本日は16時30分からラジオNIKKEI、マーケットトレンドPLUSにスタジオ出演だった。このところのNY金の下げ加速の背景にあるドル指数(DXY)と米長期金利の上昇の話。ゴールドのみならず市場横断的に節目となった8月下旬以降のイベントの話。NY先物市場で5週連続で積み増されているショート(売り建て)の話、さらに来週から始まるインドの祭礼シーズン入りの話など。
週明け9月26日のNY金は続落で通常取引は1633.40ドルで終了。その後の時間外で1628.50ドルまで売られ直近安値を更新。いずれも2020年4月1日以来の安値だが、1600ドル割れに至らない限り、「4月1日以来」は変わらない。ちなみにこの日の終値が1591.40ドル、安値が1576.00ドルとなっていることによる。
日本は祝日だったが先週末23日と週明け26日の2営業日でNY金は47.7ドル、2.8%の下げとなった。その背景がまずドル指数(DXY)の上昇加速。23日1日で111ポイント台(111.353)から一気に113ポイント台(113.192)に跳ね上がったが、週明けも騰勢に衰えは見られず114ポイント台(114.103)に切り上がり、連日20年ぶりの高水準の更新が続いたこと。2営業日のDXY上昇率は2.47%にもなる。為替相場由来で約2.5%は大きい。これを受けアルゴリズム(ファンドの売買プログラム)のNY金売りが発動ということに。
もっとも週明け26日に一気に114ポイント台に跳ねたのは、英ポンドの急落だった。先週末23日に対ドルで3.6%下落していたが、アジア時間に最大4.9%急落し、過去最安値の1.0327ドルをつけた。英トラス新政権が、先週発表した1972年来で最大の減税を含む経済対策が財政に打撃を与えるという懸念が引き続きポンドを圧迫している。ポンド安に連動するようにユーロも売られ一時0.9528ドルと対ドルで20年ぶりの安値をさらに更新した。ドル円相場も一時144円台後半と先週の政府・日銀による円買い・ドル売り介入前の水準(145円台後半)に接近した。
主要6通貨で構成されるドル指数(DXY)の構成比率は、ユーロが57.6%、日本円が13.6%、英ポンド11.9%、カナダドル11.9%、スウェーデン・クロナ4.2%、スイス・フラン3.6%となっている。つまり上位3通貨が対ドルでメロメロということでDXYは急伸ということに。
一方、26日米10年債利回りは、一時は3.928%と2010年4月以来、12年ぶりの高水準をつけた。インフレを抑えるため利上げは加速し、金融引き締めが長期化するとの見方から、債券売りが止まらない。日本が為替介入のドル・キャッシュ調達のために、米国債売りを進めるとの思惑も価格下落(利回り上昇)の背景のひとつという指摘もできる。というのも日本の外貨準備は大半が米国債の保有になっているからだ。売却してドルキャッシュにして、介入ということになる。2年債利回りの上昇も加速し一時4.360%をつけ4.347%と15年ぶりの高水準で終了した。2年債は直近2カ月だけで1.3%の大幅上となっている。政策金利の見通しに敏感に反応することから、この間に米連邦準備理事会(FRB)の引き締め水準が、急激に引き上げられたことを表している。
先週来、ドルと米長期金利の急騰が景気不安を高め米国株を下押しし、リスクオフ・センチメントが広がりが、ドル買いにフィードバックされ、さらにドルを押し上げるという循環が生まれている。それにしても上昇ピッチが上がっていることは間違いなく、こうした加速は、往々にしてピーク圏で現れる現象ではあるのは経験則が教えるところではある。DXYも長期金利も上昇加速は、ターミナルレート(利上げ終着金利水準)の見通しが引き上がったことにある。つまり、そのターゲットが見えるとき、ドル上昇もピーク接近ということになると思う。
昨日も書いたが、現時点のNY金は売られ過ぎと捉えている。