亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

2000ドル超ゴールドこそResilient(立ち直りの速さ)

2023年06月02日 19時49分27秒 | 金市場

NY金は4営業日続伸となった。一時5月中旬以来となる2000ドル超えの水準まで買われた。前日のジェファーソンFRB理事の発言から6月の連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げは見送りとの観測が、引き続き米長期金利とドル指数(DXY)を押し下げ、NY金の買い手掛かりとなった。

この日発表された米経済指標の一部がインフレ圧力緩和を示したと受け止められたことも、利上げ見送り観測に整合的と解釈され、押し上げ要因となった。NYコメックスの通常取引は前日比13.40ドル高の1995.50ドルで終了。

 

NY時間未明には一時1970,10ドルまで売られたが、前日に2カ月半ぶりの高値104.699を付けたDXYが、この時点でまだ高止まりしていたことによる。その後DXYが水準を急激に切り下げるに従い、NY金は反転し上昇した。NYの早朝に発表された5月ADP全米雇用報告(民間雇用)で雇用者数が前月比27万8000人増と、市場予想(18万人増)を大きく上回ったことで、いったんは売り優勢に転じたものの、すぐに反転し上昇を続けた。

NYのちょうど正午には2000ドルに到達し、2000.70ドルがこの日の高値となった。翌2日に5月の米雇用統計の発表を控えていることもあり、買い一巡後は伸び悩んだ。それでも終盤に向け1990ドル台半ばでの推移が続き、そのまま終了した。

 

ADP全米雇用報告については、雇用者増加数が予想比上振れたものの賃金上昇率は鈍化しており、サービス価格の鈍化を示唆するものと受け止められた。その後発表された5月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は、46.9と、前月の47.1から悪化し、7カ月連続で拡大・縮小の分岐点となる50を下回った。重要項目の新規受注の急減が低下につながった。

7カ月連続での50割れは2008年のグレートリ・セッション(大不況)以来最長となる。

このところ発表された米経済指標は予想外の底堅さを示して、打たれ強さ、立ち直りの速さ(resilience)を印象付けているが、ISMの結果はやはり年内の景気後退を思わせるものといえそうだ。

ジェファーソンFRB理事が、6月会合にて利上げの「見送り」をした上で、ここまでの金融引き締めの影響を検証する時間が必要との考えを示したことは、理にかなっているということだろう。

1日はフィラデルフィア連銀のハーカー総裁も、高水準にある米国のインフレの低下ペースは緩慢ではあるものの、FRBは6月会合で利上げを決定するべきでないと発言。経済データ(目先は本日の雇用統計)にサプライズがない限り政策金利を据え置き「様子を見る」ことが望ましいとした。

こうした中でドル指数は前日高値の104.699から103.496まで低下し、103.560で終了。1日の下げとしては、利上げの打ち止めを示唆した5月FOMC直後(5月3日)以来1カ月ぶりの大幅下落となった。この下げがNY金を一時2000ドル超に押し上げた。

本日は5月の米雇用統計の発表が予定されている。前月比のNFP(非農業部門就業者数、Non Farm Payroll)の伸びは20万人前後が予想されダウ・ジョーンズ調べでは19万人増となっている。失業率は前月の3.4%から3.5%に上昇、平均時給の前年比伸び率は前月の4.5%から4.4%に鈍化の予想。ADPの数字が上振れたので一定の警戒感はあるが、resilientとなるのか、ちと疑問。予想の範囲内に収まるならば、NY金は2000ドル超で引けそうだ。

何のことはないGoldこそresilienceなのだった。

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