22年も早くもあと3週で上半期が終わるが、1-3月期の価格急騰でいわゆる新興国金実需は減少していた。中でもインドの1-3月期需要は18%減の135.5トンとなっていた。新型コロナによる行動制限で見送られていた婚礼が集中した10-12月期は343.9トンまで急増していた。いわゆるペントアップ・ディマンド(先送り需要)によるものだが、これは一種の特殊要因といえた。1-3月期に関してはやはり価格要因が大きい。インド・ルピーの対ドルレートが過去最安値になる中でドル建て価格の急伸で、ルピー建て金価格は10グラム当たり5万ルピー(スポット価格)を越え、20年8月の過去最高値を更新。さすがに買いは見送られることになった。
これだけ値が上がると売りが出そうなものだが、インドの場合他の国とは異なる。そもそも農村部を中心とした金需要は、金信仰と言ってもいいほどで金を保有し身に着けることに宗教的な意味がある。全人口の9割近くを占めるとされるヒンズー教徒にとって、光り輝くものを保有すれば、ますます富栄えるとされる。身に付ければ、邪悪なものから守ってくれるとされる。したがって益出しの売りは他国・他地域に比べ少ない。保有の形もジュエリーが多い。しかも日米欧のような14K、18Kでなく、多くは24K純金製となる。換金の必要があれば、日本流で表現するならば「質屋」に持ち込む。後に余裕が出れば返済し現物を引き出す。
そのインドで5月の金輸入が前年比で677%と急増した。といっても前年がコロナの影響で減少していたので割り引く必要がある。前年5月の13トンから101トンへ7倍に膨らんだ。インドの5月は婚礼シーズンで知られる需要期で11月に次の山がやって来る。昨年秋と同様に前年に挙式を見送ったカップルが多く、先送り需要もあり輸入を押し上げたとみられる。
さらに0.5%の利上げを決めた5月初めの米連邦公開市場委員会(FOMC)後にNY金が下押したことでルピー建て価格は3カ月ぶりの安値水準となる4万5000ルピー前後まで下げたこともある。ただし、需要期を過ぎた6月の輸入は低下すると見られている。