亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

中国の外貨準備

2006年04月05日 23時01分25秒 | 金市場
中国の外貨準備が8500億ドルを超え日本を抜き世界一になったというニュースは、それ自体は時間の問題とされていたので目新しさはない。問題は、通常は四半期ごとに発表されるものが2月のデータを急遽発表したことに現れる“突出した外貨準備の政治的材料化”だろう。経済大国へと着実に歩みを進めていることを誇示するとともに、その影響力の大きさを暗に示したものと思われる。

金市場では、中国の外貨準備の拡大が折に触れ材料になってきた。

近いところでは、年始。国家外国為替管理局(略称SAFE/State Administration of Foreign Exchanges)の担当者が、「準備資産の投資分野を広げ、通貨構成と資産構成を改善する」といったコメントを流し、直接金に言及はしなかったが、市場では金の買い増しかと材料視されることがあった。このときは、外為管理局が人民銀行(中央銀行)の下部組織ということもあり周総裁がドル資産を売却したり備蓄原油調達のためドル資産を利用する計画はない、と火消しに回るということがあった。先週初めにも、4大国有商銀のひとつ中国銀行の幹部の「「外貨準備の一部で金を買い増すべき」とのコメントが、大手通信社を通じて流れた。中央銀行が外貨準備を使って金を買い増すということは、一般的にはそのままドルを売るということを意味する。ドルといってもキャッシュで持っているわけではないので、米国債や米国機関債を売るということになる。つまり、売り方にもよるがNY債券市場に少なからぬ影響力のある行為ということになる。仮に金利が急騰することになると、株価は暴落するだろう。ドル相場も急落することだろう。つまり、ミサイルなど軍事的な行為ではなくとも、米国に、ある程度の混乱を生じさせることは可能というわけだ。つまり(以前もここで書いたが)いまや中国の外貨準備の急拡大は米国財務省のみならず国防総省の関心事でもある。

これすなわち外交上の材料になっているということ。

ただし、米国金融市場の混乱は中国自身にも火の粉の掛かる事態となるので、理論的な“脅しの材料”というところか。

先週の中国銀行幹部の話にしても、調べれば同行の元エコノミストで今はオーストラリア駐在の幹部ということなので、足元で米国議会から高まっている人民元切り上げ幅拡大要求に対する牽制との捉え方もできるものでもある。中国の外貨準備の拡大は、これからも様々な憶測や思惑を呼ぶことになる。

一方外貨準備の急拡大は、中国国内では為替介入による“人民元の大量散布”という金余り状態を作り出しているわけで、再び不動産投機や過剰設備による過剰生産という過熱を生み出すことになり、コントロールの難しい状況が続くことに。新規の雇用を確保するために高成長は必要で、そのために金余りは有効。一方でインフレも・・・。中国自身も実は外貨準備の急増を手放しで喜べない事情もあるわけだ。中間選挙を控えた米国議会をさらに刺激することにもなるし。

ところで周小川・人民銀行総裁が2004年の9月に中国国内での金の自由化促進に関する発言を行って注目を集めるということがあったが、金保有を進めることは、この“散布された人民元”を吸収することにつながる点で、理に適った政策でもある。専門用語を使うなら、人民元の「不堕化」の一助に金を使うという政策である。

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1 コメント

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貯蓄率46%と雇用統計 (いつも拝見しております)
2006-04-06 09:21:54
お疲れ様です。



中国ではあれだけバブルといわれながら、

ほとんどが外資による景気であることは貯蓄率をみれば何となくわかります。



不安定な政治体制の下では、自国の通貨くらいしか信用できないのでしょう。

しかし、あれだけバブル状態と映る中国で、この数字はある意味で驚異ですね。





そして、海を越えてアメリカ、雇用統計が週末に予定されていますが、

バーナンキFRB議長による度重なる利上げ発言で、ナイーブになっている債権トレーダーが一番気にしています。



非農業部門雇用者数が25万人を超える事態にでもなれば・・・



個人的には週末に向け、あまりポジションを持ちたくないですね。

何となくですが、ユーロドルが語りかけているようにも感じるからです。

まあ、こういう時だから網を張るのもいいかもしれませんが・・・

為替といい、金利といい、結構いいポイントに来ているように感じます。
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