亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米国株式大幅反落、キャッシュアウトを警戒した金市場

2020年09月04日 12時40分44秒 | 金市場
9月3日のNY市場の金価格は、小幅に続落となった。この日の金市場は、アジアからロンドンさらにNYの通常通常取引入り後まで、前日の終値水準(1944.70ドル)を挟んで、方向感なく上下動を繰り返す展開となっていた。NY時間に発表された8月29日までの週の失業保険新規申請件数が88万1000件と、前週の101万1000件から減少。一方、ISM(供給管理協会)が発表した8月の非製造業景況指数は、活動の拡大を示す50は3カ月連続で上回ったものの、56.9と7月の58.1から低下。予想は57.0となっていたので、予想を上回る低下ということに。週初めに発表された製造業景況指数が回復の加速を思わせたのとは、対象的な結果となった。

金市場は、これらデータに反応というよりも、ISMの発表があった以降に下げ足を速めた株安の影響を受けた印象の流れとなった。NYダウ、S&P500総合株指数、ナスダックの主要3指数は、午前中頃から下げ基調を強め、午後に入ってさらに下げ幅を拡大した。下げはここまで買われていたアップルやテスラなどハイテク株主導で、結局、ナスダックは598ポイント安の1万1458ポイントで終了。前日比5%の大幅安で終了となった。金市場は、この株安に連動するように昼前にかけて売りが優勢となり1920ドル台まで水準を切り下げることに。その後は安値拾いの買いに反転となるも上値は重く、結局前日比マイナス圏で終了となった。NYコメックスの通常取引は前日比6.90ドル安の1937.80ドルで終了となった。

NYダウは、2.8%安、S&P500は3.5%安となったが、株価大幅安の中で逆に金は買われるというのが教科書の教えるところだが、むしろ小幅ながら金は売られることになった。金融市場が不安定な時に金は買われるケースが多いが、それゆえに昨年来、過熱気味の株価上昇が見られる際に、下げに対する保険的な視点で金が同時に買われるということが起きてきた。株式市場の買い手が同時に金の買い手でもあったとみられる。つまり、株式市場が大きく下げる際に、利益が出ている金を売って(キャッシュアウト)株式の損失分をカバーするのではとの見方がある。仮に本格的にそうした動きが取られた場合には、金市場の下げはもっと大きなものになると思われるので、3日の金市場の動きは、そうした警戒感が先行した売りで下げたということだろう。

特段の材料のない中での米国株式市場の大幅反落は、むしろここまで「糸が切れた凧」状態の株価高騰が続いてきた反動といえ、市場心理(センチメント)主導型のものと思われる。自動車株ではなくハイテク株として異常人気になっていたテスラが、その機に乗じて新株発行に踏み切ったり、アップルなどいわゆるGAFAにマクロソフトを加えたわずか5社に買いが集中し、時価総額で米国株式市場全体の4分の1近くを占めるなど、過熱が指摘されていた。もちろん、これでピークアウトしたとは言い切れない。しかし、振り子は振り切れるところまで行かないと返ってこない。ここまでの展開が、果たして「振り切れた」状態なのか否かを、市場参加者は、これから見極めようとするのだろう。特段の理由なき株価の大幅反落は、そういうことを考えさせる。
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