は、先ほどから答弁されていることであり、まとめていただきたい。

◯佐藤委員  原子力事故が起こったときには、県はこういう計画で対応するのだと、きちんと県民全体に示していくことが必要だと思うということである。
 最後にお尋ねするが、実動部隊である自衛隊への早い段階での進出要請などが記載されているが、オフサイトセンターのあり方懇談会では、国が自衛隊の活用を提案したときに、その場におられた自衛隊の幹部の方が、自衛隊としては確認してないと反発した場面があった。今回の県の素案が、防衛省の本省も含めてきちんと確認された計画になっているのかどうかと、あわせて、自衛隊は、原子力災害のときには国民保護の観点から別の目標で行動するが、そういう場合との整合性はどう考えているのかを伺う。

◯危機対策・防災課長  この素案については、今、自衛隊と協議をしているところである。また、国民保護の絡みであるけれども、テロで自衛隊が行動する場合には、自衛隊の中で予備隊を招集すると聞いている。

◯佐藤委員  今の答弁にあったように、国民保護となれば、自衛隊は住民救難の仕事を請け負えないわけであるから、そういうことも含めて、いろんなパターンを考えておかなければならないことを要望しておく。


福島3号機のメルトダウンの教訓

◯佐藤委員  先日、10日だったか、NHKで、福島第一原発3号機のメルトダウンはなぜ防げなかったのかということに関し、消防が注水したけれども原子炉にたまらずに復水器かどこかに流れてしまってだめだったという番組があった。その番組を見て、そのことは国会の事故調査委員会の報告などにも載っていないということだったので、事故原因がまだ十分に解明されていないということと、それから、福井県などもいざというときには消防車や電源車を配備したと言っているけれども、今回の事故と同じようなことが起これば、また同じことになるなと痛感した。県が大飯原発再稼働に際して認めた消防ポンプなどのとりあえずの配置だけではまだまだ不十分だという印象を受けたが、どうであろうか。

◯原子力安全対策課長  NHKの番組は、津波で電源がなくなるという非常に厳しい状態の中で、消防車を使った給水により原子炉の冷却をしなければいけないということで、事故を収束させるための作業として、図面でラインを決めて水を入れてはみたけれども、残念ながら細い配管から復水器側へ水が逃げていって、原子炉には直接入っていなかったのではないかという指摘であった。事故を収束する過程で行った方策がうまくいっていない、そういう部分での問題点かと思う。
 そこで、昨日、事業者に、消防ポンプを使って直接原子炉または蒸気発生器に注水するラインが形成されているか、ほかに逃げ道がないか確認をした結果、それぞれ消防のラインは直接原子炉へ行くラインがあり、分岐していても逆止弁により水が流れない状態になっていることを確認している。
 一方で、今度の新しい安全基準でのシビアアクシデント対策として、どういうものが必要かが骨子案として議論されているが、福島第二原発や女川原発においても、電気があって既にある設備が使える状態であれば、原子炉の冷却は確実にできているのも事実である。今回の安全対策は、電気がなくなるような状態にあっても外側に電源車を置いてそれを使えるようにする、もしくは既設のポンプが被水して動かない状態でも水を入れられるようにするといった外づけ的なものとして可搬できる設備を追加している。本来既にある設備を電気を使って十分動かすことで原子炉の冷却は可能であることはほかの発電所で実証されているので、そういう部分では、今の対策で一応の十分な安全は確認されているが、今後、新しい安全基準で必要となる設備はまだ明確になっていないので、どこまで必要になるのかはこれからの議論かと思う。

◯佐藤委員  そうすると、例えば、福島第一原発と同じタイプの敦賀1号機を考えてみると、福島では抜けがあったけれども、敦賀1号機では抜けがないことを確認したということであるか。

◯原子力安全対策課長  消防のラインについては、分岐していく先はあるけれども、そこに流れが一方的になる逆止弁が確実についていて、水はその先に逃げていくことはなく、原子炉側に直接行く。今回のNHKの番組では、入れた水が、あるポンプを冷やす細い管でバルブを介さずに復水器側に逃げていったのではないかという報道であったと理解している。

