以下、取り急ぎ本日の市況解説を転載。午後に改めて更新予定。
週末NY市場の金価格は、注目の3月米雇用統計の結果でいったんは急落、その後買い戻されたものの前日にポルトガルなどユーロ圏でのソブリンリスクの高まりのなか買われた状況からは反落となった。NYコメックスの先物価格は、前日比11.00ドル安の1428.90ドルで終了。ちょうど主な取引が4月物から6月物に取引対象(限月)が移行している。
3月の米雇用統計は市場予想を上回る改善を示した。非農業部門の雇用者は市場予想平均19万人増のところ21万6000人の増加。民間部門23万人増加に対し財政難が続いている政府機関の雇用は1万4000人の減少となった。雇用増は2ヵ月連続でこのところ製造業、サービス業ともに景況感の改善も続いていることもあり景気に対する楽観論が広がっている。先週もFRB関係者の中から現行の超緩和策の終了(出口戦略)に向けた発言が続いていたこともあり、雇用統計の結果が発表された直後から金価格は売られた。
データ発表は現地時間の午前8時半。1435ドル近辺で推移していた金価格は、まず15ドルほど急落の後ジワジワと売り込まれ午前10時前に1413.00ドルに。ただし、ここがこの日の安値となり、その後は取引終盤に向け徐々に値を戻す展開に。
金価格の戻りの材料となったのは、まず米地区連銀の筆頭格NY連銀ダッドリー総裁の発言があった。雇用統計の結果を受けた後にプエルトリコのサンファンで講演した同総裁は、雇用統計の結果は「歓迎するが方針を変更する理由にはならない」とし現行の量的緩和策の継続に支持を表明。「経済成長見通しに関して行き過ぎた楽観は禁物」とした。同総裁は「中東情勢や日本の震災による“打撃”も経済成長に影響する可能性がある」としている。
同じ日に経済チャンネルCNBCのインタビューで、「年内に(引き締め)行動を取る必要があったとしても驚きはしない」と発言したリッチモンド連銀のラッカー総裁の発言が伝えられたが、FRB内部でもこのように意見が割れている。本日、日本時間の夜にバーナンキ議長の講演が予定されている。タカ派発言が増える中でその発言は最大の注目材料となる。ダドリーNY連銀総裁は、バーナンキ議長の考え方に近いと目されており同じく台頭する楽観論を抑える内容になると見られる。
今週は他にも複数の地区連銀総裁の講演が予定されており、緩和策の継続、打ち切りという米金融政策の方向性を巡り各種発言がメディアを賑わすことになる。一方でリビア情勢は、多国籍軍の一員として攻撃に参加していた米軍が消極姿勢に転じるなど、混迷を深める様相を呈している。それを受け週末のWTI原油は一時108ドル台まで買われ終値でも107.94ドルとほぼ高値引けとなった。ユーロ圏ではEU支援下にあるギリシャのデフォルトの見方が流れるなど引き続き予断を許さぬ状況が続いている。こちらはポルトガルの動向が当面の焦点となっている。こうしたことも、明るい雇用統計を受けた後の金価格が一定の水準を保つ背景となっている。