「なぜ金融危機は起きたのか」「誰が起こしたのか」という問いに、
構造や人物名を断言していく。衝撃と言うか、いちいち「真実だ」という
証拠を見せていくから、力がすごい。かなり上映する映画館が少ないが、
絶対に見た方がいい。粗方、金融危機の知識があるという人も、
中心にいた金融マンや学者がどんな口調で、どんな言葉遣いでexcuseするのか、
周りにいた弁護士や政治家、消費者団体、精神科医や娼婦の表情はどうか
と見るのは物事をよりリアルに見るのに役立つ。
※映画でインタビューした人紹介
http://www.sonyclassics.com/insidejob/site/#/cast
取材に応じなかった人たちの紹介
http://www.sonyclassics.com/insidejob/site/#/declined
「これは戦争並みの犯罪かもしれない」というのが、最初の感想。
「全然知らなかった!」という事実が出てくるわけではないが、数百万軒の家が差し押さえられ、
3000万人が失業したこと、それにより利益を得た人たちが
糾弾されていないこと。まんまと製作者の意図に乗る形で、怒りが沸いてくる。
なぜかといえば、2008年の金融危機が、「アメリカ金融界による意図的なバブル」と説得させられてしまうからだ。
被害者とも映り得る彼らが、なぜ意図的だったと言えるか。特に、ゴールドマン・サックスが
代表として名が挙がるのだと思うが、その証左として
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の大量保有がある。
CDSは、住宅ローンの債権を証券化したCDO(債務担保証券)に対してかける保険だ。(たぶん)。
もしCDO(債権)が回収できない場合に備え、AIGなどの保険会社に手数料を
払っておくことで、ちゃんと債権が回収できるようにしておく。
ゴールドマンサックスは、顧客に(回収できないかもしれない)CDOを売っておきながら、
自社の運用としては大量にCDSでリスクヘッジをしておき、
金融危機が起きてもCDSによって損失を小さく抑えた。
(AIGが破綻していればそのまま損失になっていただろうが、
AIGは政府により救済された。さてなんででしょう)
日本の不動産バブルでは(といっても知識は乏しいが)、
土地神話を皆が信じ込んだことにより、インフレではなく土地の価格のみが上がっていった。
この土地価格の上昇は、企業や個人や資産家といった無数のプレーヤーがいて、
醸造されてしまったものだ、と思う。(要勉強)
それを急激に止めようと政策金利を一気に引き上げたために崩壊した。
一方で、アメリカの金融危機は、住宅ローンの証券化、そのリスクヘッジのための
CDS、という新商品の開発がある。「金融危機を起こそう」というものでは
ないだろうけど、「頭金がない人にもローンを組ませ、リスク分散化して見えない
ようにし、手数料で儲けてやろう」という意図はあったのではないか。
そうとしか考えられないほど、この商品が危機につながることは予見できたように
思えてならないからだ。
だからこそ、その商品開発に関わったいくつかの金融会社、それを見過ごしたFRBらが
援護射撃を惜しまなかった学者らが、直接的に「犯人だ」と思えてしまう。
さて、映画の中では、「誰が起こしたのか」「誰が責任を取るべきか」という
問いに対し、大手金融会社のトップたちのほか、ITバブル後に低金利政策を取り続け、変動型金利のローンを推奨したグリーンスパンやバーナンキFRB議長、
元モルガンスタンレーのトップで、財務大臣を務めていたポールソン、
論文を書き、住宅ローンの証券化を賞賛したサマーズ教授とハワード教授。
彼らが銀行などからお金をもらって顧問を務めていたり、政府に登用されたりと、
金融業界と政策の「円滑油」を担っている仕組み、そこらへんの経歴をオープンにしない大学(ハーバードとコロンビア)、監視すべき立場にありながら無能な連邦準備制度理事会の理事(フレデリック・マスキン=アイスランド中央銀行から金をもらって報告書を書き、非常にリスキーな立場を見ずに「健全」と太鼓判を押していた)、などが槍玉に挙げられている。
5大証券会社のひとつで一番最初に倒産したベアー・スターンズのトップ二人が、
投資家に対する詐欺などで逮捕されたのと対照的に、彼らから逮捕者は出ていない。
映画は、明らかに司法に変わっての「断罪」を役割としているのだ。(そして、
断罪されていないことで、彼らの多くが現オバマ政権の重職に就きつづけている事も
忘れずに指摘している。)
この姿勢は衝撃的だった。まあ、マイケル・ムーアだってそうではあるが。
硬派でまとめあげているのに、引き付けられる。
「洗脳される」という感覚にならなかったのは、あらゆる角度の人のインタビューで
構成していて、データや解説を盛り込んでいるからだろう。
後で知ったが、MIT(マサチューセッツ工科大学)の(おそらく経済学で)
博士号を取っているらしい。
日本でも、こういう映画を作らなくてはだめだと思う。
※この映画には公式スタディガイドまである
http://www.sonyclassics.com/insidejob/_pdf/InsideJob_StudyGuide.pdf
「何に怒りましたか?」「ハーバードとコロンビアはこのままでよいと思いますか?」
