亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

債券ポートフォリオ(保有資産)に評価損を抱えたFRB」

2022年05月30日 22時26分51秒 | 金市場

先週末は6月2週目に発売予定の経済誌の原稿を書いていた。金価格の見通しがテーマだが、先行きの上昇を読んでいることから、その背景としてFRBのバランスシート上これから起きる問題点について書いた。土曜日の夕刻に一通り書き終えて、何気に週末の海外のニュースをチェックしていて何のことはない、FRB関連のニュースに書いた原稿内容に一部重なるものを見つけた。

それは表題のようにFRBが保有債券に含み損が発生しているというものだった。本日は別の原稿に「FRBが先週末に公開した財務関連資料では看過できない、しかし一部で想定されていた結果が浮上した」との書き出しで内容を取り上げた。

 

20年春の新型コロナパンデミック以降の経済の急収縮に対応し、FRBは米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の大量買い付けという方法で、市場に多額の資金を供給してきた。その結果、この3月末(正確には3月30日)時点でFRBの総資産8兆9371億ドルの内の約95%に当たる8兆4776億ドルの国債を中心に債券を抱えている。先週末に判明したのは、この債券ポートフォリオに3300億ドル(約42兆円)の含み損が発生しているというもの。率直に言って早晩表面化すると思っていたもので、したがって原稿にはそういった内容を含めFRBが保有債券からの利息収入に対し、外に支払う利息の方が大きくなる「逆ザヤ」に陥る可能性を書いたのだった。

 

いずれにしても米国経済の正常化とFRB自体による金融引き締め(利上げ)に反応し、長期金利をはじめ各種金利が上昇してきたが、それは債券価格が値下がりしていることを意味する。中央銀行の決算は、保有資産の評価が原価ベースのため含み損自体は問題はないが、FRBに対する信認問題とともに政治問題となる可能性がある。共和党は以前からFRBの量的緩和策に対し反対のスタンスだった。FRBの信認を揺るがす問題は、ドルの評価につながり、金市場の関心事でもある。

 

ちなみに日本銀行も既に多額の評価損を抱えていると見られるが、公表はされていない。市場関係者間では暗黙の了解という類の話。懸念は膨らむが民間サイドからは手が出せない問題といえる。長期金利が上昇すると評価損はさらに拡大することから、「デフレ脱却」を掲げつつ日銀は0.25%を超えないように自ら国債価格を連日買い支えている状況にある。同時に日銀の(保有国債など)運用資産利回りは0.2%程度と見られるが、これはほぼ固定。一方、市中銀行が日銀に預け入れた当座預金の付利(金利)は政策金利を引き上げる(利上げする)と連動して上昇する。つまりその場合、受け取り利息より、利払いが上回る逆ザヤが発生する可能性が非常に大きいといえる。

 

緩和策解除により金利が上昇すると、日銀決算の赤字転落は避けられないだろう。

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