monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

私の子どもたちへ

2021年03月11日 | 音楽

私の子どもたちへ 笠木透

生きている鳥たちが
生きて飛びまわる空を
あなたに残しておいて
やれるだろうか 父さんは
目をとじてごらんなさい
山が見えるでしょう
近づいてごらんなさい
辛夷(こぶし)の花があるでしょう

生きている魚たちが
生きて泳ぎまわる川を
あなたに残しておいて
やれるだろうか 父さんは
目をとじてごらんなさい
野原が見えるでしょう
近づいてごらんなさい
竜胆(りんどう)の花があるでしょう

生きている私たちが
生きて走りまわる土を
あなたに残しておいて
やれるだろうか 父さんは
目をとじてごらんなさい
山が見えるでしょう
近づいてごらんなさい
辛夷(こぶし)の花があるでしょう


古典の季節表現 春 三月 御燈

2021年03月03日 | 日本古典文学-春

三月一日、ごとうの御神事に、きやうぶくにて仁壽殿のつまの局にわたりゐたりしに、左衞門の陣むきなれば、東三條の木ずゑも、ちかくみえわたされて、いとおもしろし。けふは陣に公事ありて、經光の宰相・頭中將・頭辨もまゐり、たきぐちどもしたがひてみゆるもをかし。宗雅・光國なども參る。花もさかりにいとおもしろきに、をりしも大宮大納言參り給ふ。なほしすがた常よりも心ことに、にほひ深くみえたまひしかば、辨内侍〔あをかりぎぬきたる人ぞ御ともにはありし。〕、 
花の色にくらべて今ぞ思ひしる櫻に増る匂ひ有りとは
(弁内侍日記~群書類從18)

(長和二年三月)一日、壬辰。
早朝、鴨川に出て、御燈を奉らない由の解除(げじょ)を行なった。女方(源倫子)も、同じく解除を行なった。(略)
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

(寛仁元年二月)三十日、己亥。
内裏から、夜に入って退出した。女房も同行した。蔵人(平)範国が来て、申して云ったことには、「御燈の御卜(みうら)は、例年は明日、宮主(みやじ)が御厨子所に参って奉仕します。ところが明日は、子の日に当たります。そこで今日、宮主を召させましたところ、『伊勢国に下向している』ということです。如何いたしましょうか」と。私が仰せて云ったことには、「他の官人を召して奉仕させよ。もし今夜、召しても出てこなかったならば、二日に奉仕させよ」と。
(寛仁元年三月)一日、庚子。
鴨川に出て、解除(げじょ)を行なった。御燈を奉らない由の解除であった。
二日、辛丑。
時々、雨が降った。(略)(平)範国が、御燈の御卜(みうら)の占文(うらぶみ)を持って来た。申して云ったことには、「昨日、中宮の宮主(みやじ)が、御卜の占文を持って来ました。神祇祐(卜部)兼忠の語ったことによって、二月末に神祇官において奉仕しました」ということだ。私が命じていたことには、「御厨子所によいて卜占させよ」と。ところが、すでに神祇官において卜し申してしまった。「再び卜占を行なうというのは、具合が悪いことです。この卜占によるべきでしょう」ということだ。(略)
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)


古典の季節表現 春 闘鶏・鳥合

2021年03月03日 | 日本古典文学-春

さくはなも-なくうくひすも-はるはなほ-とりあはせたる-ころにもあるかな
はるさめの-なこりのにはに-ぬるとてや-あはするとりの-みのけたつらむ
(為忠家後度百首~日文研HPより)

「三日の御鳥あはせに、ことしは女房のもあはせらるべし。」ときゝしかば、わかき女房たち、心つくしてよきとりども尋ねられしに、宮内卿のすけどのは、「爲教の中將がはりまといふ鳥をいださん。」などぞありし。萬里小路大納言のまゐらせられたるあかとりの、いしとさかあるがけいろもうつくしきをたまはりて、あきつぼねにほこらかしておきたるを、もりありといふ六位が、「そのとりきとまゐらせよ。」といふ。かまへてとりなどにあはせらるまじきよし、よく\/いひてまゐらせつ。とばかりありて、かためはつぶれ、とさかよりちたり、をぬけなどして、見わするほどになりてかへりたり。おほかた思ふばかりなし。「今はゆゝしき鳥ありとも、なにゝかはせん。たまはりの鳥なれば、きくもいみしらむとこそ思ひしに。」など、かへす\〃/こゝろうくて、辨内侍、 
われぞ先ねにたつばかりおぼえけるゆふ付け鳥のなれる姿に 
三日、御鳥合なり。御所もひろ御所へいでさせおはします。冷泉大納言・萬里の小路大納言・左衞門督・三條中納言〔公親〕・頭中將〔公保〕・伊與中將〔公忠〕・すけやすの中將、藏人はのこりなし。はつゆきなるあか〔みイ〕こくろなどいふ鳥ども、かねてよりふせごにつきて、おの\/あづかりて、丁子・じやかうすりつけ、たきものなどして、「いづれかにほひうつくしき。」とぞあらそひし。みすのうちより出だされしかば、萬里小路の大納言たまはりて、あはせられし。ゆゝしかりし君なり。ひよ\/より御所に御手ならさせおはしまして、かひたてられしいみじさばかりにてこそ侍れ。御とりがらはあやしげなれば、「かたせん。」とて、それよりおとりたる鳥どもにあはせられしもをかし。公忠・公保がとりあはせしをり、「伊與中將がとり、そらおとりする。」とて人々わらひしに、冷泉大納言、「ひさかたのそらおとりこそをかしけれ。」とのたまへば、公忠「さこそ。」といひたりし、をかしくて、辨内侍、 
雲ゐとはなれさへしるや久かたの空おとりする鳥にも有る哉 
(弁内侍日記~群書類從18)

