山がつの庭のそで垣つたひきて軒ばにかかる夕顔の花(自葉和歌集)
暮れそめて草の葉なびく風のまに垣根すずしき夕がほの花(拾遺愚草)
木の間もる垣ねにうすき三日月の影あらはるる夕がほの花(夫木抄)
あけたてば照る日にしをれ夜はまた露にひもとく夕がほの花(持為集)
竹かこふ賤(しづ)が垣ねの露のまにひとよをちぎる夕顔の花(道家百首)
山がつの契りのほどやしのぶらむよるをのみ待つ夕顔の花(寂蓮集)
八重むぐら花もひとへの夕顔を誰(た)が軒ばぞと問ふ人もなし(続亜槐和歌集)
里は荒れぬたれいにしへに住む人の形見はかなき花のゆふがほ(隣女集)