なぜ福井県は原発輸出の応援をするのか

◯佐藤委員  関連でエネルギー研究開発拠点化計画について伺うが、原子力の安全を支える人材育成について、今月26日、27日にアジア原子力人材育成会議を開くが、これと先般の第13回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネーター会合はどういう関係であるか。

◯電源地域振興課長  昨年行ったFNCA会合は国の事業でアジア人材育成会議と合同で行った。今回は、県が主催するこの会議を単独で今月26日に行うものである。

◯佐藤委員  県単独で開くということであるが、どういうプログラムであるか。

◯電源地域振興課長  2日間にわたり、敦賀の日本原子力発電の研修センターを会場に、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、カザフスタンの5カ国から担当省庁の高官の方などをお呼びする。IAEAから原子力安全局の課長クラスの方、日本国内からは原子力規制庁や資源エネルギー庁からも来ていただく。そこで、まず、原子力の安全についてさまざまな講義を行い、各国の安全に対する人材育成の取り組みについていろいろと話をしながら、どういったものが一番いいのかも議論していただいく会議である。

◯佐藤委員  そういう会議を、国ではなく、なぜ福井県が主催する必要があるのか。

◯電源地域振興課長  本県は、原子力の安全を支える人材育成を大変重要な課題と考えている。特に本県は、原子炉の技術や安全対策について、日本においても、アジアの国々に対しても、きちんと協力しながら人材育成を行って貢献していくことが必要と考えている。

◯佐藤委員  よくわからない。先ほどの議論の中で、原子力のいろいろな安全の問題は一元的には国の責任であり、県独自でいろいろな原子力の安全の問題を調査をしたりすることはないと言われた。では、なぜその人材育成に県が乗り出すのか。

◯電源地域振興課長  先ほどから申し上げているように、特に福井県の場合は、さまざまな原子力発電所を抱える中で、いろいろな技術を持っているので、そういったものを、しっかりとアジアの導入国等に対して指導していくことが、本県にとっても、また国にとっても必要と考えて行うものである。

◯佐藤委員  全くおかしな話である。アジアへのこれからの原発の輸出に私は反対しているけれども、アジアの導入国に対して福井県が安全の問題を指導すると言うが、その立場というのは、先ほどの福井県内の原発の安全問題に対する県のスタンスと180度違う。そうであろう。

◯電源地域振興課長  何回も申し上げているように、原子力に対する人材育成に協力、貢献することを目的に、本県として行うべきと考えて、アジア原子力人材育成会議を開催するものである。

◯佐藤委員  アジアの心配をするより福井県の心配をしていただきたい。そうであろう。福井県の県民が、福井県の原発は大丈夫かと言っているのに、県は、県民に対しては何ら説明会も開催せずにいて、何でアジアの心配するのか。おかしいであろう。

◯総合政策部長  今、各種の人材育成をやっているが、この事業は県で行っているけれども、国庫から費用をいただいて若狭湾エネルギー研究センターが行っている事業も幾つかある。アジア原子力人材育成会議については、本県が国際貢献の一環として行うものであり、安全に対する国への要求とか、県内で安全をしっかり確保していこうということとは別の視点から行っているものである。

◯佐藤委員  国際貢献は、もちろん一般論として、県としての大事な課題だと思う。けれども、なぜ原子力の安全の問題で福井県がそういう役割を担わなければならいのか。福井県民に対して県内の原子力の安全性の説明会も開いてない県が、なぜわざわざベトナムやインドネシアの人のために安全問題を講義しなければいけないのか。順番が違うであろう。まず福井県民に対してきちんと説明をするとか、あるいは福井県内の原発の安全性がどうなのか県の原子力安全専門委員会で調査に乗り出すとか、そのほうが先であろう。順番が違うのではないか。

