24日のNY金は3営業日続落で1964.60ドルで取引を終了。1950を下に試すかのような動きになりつつある。押し目買いの領域と思うが、円建て国内は為替要因(円安)でそう下げていない。
前週末にパウエル連邦準備理事会(FRB)議長が、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ休止の意向を示したことを受け反発したNY金だが、週明け以降はむしろ複数のFRB高官によるタカ派発言に値を抑えられる流れが続いている。並行して展開されている米連邦債務上限問題の協議が(当初伝えられた楽観見通しとは異なり)難航していることもあり、米金利高、ドル高の中で、金市場は売り優勢の流れが続いている。
24日は対ユーロ、対円に加え対ポンドでも一時5週間ぶりの高値を付けたことでドル指数(DXY)は一時103.914と3月20日以来の高値を付けた。米国債相場の方は、債務上限引き上げ協議の難航を映し1カ月物財務省短期証券など短期債からの突き上げもあって長期債利回りも上昇、この点でもNY金は売られやすくなっている。米10年債利回りは3月9日以来の高水準となる3.75%で終了した。長期金利の上昇がドル円相場では円安に作用している。円建て金価格をサポートということに。
米国内でのサービス価格のインフレの高止まりから、FRB内でも「しつこいインフレ」論議が盛んで利上げ打ち止め見通しを示しにくくなっているが、こうした状況は欧州も同じ。英国立統計局(ONS)が24日発表した4月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で8.7%の上昇となり、事前の予想ほどには鈍化しなかった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは31年ぶりの水準に上昇した。 英長期債利回りは、4.2%台と昨年9月に英国年金危機が発生した水準まで再び上昇(価格は下落)している。
この日のFRB高官の発言では、カリフォルニア大学(サンタバーバラ校)主催のイベントでのウォラーFRB理事の講演があった。来月の利上げの有無は今後数週間の主要なデータ次第とした上で、見送ったとしても引き締めサイクルが終わったと宣言するのは時期尚早との考えを示した。6月FOMCにて利上げを見送ったとしても、「インフレが2%の目標に向け鈍化しているという明確な証拠が得られない限り、利上げ停止は支持しない」と強調した。発言内容としては、前日のミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の発言と同じものといえる。
NY時間の午後に注目の5月FOMC議事要旨が公開された。
5月の会合終了後の一連のメンバーの発言からも明らかだが、利上げ継続か停止かを巡り見方は分かれていることが改めて判明した。経済見通しを左右するリスク要因が大きくなっているが、それをどう捉えるかで見方が分かれる。ほとんどのメンバーが相次ぐ銀行破綻で融資など与信環境が厳しくなっていることを踏まえ、経済成長には下押しのリスクが高まっていると指摘した。同時にすべての参加者が物価上昇率について「受け入れがたいほど高い」との見方を表明している。
5月のFOMC後に発表された一連の経済データが予想より堅調なものが多かったことから、これまでの政策効果を見極める上で利上げは見送りという見方は残るものの、それが利上げサイクルの終了を意味しないことを示す必要性があると考えるメンバーが増えているようだ。
つまりいったんは、利上げサイクルの終了を織り込んで、2050ドル超まで買い進まれたNY金だが、この点で足元は仕切り直しという状況にある。
その中で並行して債務上限を巡る協議が続いている。 財務省が“早ければ”6月1日とするXデーが接近し時間切れが迫る債務上限問題は、双方の担当者による協議が24日は夜に入っても(日本時間午前)続けられた。協議は連日続いているが、言うまでもなく難航している。与野党双方ともに強硬派は譲歩するなとのプレッシャーをかけている。5月29日のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の祭日を挟んで米下院は休会入りするが、25日からワシントンを離れ選挙区に帰る議員が多いとされる。議会での審議の時間も限られている。