春日山松の嵐にこゑそへて鹿もちとせの秋と告ぐなり(文治六年女御入内御屏風和歌)
菊に染めもみぢにつけて山姫のふたつの色を誰ゆるすらむ(夫木抄)
かりがねの声きこゆなり秋霧のたなびく山はもみぢしぬらし(万代集)
秋霧の山べも見えず立ちぬればもみぢのにしき甲斐(かひ)やなからむ(丹後守公基朝臣歌合)
露時雨もる山かげの下紅葉(したもみぢ)濡るとも折らむ秋のかたみに(新古今和歌集)
秋萩のうつろふ惜(を)しと鳴く鹿の声きく山は紅葉しにけり(新勅撰和歌集)
小倉山もみぢ吹きおろす木枯らしにまたさそはるるさをしかの声(新拾遺和歌集)
さびしさは深山(みやま)の秋の朝ぐもり霧にしをるる槙(まき)のした露(新古今和歌集)
下紅葉(したもみぢ)かつちる山の夕時雨ぬれてやひとり鹿のなくらむ(新古今和歌集)
山颪(やまおろし)に鹿の音(ね)たかくきこゆなり尾のへの月にさ夜やふけぬる(新古今和歌集)