◯総合政策部長  二つを同時に一つのラインで考えるのではなくて、国際貢献は国際貢献として、それから国内の安全対策については国内の安全対策として、それぞれ充実していく必要があると考える。

◯佐藤委員  それぞれ充実していない。何回も言っているけれども、2年前の事故が起こってから、福井県としては、正式に県民に対して、福島第一原発事故についてどうなのか、福井県内の原子力発電所の対策についてはどうなのかといったオープンな説明会は一度も開催してない。それから、一般質問でも言ったけれども、今回の原子力規制委員会ができていろいろな指針がつくられる過程において、県の原子力安全専門委員会では、平たく言えばそれをチェックするというか検証する会議が一つも開かれていないではないか。おかしいではないか。

◯安全環境部長  今ほどお尋ねの住民への説明や再稼働等に対しては、何回もお答えしているけれども、我々としては住民の代表である県議会の御議論を踏まえてやっていきたいと思っている。

◯佐藤委員  福井県は、平成7年1月の阪神・淡路大震災の後だけれども、11月に、素早くと言っていいかどうかは別として、原子力施設耐震安全性にかかる県民説明会を開いている。このとき、何と言って開いているかと見たら、「福井県は15基の原子力発電所がある。まことに重要で県民の強い関心事項になっている。県民に十分理解をしていただく必要があると考え、今回原子力発電所の耐震安全性について説明会を開く。」ということで、当時副知事であった西川知事があいさつされているわけである。やはり阪神・淡路大震災のときもそうしたにもかかわらず、ましてや、今回、原発がそれを上回る被害を公衆に与える事故を起こしておきながら、福井県民の心配にも答えずに、一方では、アジアの心配をしてはいけないというわけではないけれども、ベトナムやインドネシアの安全の問題に乗り出すというのは、福井県庁は仕事が全くあべこべである。

◯原子力安全対策課長  委員御指摘の平成7年の県民説明会であるが、その当時、以前から敦賀3、4号機の増設の問題などいろいろあって、原子力に対して今後どうするのだという県民の関心が全体的に高い中で阪神・淡路大震災が起きたことを踏まえて、耐震安全性の説明会を開催させていただいた。
 今回の福島第一原発事故後は、立地市町や隣接市町で、例えばその当時いた原子力安全・保安院の地域統括管理官が各議会に行って説明をされるとか、もしくは事業者が説明をされるという形で、それぞれ説明をされてきた。我々としては県原子力安全専門委員会において公開で議論をする、それから、県原子力環境安全管理協議会という各種団体の方の集まった会議体で説明をする、さらには、知事みずからがいろいろと記者会見をするという形で県民への説明に努めてきたところである。

◯佐藤委員  そういう答弁を聞くたび、むなしくなる。課長はまじめに仕事をしている人だと思うけれども、平成7年だと課長も入職していただろうし、多分そういう現場を見ていると思うけれども、そのときは、県民の声を募って県民からの質問も受け付けて、県は丁寧に努力していたわけである。最近、そういう努力が足りないと自分でも思わないか。

◯原子力安全対策課長  その当時、もう一つ県民のシンポジウムも開催した。それは、やはり先ほど申したように、敦賀3、4号機の増設や15基体制の維持とかいろいろな課題があり、原子力に対して県民としてどうするかという大きな議論があった中で、そういうシンポジウムや説明会を開催したという経緯であったと思う。県としては、原子力の問題には県民のいろいろな意見があることから、さまざまな機会を捉えて議論をさせていただき、なるべくわかりやすく、問題の本質というか、問題点をしっかりと説明していきたいと考えている。

◯佐藤委員  福井県原子力安全専門委員会であるが、大飯原発の再稼働までは開いていたけれども、それ以降は開いていない。国がいろいろな基準をどんどんつくりつつあるが、これだけ福井県の原子力行政に大きな影響を与える議論が原子力規制委員会等の会議で展開されているときに、福井県原子力安全専門委員会を開かないのは何か理由があるのか。

