夏の亡霊のうへに浮く悔恨の火の手は琥珀色の波をゑがいてうづまき、渡り鳥の喉に空しい魂の贈物をとどける。うすいろの翡翠の横笛を吹く美童の面形はくろずんで焚香の長夜のゆめに溶け入り、黄金(こがね)の皿にうづくまる漿果(このみ)のひかりは女人の裸形のごとくなまめかしく息づいて吠えさけぶ。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、447p)より「季節題詞」)
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