一度上昇を始めると連続高になりやすいというNYダウの特性もあって、主要指標が先週来軒並み連続的に買われたNY株高は、リスク・オンを思わせ金売りの材料となった。しかし、ここまで金市場は1300ドル台を維持してきた。
もともと“Brexit(ブリグジット)”騒動の中の突飛高で付けたのが1300ドル超の水準であってその金融市場への影響が一巡する中で、金も1300ドル割れに落ちるのではと、多くの人が想定したと思われる。NY先物市場では、ファンドの「買い越し残(Net-Long)」が過去最高の1000トン(オプション取引を除く)に接近するところまでに膨れ上がるという内部要因の悪化からも当然だろう。
ここまで1300ドル台を維持しているのは、今のNY株高が“Brexit(ブリグジット)”による欧州から米国へのマネーフローによりもたらされ、企業業績というファンダメンタルズ面に目をつむったものであること。あるいは、すでに期待買いの水準に入っていることがありそうだ。つまり金市場(の参加者)は、株高もそう長くは続かないとみている。
さらに株式市場にも共通するが、“Brexit(ブリグジット)”がもたらしたのは、主要国全体での今後のインフレ率と金利予想の大幅引き下げであって、それは低金利環境が今後も続くという見通しの下、金市場を支える。
さらに、もうひとつ。世界的な超低金利環境の深化により、運用難に直面している保険会社や年金基金、さらにヘッジファンドなどの行動も金価格をサポートしている。
英米系格付け会社フィッチ・レーティングスは、現在、世界に名目金利がマイナスとなっている国債が11兆7000億ドル(約1200兆円)あるとしている。運用をしなければならない機関による利回り探しはどんどん広がっており、債券市場はなお一層バブル化が進んでいる。それでも買わざるを得ない現状。同時にリスク・バランス上、金も保有したままのところも多いとみられる。
今年の金市場の特徴は、リ・バランス(資産の構成比率の見直し)よりもリ・アロケーション(投資対象の組み替え)による保有が進んだこと。つまり新規取得組が多いこと。それがインド、中国などの実需の後退を補い、需給を締めることになった。
そして実需筋や出遅れ組は、1300ドル割れからさらに崩れるのを待っている。
ここからの下げは、いい買い残(ロング)整理の機会になりそうだ。
昨日の中野サンプラザでのセミナー参加者の皆様、ありがございました。
札幌など遠方からの参加の方々、お疲れ様です。感謝です。