など、生徒に問うべき質問も並べてある。
構造や人物名を断言していく。衝撃と言うか、いちいち「真実だ」という
証拠を見せていくから、力がすごい。かなり上映する映画館が少ないが、
絶対に見た方がいい。粗方、金融危機の知識があるという人も、
中心にいた金融マンや学者がどんな口調で、どんな言葉遣いでexcuseするのか、
周りにいた弁護士や政治家、消費者団体、精神科医や娼婦の表情はどうか
と見るのは物事をよりリアルに見るのに役立つ。
※映画でインタビューした人紹介
http://www.sonyclassics.com/insidejob/site/#/cast
取材に応じなかった人たちの紹介
http://www.sonyclassics.com/insidejob/site/#/declined
「これは戦争並みの犯罪かもしれない」というのが、最初の感想。
「全然知らなかった!」という事実が出てくるわけではないが、数百万軒の家が差し押さえられ、
3000万人が失業したこと、それにより利益を得た人たちが
糾弾されていないこと。まんまと製作者の意図に乗る形で、怒りが沸いてくる。
なぜかといえば、2008年の金融危機が、「アメリカ金融界による意図的なバブル」と説得させられてしまうからだ。
被害者とも映り得る彼らが、なぜ意図的だったと言えるか。特に、ゴールドマン・サックスが
代表として名が挙がるのだと思うが、その証左として
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の大量保有がある。
CDSは、住宅ローンの債権を証券化したCDO(債務担保証券)に対してかける保険だ。(たぶん)。
もしCDO(債権)が回収できない場合に備え、AIGなどの保険会社に手数料を
払っておくことで、ちゃんと債権が回収できるようにしておく。
ゴールドマンサックスは、顧客に(回収できないかもしれない)CDOを売っておきながら、
自社の運用としては大量にCDSでリスクヘッジをしておき、
金融危機が起きてもCDSによって損失を小さく抑えた。
(AIGが破綻していればそのまま損失になっていただろうが、
AIGは政府により救済された。さてなんででしょう)
日本の不動産バブルでは(といっても知識は乏しいが)、
土地神話を皆が信じ込んだことにより、インフレではなく土地の価格のみが上がっていった。
この土地価格の上昇は、企業や個人や資産家といった無数のプレーヤーがいて、
醸造されてしまったものだ、と思う。(要勉強)
それを急激に止めようと政策金利を一気に引き上げたために崩壊した。
一方で、アメリカの金融危機は、住宅ローンの証券化、そのリスクヘッジのための
CDS、という新商品の開発がある。「金融危機を起こそう」というものでは
ないだろうけど、「頭金がない人にもローンを組ませ、リスク分散化して見えない
ようにし、手数料で儲けてやろう」という意図はあったのではないか。
そうとしか考えられないほど、この商品が危機につながることは予見できたように
思えてならないからだ。
だからこそ、その商品開発に関わったいくつかの金融会社、それを見過ごしたFRBらが
援護射撃を惜しまなかった学者らが、直接的に「犯人だ」と思えてしまう。
さて、映画の中では、「誰が起こしたのか」「誰が責任を取るべきか」という
問いに対し、大手金融会社のトップたちのほか、ITバブル後に低金利政策を取り続け、変動型金利のローンを推奨したグリーンスパンやバーナンキFRB議長、
元モルガンスタンレーのトップで、財務大臣を務めていたポールソン、
論文を書き、住宅ローンの証券化を賞賛したサマーズ教授とハワード教授。
彼らが銀行などからお金をもらって顧問を務めていたり、政府に登用されたりと、
金融業界と政策の「円滑油」を担っている仕組み、そこらへんの経歴をオープンにしない大学(ハーバードとコロンビア)、監視すべき立場にありながら無能な連邦準備制度理事会の理事(フレデリック・マスキン=アイスランド中央銀行から金をもらって報告書を書き、非常にリスキーな立場を見ずに「健全」と太鼓判を押していた)、などが槍玉に挙げられている。
5大証券会社のひとつで一番最初に倒産したベアー・スターンズのトップ二人が、
投資家に対する詐欺などで逮捕されたのと対照的に、彼らから逮捕者は出ていない。
映画は、明らかに司法に変わっての「断罪」を役割としているのだ。(そして、
断罪されていないことで、彼らの多くが現オバマ政権の重職に就きつづけている事も
忘れずに指摘している。)
この姿勢は衝撃的だった。まあ、マイケル・ムーアだってそうではあるが。
硬派でまとめあげているのに、引き付けられる。
「洗脳される」という感覚にならなかったのは、あらゆる角度の人のインタビューで
構成していて、データや解説を盛り込んでいるからだろう。
後で知ったが、MIT(マサチューセッツ工科大学)の(おそらく経済学で)
博士号を取っているらしい。
日本でも、こういう映画を作らなくてはだめだと思う。
※この映画には公式スタディガイドまである
http://www.sonyclassics.com/insidejob/_pdf/InsideJob_StudyGuide.pdf
「何に怒りましたか?」「ハーバードとコロンビアはこのままでよいと思いますか?」
など、生徒に問うべき質問も並べてある。