ほっぷ すてっぷ

精神保健福祉士、元新聞記者。福祉仕事と育児で「兼業」中。名古屋在住の転勤族。

堤未果(2008)『ルポ 貧困大国アメリカ』岩波新書

2009-12-20 14:35:22 | Book
 読み終わってみて、この本にはもっと適したタイトルがあるんじゃないかという
気がしている。
「貧困大国アメリカ」というより、「貧困ビジネスを主導する国、アメリカ」といったところ。
弱者が生み出されることは、彼らが経済的な弱みを持ち、
それが利用されやすい構造が生まれることだということを示している。

 具体的には、貧困のために大学進学をあきらめそうな高校生たちへの
軍へのリクルート(そのための、各学校の携帯電話番号レベルでの個人情報提供)、
同じく、無理して大学を出ても就職もなく、奨学金の返済が出来ない
学生に、返済免除制度などを示しながら軍にリクルートする、
移民には、「入隊すれば市民権を与える」という移民法改正(2002年)
までして誘い込む、

 軍だけでなく、”警備”を政府から受託している
KBR社(ケロッグ&ブラック・ルート社=親会社はハリバートン)と
傭兵派遣の請負をするブラックウォーターUSA社は、
実際に支払う報酬や労働環境の過酷さを隠しながら、
ネパールやフィリピンにまでリクルートに出かける、

 戦争の他にも、貧困家庭用のフードスタンプ(食糧用バウチャー)が
チーズバーガーのように、栄養の偏った高カロリーのものの消費に流れ、
貧困が肥満につながっている構図などを書いている。

 内容以上に考えさせられたのは、2つの点だ。

 ひとつは、仕事の上で、「事実を構造的に組み立てて示す」ことの重要性。
構造ごと知らせる、というのは、私の仕事で常に求められていることでは
ないと思うけど、目標にすべき付加価値のある仕事なのだと思った。

 もうひとつは、読者として「具体的に知り、覚えている」ということの必要性。
当たり前のことだけど。おおざっぱにしか知らないことは、そのことの
重要性を低く見ている証拠だし、その後も低く見続けることにもつながる。

 =岩波新書、2008年1月発行=

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