草枕旅ゆく人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩かも(万葉集)
秋ふかく旅ゆく人のたむけには紅葉(もみぢ)にまさる幣(ぬさ)なかりけり(後撰和歌集)
すがるなく秋の萩原朝たちて旅ゆく人をいつとか待たむ(古今和歌集)
あづまぢの野路(のぢ)の草葉の露をしげみ行くもとまるも袖ぞしをるる(新勅撰和歌集)
夕されば身にしむ野べの秋風にひとりや草のまくらむすばむ(続後拾遺和歌集)
さもこそは都恋しき旅ならめ鹿の音(ね)にさへ濡るる袖かな(金葉和歌集)
草枕かりがねの音(ね)に夢さめてつゆけさまさる旅衣(たびごろも)かな(為忠家初度百首)
月にゆく佐野のわたりの秋の夜は宿ありとてもとまりやはせむ(新後撰和歌集)
月を見てとまりはせじと漕ぎゆけばしらぬ波路に夜ぞ明けにける(新後拾遺和歌集)