◯原子力安全対策課長  原子力規制委員会での審査の指針の議論は全てインターネットで公開されている。原子力規制委員会では、委員が何人かおられて意見を述べられ、それから原子力規制庁側が案を示す形で、いろいろな議論をしている。今のところ骨子の状態で具体性がまだ少し見えない。どこまで求めるのか、それはいつまでの段階か、先々の話がまだはっきりしてない。
 県が規制そのものを議論していくよりも、県としては、その規制が決まったことによって発電所にどういう形で安全対策が反映されていくか、事業者の対応も含めて、安全の確認をしていくべきと思っている。現状では、規制そのものは国の委員会としてやるべきことを議論している段階だから、福井県原子力安全専門委員会の委員の方々には情報提供という形でいろいろ情報はお送りしているが、福井県原子力安全専門委員会の場で議論することは今の時点では考えてない。

◯佐藤委員  おかしな話だと思う。なぜかというと、大飯原発3、4号機の再稼働のときには、福井県原子力安全専門委員会の専門の先生方が、それぞれの事業者を呼んだり、当時の国の原子力安全・保安院の担当者を呼んだりして、緻密に何回も議論をして、暫定的基準みたいなものをつくり上げて、それで政府とすり合わせして、当時、野田総理大臣が再稼働に踏み切るといういきさつがあったわけである。それがそのまま適用されるなら黙っていればいいのであろうが、やはりそのときの基準が一体どの程度どのように変更されていくかとか、あるいは不十分な点があって改善されるかとか、当然、ハード、ソフトの両面でいろいろなことが出てきていると思う。しかし、今回の過程では、ある意味では大飯原発3、4号機の再稼働に専門家として責任持たれた県の原子力安全専門委員会の先生方は、ノータッチである。国の議論に対して、いや、そのときの判断はこういう判断であると言わないとか、あるいはもっとこうしたほうがよかったのではないかという議論もできないというのは、どうなのか。やはり、県民としても、大飯原発3、4号機だけが日本じゅうで再稼働しているわけであるから、それを、ある意味では、ハード、ソフトの両面で検討して決めた専門家の先生方が、今、国の新しい指針や基準がつくられようとしているときに、何も意見が出せない、言わないということに違和感があると思う。

◯原子力安全対策課長  昨年、大飯原発3、4号機の再稼働を判断したときは、いわゆるストレステストをベースにした一つの判断基準があり、それを上回る30項目の安全対策が示され、国が示した安全基準を基本にしてどこまででき上がっているかを、我々は、丁寧に現場も含めて議論させていただいた。現在、議論しているのは、まだ指針の骨子であるので、これを発電所の設備に対してどこまで具体的に、どの時期までに求めるのかがまだ見えていない。福井県原子力安全専門委員会の中には、30項目を含めた昨年の安全基準の考え方を一つのベースにものを捉えるべきだと発言しておられる先生もおられる。そういう意味では一つのベースにはなるけれども、新しいものがそれに対してどうかというところはまだ見えないので、7月以降になるが、具体的なものが出てきて、事業者がそれにどう対応するのか、ここが一つの大きな議論となるであろうし、確認すべきポイントかと思っている。

◯佐藤委員  けれども、逆に言うと、そういう基準ができたときに、福井県原子力安全専門委員会の判断はどうだったのかが問われることになってくる。その点、検証も含めて、あるいは課長が先ほど言われたように、県民の前できちんとオープンで議論をする機会をつくっていただくことが必要であると思うが、いかがであろうか。

◯原子力安全対策課長  どの時点で福井県原子力安全専門委員会が開けるかは今の時点で約束はできない。先ほどから申し上げているように、事業者として、特定の発電所かどうかわからないが、どういう形で対応していくかが決まってくれば、昨年の30項目の安全対策の実効性も含めての議論になるかと思う。そういう場面では、我々として福井県原子力安全専門委員会の先生方の御意見を聞く必要があるのではないかと思っている。

