注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)は予想通り0.25%の利上げを決め政策金利は5.25~5.50%となった。2001年以来22年ぶりの高水準となる。かのグリーンスパン議長時代以来となる。
声明文は利上げを見送った6月会合時の内容をほぼ踏襲した上で、景気見通しを若干上方修正した。総じて想定通りのFOMCとなった。
終了後のパウエルFRB議長の記者会見に市場の関心が集まったのは、昨年3月以降続いて来た利上げサイクル終了のシグナルを読み取ろうということだった。 記者会見でパウエル議長は次回9月の会合での利上げを強く示唆しなかった。新型コロナ禍にウクライナ戦争の勃発を受け傷ついた経済の回復過程という難しい経済環境の中で、FRBが明言できるのは、インフレ率を長期的に2%に低下させるということと、現時点で年内の利下げはないということだけだろう。
インフレ抑制の利上げの終盤に差し掛かり、議長は前回6月の記者会見同様に、目的地に近づくにつれて減速徐行運転に転じ、落しどころを探るというニュアンスの発言をした。「不確定要素が多いなか、適切と思われるペースで前進し続けたいだけだ」として、経済情勢を見極めながら政策判断は「会合ごとになる」と強調した。
「データ次第で9月会合で利上げする可能性があるが、据え置きを選ぶ可能性もある」とし、「全てはデータ次第で、それが我々にできる最善のことだ」とした。
聞く方の立場によっては、タカ派にもハト派にも受け止められる内容につき、それぞれの市場が都合のいい解釈をする傾向も見受けられている。このところ米景気の底堅さを示す指標が増えていることから、パウエル議長の発言内容も、今回はソフトランディング(経済の軟着陸)に対し自信を深めた内容となった。具体的には、「大きな雇用喪失(失業率の上昇)をもたらす深刻な景気後退に至らなくても、インフレ率は目標まで下げられる」とし、「直近の経済の回復力を考えると、もはや景気後退は見込んでいない」とまで言い切った。
要は利上げは決めたものの、次回以降は今後のデータ次第ゆえに決め打ちしないようにということに。
それでも市場は先読みする。 FOMCの声明文の発表は午後2時、その後の午後2時半から記者会見が始まったが、NY金はその時点で通常取引を前日比6.40ドル高の1970.10ドルで終え、時間外取引に入っていた。通常取引の段階でドルが弱含みに推移したことから、ロンドンの時間帯から1970ドル台に水準を切り上げていた。FOMCの結果を前に1960ドル台半ばにやや水準を切り下げていたが、議長の記者会見が始まると10ドル方水準を切り上げ、一時1979.90ドルまで買われ、これが高値となった。そして時間外取引は1973.40ドルで終了した。
後1回の利上げのあるなしは別として、大勢的に米利上げサイクルは終了の時間帯に入っている。すでにドル(ドル指数)は、22年9月下旬につけた20年ぶりの高値114ポイント台でピークアウトしているとみられ、上下動を繰り返しながら現時点で101ポイント台に位置している。先週は一時100ポイント割れを見ているが、今後傾向的に水準を切り下げるものと思われる。
NY金は2000ドル大台回復に向け動き出すとみている。