米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げの有無や、利下げを開始した場合の利下げ幅を読む手掛かりを得ようとしている市場。
25日はその中でも注目指標となる米10~12月期米実質国内総生産(GDP)速報値が発表された。結果は市場予想前期比年率2%の伸びを大きく上回る3.3%の伸びとなった。想定を大きく上回る経済の強さは、FRBが利下げを急がないことを示唆するが、GDP統計発表を受けた金市場の反応は上昇だった。
NY時間の早朝まで前日終値水準(2016.00ドル)を挟んだレンジ取引に始終していたNY金。GDP統計発表直後にフラッシュトレードのような形で予想外の3.3%成長に対する反射的な売りが出たが、直後に鋭く反転しそのまま売り買い交えながら2025.60ドルの高値まで上昇した。ただし、終盤はさすがにFRBも利下げに慎重姿勢を取らざるを得ないとの見方もあり、上げ幅を削ることになった。結局NYコメックスの通常取引は、前日比1.80ドルの小幅高の2017.80ドルで終了した。その後の時間外取引ではやや買いが先行し時間外取引は2021.00ドルで終了した。
10~12月期実質GDP速報値の予想比上振れ(2.0%⇒3.3%)は、個人消費の伸びによる。多くのエコノミストの予想を上回り、第4四半期に2.8%増えた。経済全体の7割を占める個人消費の堅調さは、先行して発表された12月小売売上高にも表れていた。成長率は全体でみると7~9月期の4.9%から鈍化したが、高めの予想となっていたアトランタ連銀のGDPトラッカー(データ追跡)GDP・Nowでも2.4%成長にとどまっていた。
10~12月期が3.3%成長となったことで、23年通年の成長率は2.5%となった。もともと昨年初めにはFRBによる歴史的な利上げの影響で景気後退(リッセッション)が予想されていたが、まさに米国独り勝ちともいえる成長となったことになる。
しかし、こうした景気の上振れを示す指標に何ゆえ金は上昇で反応したのか。
本来であれば一向に冷えない景気に対しインフレの再燃を警戒するFRBゆえに、3月利下げ観測は完全に消え、金は大きく売られる内容といえるもの。2000ドル割れが起きても不思議はないといえる成長率だった。
それはGDP統計に付随して発表された10~12月期の個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)が落ち着いた内容だったことによる。(変動の大きいエネルギーと食品を除いた)ベース(コアPCEデフレーター)で前期比2%のプラスとなり、2四半期連続で物価目標を達成したことによる。インフレはFRBの目標に落ち着いている。一方で現行の政策金利は昨年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)以降据え置かれ、5.25~5.50%となっている。
FRBが見る基調的なインフレが2%の目標に落ち着いたとなると、実質金利は非常に高く、景気には効きすぎの水準といえる。早晩、引き下げる必要があるというわけだ。
現在、パウエル議長やウォラー理事、ウィリアムズNY連銀総裁などFRB中枢部で行われている議論がこれで、今回のGDP速報値は表面的な高成長率の裏で、今後のFRBの政策方針(利下げ方向)を示唆ともいえるものゆえ、NY金は下げず、小幅ながら反発となったといえる。