◯佐藤委員  それはそれでお願いしておきたいと思う。
 それから、先日の新聞報道で、日本原子力研究開発機構でパソコンが盗まれたという報道があった。しかも、原子力発電所の重要なデータが入っているパソコンだということであった。少々驚いたのだが、原子力発電所の敷地内はもちろん厳重なセキュリティーであろうし、原子力発電所のそういう重要な機密が置いてある事務所も、当然、厳重なセキュリティーだと思っていたのだが、違ったのか。

◯原子力安全対策課長  日本原子力研究開発機構の本部の事務所に、安全研究的な業務をされる部署があって、そこで使用していたパソコンが2台なくなっているというのが事実である。ただ、セキュリティーの管理もしていたが警報が鳴っていないとか、ガラスの破損等もないということで、どこかの場所に持って行っているというような可能性も含めて今調査をしているところである。

◯佐藤委員  どこかの場所へ行ってしまいよくわからないというのは、内部でどこかへ移動していてどこかから出てくるかもしれないという意味か、それとも内部の人がどこかへ持ち出したのではないかという意味か、どちらなのか。

◯原子力安全対策課長  そのどちらかというか、外部から侵入したのかはよくわからないが、土日も仕事をしていたようで、そのケースもあるかもしないし、中の方がどこかへ持ち運んだということもあるかもしれない。それは断定的ではなくて、今、日本原子力研究開発機構内で調査をしているところである。そういうことで、なくなったという事実として、警察等も含めて報告されているようである。



県職員の給与削減の強行は許されない。会場いっぱいの憲法学習会。市民体育大会開会式。

2013年06月16日 | Weblog
  昨日は、自治体関係者との会合、憲法問題の学習会、打ち合わせ、市民体育大会開会式などでした。
自治体関係者との会合では給与削減についての不満や不安がだされました。
 福井県は開会日に提案するとの方針のようですが、大規模な給与削減が十分な周知と納得が得られないままに強行されることになればそもそもの公務員労働者にたいする重大な権利侵害となります。
 全国的規模で、このような不法行為がおこなわれることは大問題です。

 憲法改悪反対共同センターがよびかけた学習会には会場いっぱいの人が集まり、吉川弁護士の講演や、河合良信さんのピースアート展などの取り組み、元教員の南部みやこさんの50回以上続く憲法読書会の経験、9条の会の屋敷事務局長の報告、山本富士夫福井大学名誉教授のお父さんの戦争遺品の現物を示しながらの生々しいお話しに聞き入りました。
 私も県政での憲法問題などについて発言しました。

 市民体育大会開会式では、水泳の部で近所の方が5年連続優勝の栄誉で表彰されました。式典が終わり、お祝いの握手をしました。
 約1万人が参加するという大会、ぜひみなさんがんばっていただきたいと思います。
 暑さ対策には十分気をつけていただきたいと思います。


           ★

 先日も書きましたが、安倍総理が国民総所得について「国民の平均年収を150万円増やす」などと国民を欺く演説を繰り返しています。
 あらためて、赤旗でも明快な批判記事が載りましたので紹介します。
 選挙戦のなかで、ウソをつくことなどいっそう許されません。
それとも「TPP絶対反対」などと言いながら、総選挙後に交渉参加にすすんだ安倍総理にとっては、平気なのでしょうか?

■赤旗・・・安倍首相 ごまかし論議    「国民の年収150万円増やす」

     「国民総所得」 →すりかえ→ 「国民平均年収」

  安倍晋三首相は、「成長戦略第3弾」で、「10年間で1人当たり国民総所得(GNI)を150万円増やす」という「目標」を打ち出しましたが、各地の演説では、「国民の平均年収を150万円増やす」などと言っています。「国民総所得」と「国民の平均年収」は全く違うものですが、安倍首相は経済学を知らないので間違えたのでしょうか。知っていながら、言葉をすりかえたのなら、意図的に国民をだまそうとするものです。菅義偉(よしひで)官房長官は「首相は分かりやすく説明しようとしたんだろう」などと言っていますが、こんな言い訳は通りません。

