先週は、米連邦準備理事会(FRB)高官が、入れ替わり立ち代わりタカ派発言を重ねたことで、流れは引き潮に転じることになった。このとこと引き締め減速期待を先行させている市場センチメントに、水をかけた1週間だった。ただし、この揺り戻しともいえる動きは、ある面で想定内のもので、前週に巻き戻されたドル買いポジションは、自律反発的な動きを見せるのは自然な動きで、NY金もドルの戻りにつれ反落ということになった。その反落の水準がどのあたりで踏みとどまれるかがポイントになる。
前の週の11月10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想比で下振れ(7.7%の伸び)4カ月連続で減速となったことを受け、市場ではFRBの利上げ政策の後退を読む動きが強まり、先週週明けも持続していた。ところが週半ば以降は、その政策転換期待に水を差すFRB高官の発言が相次ぎ、再び市場は見通しを修正する動きに転じることになった。
総じて10月CPI数値の低下を歓迎しつつも、単月の結果をもとにした金融政策の修正観測は行き過ぎとの警告を発している発言内容といえた。
16日にサンフランシスコ連銀デイリー総裁が、ターミナルレート(利上げの最終着地金利)として「4.75~5.25%が妥当な範囲」と発言。
17日にはセントルイス連銀のブラード総裁が、金融政策を巡る「寛大な」分析の下でもFRBは少なくとも合計1%の追加利上げを実施する必要があるとし、これまでの利上げは「観測されるインフレに対して限られた効果しかない」と指摘。インフレ動向によっては7%の金利水準の可能性にまで言及したが、まさに前のめりの政策転換を織り込む市場への牽制であり、市場もそのあたりは察していると思われた。 でなければ、市場の反応はもっと大きくなっていたと思われる。
18日は、ボストン地区連銀のコリンズ総裁が「現時点では、全体のインフレ率が低下しているという明白かつ一貫した証拠」はまだないとして、「われわれのやるべき仕事はまだある」と発言。このあたりは8月来のパウエル議長の発言と同じ。0.5%利上げがかなり織り込まれた12月の連邦公開市場委員会(FOMC)について、0.75%の可能性もなお検討されていると述べた点が強調して報じられた。これにしても、経済チャンネルCNBCのインタビューでは、「0.75%も依然として選択しだ。そう指摘しておくことも重要だと私は考える」としており、こちらも牽制発言の色合いが強かったとみられる。
総じてFRBとしては、ここから利上げペースを落としたとしても利上げは続け、景気抑制的な高金利環境を一定時間維持する意向であることを示している。
11月のFOMCまで4会合連続の3倍速(0.75%)利上げは、もともと想定外で、それゆえドル高に沿ってNY金は売られ1600ドル台まで落ちていた。この間の売りは、ほぼすべて先物市場での空売りとみられたが、この11月15日までの2週間で、溜まっていた大量のショートは、巻き戻された(買戻し=カバー)とみられる。重量換算ではネットで190トンにもなったとみられる。ポジションとしては、スクエアに近いと思われ、ここからどちらに傾くか。
政策の先行きは不透明な現時点では、再びショートの積み増しか。次は来週のコアPCEデフレーター、12月初めの米雇用統計、さらに次週の11月米CPIと続き、12月FOMC明けで1800ドル台回復を想定している。