日本国語大辞典・第二版には「月のやどり」という語は立項されていませんが、「月の宿」よりも古例があるので、こちらをむしろ立項した方がよいのではないでしょうか。
語釈としては、「月の光が一時的にとどまること。月の光のとどまるところ。」という意味だと思います。
なにはえや-いりえのあしは-しもかれて-つきのやとりそ-くもらさりける
(俊成五社百首~日文研HPより)
露ならで月(つき)の宿(やど)りは誰か知るもの思ふ袖の涙なりけり
(巻第十五・雑歌二、3006)
『万代和歌集・下(和歌文学大系14)』安田徳子、明治書院、2000年、145ページ
秋はたたいく夜の露も袖におち月のやとりをいかにうつさて
(仙洞五十番歌合~日文研HPより)
苔ごろもつゆけき袖のとるかたは月のやどりとなるにぞ有りける
(39・延文百首、空静、秋二十首、月、2348)
『新編国歌大観 4』1986年、角川書店、579ページ
秋はたゝ袖こそつきのやとりなれ草木の露は風しほるなり
(42・後崇光院1・沙玉集、235)
『私家集大成 5巻(中世3)』和歌史研究会編、明治書院、1983年、466ページ
行舟を木の間の山路海晴て
月のやとりをとふ人もなし
山の端をなかむるかたの限にて
(巻第四百八十九・壁草、第八・雑連歌上)
『続群書類従・十七輯下(訂正三版)』1958年、996ページ
露ならで月のやどりもなかりけり蓮にうづむ庭の池水
(海人の刈藻)
水にすむ影は手にだにとられねど月のやどりは疑もなし
『礼厳法師歌集』与謝野礼厳(尚絅)著、与謝野寛校、明治書院、1910年、13ページ
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