廿八日、庚子、早旦参内、於殿上小庭御覧闘鶏、数剋無勝負、各可謂翹楚之歟、今夕宿仕、
(中右記・嘉保1年1月28日条~東京大学史料編纂所データベース・古記録フルテキストデータベースより)

十三日、甲申、終日候御前、依当番供朝夕膳、終日有闘鶏興、困幡守長実(藤原)所献黒鳥已負了、頗雖異物無雄飛興歟 、(略)
(中右記・嘉保1年3月13日条~東京大学史料編纂所データベース・古記録フルテキストデータベースより)

保延元年三月三日丙子、女院有鬪鷄事、左方限合之、{摸臨時祭方}右頭經宗、依病不參之故也、 ○按ズルニ、三月三日鬭鷄ノ事ハ、遊戲部物合篇ニ詳ナリ、
(長秋記~国文学研究資料館HPの古事類苑データベースより)

(保元三年)二月十三日。於弘徽殿壺有闘鶏事。月卿雲客為左右念人。有勝負舞。
(百錬抄~新訂増補 国史大系11)

(宝治元年三月)三日 丙辰 営中ニ、闘鶏ノ会有ルナリ。此ノ間、若狭ノ前司等、聊カ喧嘩ス。 
(吾妻鏡【宝治元年三月三日】条~国文学研究資料館HPより)


はこどり(箱鳥)

2021年03月01日 | 日本古典文学-禽獣魚虫

 箱鳥(はこどり)
み山木によるはきて鳴はこどりのあけばかはらんことをこそおもへ
はるたてば野べにまづなくはこどりのめにもみえずてこゑのかなしき
とりかへす物にもがもやはこどりのあけてくやしき物をこそおもへ
(古今和歌六帖、第六帖~「和歌文学大系 古今和歌六帖・下」2020年、明治書院、314p)

桜花散りしは昨日青柳のはやまに今日ははこ鳥ぞなく
(寛弘年間_花山法皇歌合_雑載・5~「平安朝歌合大成 増補新訂 第二巻」同朋舎出版、1995年、744p)

はことりの-あけてののちは-なけくとも-ねくらなからの-こゑをきかはや 
(実方集(実方朝臣集)異同歌・00318 ~日文研HPより)

 同じ内侍、鳥の子を鏡の箱の蓋に入れて、はこどりとなむいふと聞(きこ)えたるが死(し)にければ、返しつかはすとて
はこどりの身をいたづらになしはててあかず悲しき物をこそ思へ
 御返し
雲の上(うへ)に思ひのぼれるはこどりの命(いのち)ばかりぞ短(みぢか)かりける
(斎宮女御集・178+179~「和歌文学大系52 三十六歌仙集二」明治書院、H24、120p)

太山木にねぐらさだむるはこどりもいかでかはなの色にあくべき
(源氏物語・若菜上~国文学研究資料館HPより)

ふたむらの-やまのはしらむ-しののめに-あけぬとつくる-はことりのこゑ 
(正治初度百首、太皇太后宮小侍従・02094~日文研HPより)

02611 家良 はるされは-ともまとはせる-はことりの-ふたかみやまに-あさなあさななく
02612 為家 よるはきて-あくるかなしき-はことりは-いつうらしまに-かよひそめけむ
02613 知家 よるはきて-あくれはかへる-はことりの-つらきならひに-ねをやなくらむ
02614 信実 なにことを-おもひいれてか-はことりの-あくるあさけの-ねをはなくらむ
02615 光俊 あけわたる-みむろのやまの-はことりは-ふたふたとこそ-とひあかるなれ
(新撰和歌六帖、第六:鳥~日文研HPより)