3月4日のNY金は続伸した。報じられているようにトランプ政権は4日、カナダとメキシコからの輸入品に対する25%の関税を発動し、中国への追加関税を10%引き上げ20%とした。市場では素直に貿易戦争が世界経済を下押しするとして懸念が強まった。
米株式相場が大幅に下げのリスクオフ(リスク回避)で、米国債が買われ一時4.108%と24年10月以来4カ月半ぶりの水準に低下。ドルがユーロや円など主要通貨に対し売られ、ドル指数は一時105.526とこちらも24年11月以来約4カ月ぶりの安値を付けた。こうした中で安全資産としての金(ゴールド)に逃避資金が向かう流れが再開している。4日のNYコメックス通常取引は前日比19.50ドル高の2920.60ドルで取引を終了した。
前週末2月27、28日の2営業日で計82.1ドル、2.8%の大幅な下げとなったNY金だが、 この間の取組(未決済玉)の減少から重量ベースで50トンを超える大量の手じまい売りが出たとみられる。このあたりは週末のCFTC(米商品先物取引委員会)発表のデータで確認できると思う。
上下双方向に値動きが鮮明になった際に、それをさらに加速させ短期で利益を得ようとするモメンタム系のファンド(CTA)の動きによるものとみられる。可能性の非常に低かったゴールドへの関税賦課をネタにしていた目先筋は一掃され、金ETFなど現物系をじっくり拾う買い方は残っている。
週初の反発はいわゆる自律反発で、とはいうものの4日の高値(2939.80ドル)と終値(2920.60ドル)は、この動乱相場発生前に戻ったと言えるだろう。2900ドルを超える値位置ゆえに戻り売りを消化しながらという展開に。
トランプ政権が4日発動した関税については、カナダのトルドー首相は同日の記者会見で、300億カナダドル相当の米国からの輸入品に対し、即時に25%の関税を課すと改めて発表。中国政府も10日に米国からの輸入品の一部に最大15%の追加関税を課すなどの対抗措置を発表した。メキシコのシェインバウム大統領は、9日にも報復関税や関税以外の対策を発表する予定と伝わった。 貿易戦争が米経済のみならず世界経済を下押しするとの懸念が強まり、この日も米国株は続落した。
ダウ30種平均は今週に入り2日間で1300ドル以上下げ、多くの機関投資家が指標とするS&P500種株価指数同180ポイント近く下げ、この日の終値5778.15は米大統領選のあった24年11月5日終値(5782.76)を下回るもの。
トランプ新政権下での規制緩和や減税などで経済成長が続くとの株式市場を中心とした高揚感は消えている。
こうした逆回転に警戒感を抱いたと思われるが、現地時間4日の夕刻にラトニック米商務長官がカナダとメキシコへの関税を巡り、米政権は妥協に応じる可能性があるとの考えを示したと伝わった。関税の軽減に向けた道筋を5日にも発表する可能性があると伝わっている。新政権としては様々なマインドに悪影響を及ぼす、株安は放置できないということか。
ころころ変わる方針は、表層的な判断に基づく政策発動を思わせる。