NY金は4営業日続落となった。心理的節目の1950ドルを割れ終値ベースでは3月21日以来の安値となる1943.70ドルで終了した。
前週初めに終値ベースで2000ドル割れに至って以降、調整局面入りしているが、今週に入り米連邦準備理事会(FRB)高官の発言などから、6月時点で利上げが見送られたとしても、利上げサイクルの終了を意味しないとの認識が急速に広がった。 折しも6月1日の債務不履行(デフォルト)可能性Xデーとされる6月1日に向けた米債務上限問題が難航し、米債金利(利回り)が上昇傾向にあるところに、利上げ継続観測が重なり25日の10年債利回りは3.822%と3月9日以来およそ2カ月半ぶりの高水準に上昇。この動きに同期する形でドル指数(DXY)も4営業日続伸の104.251と3月17日以来の高値を付けた。金が売られやすい環境が生まれた。
25日のNY金は、売りが先行する中でもNY早朝までは1960ドル台で安定した値動きが続いていた。 流れが変わったのはNY時間の午前8時半。発表された2つの指標が米国経済の底堅さを示したことで、金市場ではややまとまった売りが出て、1960ドルをやや上回るところから1950ドル割れ、さらに1940ドル割れまで20ドルほどの急落状態となった。一時1939.00ドルまで売られ、これがこの日の安値となった。終盤に向けて買戻しの動きが見られたものの、戻りは限定的なものとなった。
売りの手掛かりとされたのが、米1~3月期実質国内総生産(GDP)の改定値だった。前期比年率1.3%増と速報値と変わらずの1.1%増の市場予想を上回った。個別では個人消費が速報値の3.7%増から3.8%増に上方修正され21年4~6月期以降で最大の伸びとなり、米国経済の7割を占める消費が依然堅調に推移していることを示し、景気後退が回避されるとの見通しを生むことになった。FRBの利上げ継続を後押しする内容と言える。
さらに同じ時間に労働省が発表した5月20日までの1週間の新規失業保険申請件数が前週から4000件増加し、22万9000件となった。市場予想(24万5000件)を下回った上、前週のデータは24万5000件から22万2000件に大幅に下方修正され、労働市場が軟化している兆候は見られなかった。タカ派FRB高官は、労働市場の強さが経済が継続利上げに耐えられる源泉と捉えており、こちらも利上げサイクル終了観測を後退させた。
一方、連邦債務上限を巡る協議は、代表者レベルでは25日深夜まで続けられた。マッカーシー下院議長は一定の進展があったとし、解消されていない問題に24時間体制で取り組むよう共和党の交渉チームに指示したと表明。進展はしているものの、合意にはなお双方の歩み寄りが必要というこう着状態が続いている。
こうした中で大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは24日、米国の信用格付けの見通しを「ネガティブ(引き下げ方向)」とした。
本日はインフレ指標としてFRBが注目している個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の発表が予定されている。食品とエネルギーを除くコア指数の中のサービス指数が引き続き高止まりしているとみられ、結果は6月の利上げ判断に影響する要件となる。
NY金はこれ以上崩れることはないと思うが、どうなるか。