大空のひびきは、あゆみをはこんで二月のよそほひをつくる。やはらかな白天鵞絨(しろびろうど)のやうな手のなかにつめたく咲いてはこぼれてゆくさびしい花びら。二月よ、二月よ、おまへのつつまれたあわゆきいろの肌は、限りない秘密の瘴気(しゃうき)を吹いて胸をときめかす。ああ、二月は面(おもて)をふせた恋のうしろすがたである。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、446p)より「季節題詞」)
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