先週末5月10日に続伸したNY金は不思議な上昇だった。
終盤に水準を切り上げた前日のモメンタムを維持する形で、NY時間外の10日アジア時間を2353.50ドルでスタートした取引は、派手さはないものの一貫して買い先行の流れが続いた。
アジア時間の午後には2360ドル台に乗せ、ロンドン早朝には2370ドル台へ、そしてNY時間の早朝には一時2385.30ドルの高値を付けた。
そこからNY時間に向けては逆に売り優勢に転じ、結果的にこの日の注目指標となったミシガン大学消費者調査発表後は、一時2360ドル方向に売り戻されることに。
終盤に向け再び買い先行の流れに戻り通常取引は2375.00ドルで終了した。前日比34.70ドル高だった。
終値で最高値を記録した4月19日以来3週間ぶりの高値水準となる。週足ベースで66.40ドル、2.9%の上昇で3週間ぶりの反発ということに。
前週は一時的に2300ドル割れを見ながらも終値ベースで心理的節目でもあるこの水準を維持した。市場センチメントの好転はあるものの、10日のNY早朝に至る上昇の手掛かり材料として思い当たるのは、中東情勢のみ。
パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとハマスの戦闘休止と人質解放に向け、仲介国エジプトの首都カイロで7日から開かれていた間接交渉は合意に至らず、9日に物別れで終了した。米国はじめ国際的な反対論の中で、イスラエルは南部ラファへの攻撃を開始したと伝えられた。さらに多数の犠牲者が出ると見られるなかで、イスラエルは限定的攻撃とするものの、懸念は高まっている。
不思議というのは、むしろこの日は5月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)が、大きく落ち込み(67.4)、4月以降の陰りが5月にも及んでいることが明らかになったことに対する反応よりも、中東情勢しか浮かばない時間帯の継続買いが水準を押し上げたことだ。
時間帯からして、中国関係のトレーダーが出動する時間帯でもあり、中国の買いかとも思った。
週末に発表された7日時点でのNYコメックスのゴールド買い建てポジションは、短期筋は507トンのネットロング(買い越し)だった。3月12日時点の490トンから4月9日の557トンまで増加。その後毎週漸減で507トンまで減っている。この程度で100ドルの調整を経て、先週末の上昇というのも、不可解故に中国勢の影響を考えざるを得ない。
5月1日から始まる労働節(中国版ゴールデンウィーク)明けで動き出したかと思ったものの、週明けNY時間外のNY金は売り先行の流れとなっている。