  GNIとは、国内総生産(GDP)に「海外からの利子・配当の純額(受取マイナス支払)など」を加えたものです。これは、昔はよく使われていた「国民総生産(GNP)」と同じものです。それを、わざわざ国民にとって耳慣れない「国民総所得」という言葉に言い換えているのは、その方が「所得が増える」というイメージがするからでしょう。これ自体、言葉の言い換えで国民をごまかそうという意図が見え見えです。

 しかも、安倍首相はGNIを「国民の平均年収」とか「みなさんの所得」とか呼んでいます。これは、単なる「言い換え」ではなく、違う意味に「すり替え」るものです。

 「国民総所得=国民総生産」には、賃金などの家計の所得だけでなく、企業の利益や株主への配当、海外からの利子・配当なども含まれています。GNIが増えたからといって、賃金などの国民の年収がそれと同額で増えるわけではありません。

 実際、小泉純一郎内閣から前回の安倍内閣、福田康夫内閣の時代の2002年度から07年度の5年間に、1人当たりGNIは約18万円増えましたが、1人当たり雇用者報酬(賃金プラス社会保険料の事業主負担)は2・8万円減りました。増えたのは、海外からの利子・配当(7・7万円)、主に企業の利益である「営業余剰・混合所得」(7・4万円)でした。しかも「雇用者報酬」には、会社役員の報酬もふくまれており、雇用者数の増加による影響も含まれています。それを除いた従業員1人当たりで見た給与年収(厚生労働省「毎月勤労統計」)は、この5年間に16万円も減ってしまいました。

所得奪う政策

 本当にGNIを1人当たり150万円も増やそうとすれば、賃金も増える必要があります。たとえば、1980年代の10年間には、1人当たりGNIが155万円増えました。この時期には1人当たり雇用者報酬が75万円増えています。民間給与所得者の平均給与年収は、80年代の10年間で130万円増えました。

 逆に言えば、企業の利益が増えるだけでなく、賃金も増えたからこそ、内需が活発化して経済成長が継続し、GNIが155万円も増えたのです。そもそも、GNIの半分は雇用者報酬なのですから、雇用者報酬が増えなければGNIも大きくは増えません。02~07年度には、企業の利益は増えても賃金は減ってしまったため、成長は長続きせず、結局、1人当たりGNIも18万円しか増えなかったのです。

 「1人当たりGNI150万円増」を本気で実現するつもりなら、賃金をはじめとする家計の所得が増えるような政策が不可欠です。しかし、アベノミクスには賃金や家計所得を増やす策は何もありません。それどころか、雇用規制のいっそうの緩和など賃金を減らす政策、消費税増税など家計の購買力を奪う政策ばかりです。これでは、「GNI150万円増」という「目標」自体が「絵に描いた餅」となることは確実です。

破綻つくろう

 安倍首相は、なぜ、こんなごまかしの議論を持ち出したのでしょうか。それは、アベノミクスの破綻をつくろうためにほかなりません。

 アベノミクスは「物価上昇率2%目標」を掲げましたが、賃金が増えずに物価だけが上がれば、暮らしはますます苦しくなります。「景気がよくなれば、そのうち賃金も上がる」と言ってきましたが、頼みの株価も乱高下し、制御不能に陥る始末です。「投機とバブルで景気回復をねらう」というアベノミクスは、暴走を始めた途端に破綻し始めました。

 安倍首相は、「これでは選挙を乗り切れない」ということで、新たなごまかしの議論を持ち出したのです。

 NHKの世論調査(10日)では、「1人当たりの国民総所得を10年後に150万円増やすことを目標とする経済の成長戦略が、経済の再生につながると思うか」という質問に対して、「つながると思う」はわずか13%にすぎず、「つながると思わない」が33%となっています。

 小手先のごまかしでは、アベノミクスの破綻はつくろえません。(垣内亮 日本共産党政策委員会)