亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

マグマうごめく金市場

2020年04月23日 20時58分04秒 | 金市場
以前から何度も書いてきているように、金ETFを通した欧米投資マネーの金市場への流入が続いている。3月は重量換算で151トンの増加がみられ全体の残高は3185トンと過去最高を更新。ここまでは日経でも報じられているのでご存じの方も多かろう。折しも、ドル高の中で自国通貨安が加速させた国内価格急騰や、全土封鎖などから急減しているインドや中国の需要減少分をETFの増加がカバーするかたちで、需給をバランスしている。

4月に入りここまで、金ETFへの資金流入が3月を上回るペースで推移している。コンスタントな資金流入は、先物市場でファンドが作る上下動を気にしないかのような経過となっている。最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」を例に取ると、4月に入り22日まで15営業日中13日で残が増えている。重量換算75トンに上り、3月の57トンを既に超えている。この銘柄は主にNY上場だが(東証にも重複上場されている)、ロンドンなど欧州市場上場の他の銘柄も規模が大きくなっているので、同程度の増加を示しているとみられる。

資金流入の背景は、3月以降の金融波乱に対応し、米連邦準備理事会(FRB)と欧州中銀(ECB)が急激に資金供給を増やしていること。金市場はとりわけFRBの行動に反応することから、米国の動きがメインドライバーで欧州はサブといった位置づけになる。

昨日は原油相場大波乱のあおりを受けてコモディティ全般が売られる中で金も戻りの良さを指摘し、「金だけは別物であるのは、やはりその通貨性にある。したがって戻りも早い」とした。

結果的に22日のNY金は、前日比50ドル超上昇し、引値ベースで1738.30ドルと先週つけた7年半ぶりの高値で終えた。買われた背景は、米議会にて新型コロナ対策法案第4弾4840憶ドル(約52兆円)の成立が固まったことにあると思う。株式市場も好感し大きく反発となった。これを見て、米国株と金は同じ方向で動いているという向きもあるが、このところたまたま重なっただけと思う。

NY金先物の動きとは異なり、金ETFの買い主体が見ているのは、ここにきての急激な財政出動にある。既に米国政府は2兆2000億ドルの対応策を組み、今回4840憶ドルが加わる。下院を主導する民主党のナンシー・ペロシ議長は、22日は第5弾の対応策にも言及していた。昨年9月に終わった2019会計年度の米国の財政赤字は約1兆ドルとなったが、先月時点で2020年度は3兆ドル(324兆円)に拡大することが確定的とみられる。これは議会予算局(CBO)が、2030年には(社会保障費の拡大などから)危機的規模に達すると警告していた規模でもある。この日の第4弾の合意でさらに膨らむことになった。

言うまでもなく財源は国債で賄われる。発行が急増する米国債を誰が買う。一般的には発行量の急増は長期金利の上昇につながるが、既に3月23日にFRBは国債の無制限の買取りを決め、実際に着手し準備万端整えている。財政と金融政策のポリシーミックスというと聞こえはいいが、連邦政府財政とFRBの印刷機の一体化といえるもので、今回は「緊急避難」を御旗にFRBが急速に歩み寄り連合軍は形成された。なぜならFRBは雇用を守る必要があるからだ。

先週分が間もなく発表されるが、このところの新規失業保険申請件数の激増がFRBの背中を押し、FRBは自らドルの価値を試す海図のない海域に踏み込んだ。危うさを察知した人々は価格を刺激しないよう、金ETFを分散買いしている。うごめくマグマが高まっている印象。




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1 コメント

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Unknown (ささやか)
2020-04-24 18:40:50
原油先物のマイナス価格、中国の金ディスカウント価格、いずれも絶望の投げ?と思いました。

戦争は究極のリストラ、って言葉を聞いた事があります。戦争は紛争当事国の人も生産設備も破壊する作業なんだとか。カイヨワって人の本に書いてある言葉らしい。
コロナウイルスも世界中を駆け巡って、同じ作用しそうな感じがしてます。
食料の買い物も命がけの日々が続くけど、見えない敵だから平常心を保ちやすいだけマシかもしれない。
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